★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK13 > 864.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
特集WORLD:’05衆院選・劇場の外で 新橋 酔眼の奥、やはりシビア
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/senkyo/05shuinsen/news/20050909dde012010002000c.html
午後5時過ぎ、空があかね色に染まるころ、ネクタイを緩めたお父さんたちが早くも口をぬらし始めている。東京・新橋。1872(明治5)年に日本初の鉄道がこの地で汽笛を鳴らして以来の交通の要所である。JRや地下鉄、新交通システム「ゆりかもめ」などのターミナルとして毎日80万人が行き来する。そのほとんどは日比谷、西銀座近辺のオフィスに勤めるサラリーマンだ。
駅東側の汐留地区にはガラス張りの真新しい高層ビル群がそびえ、反対側のSL広場前では金券ショップや消費者金融のネオンが光る。その裏側に果てしなく軒を連ねている飲み屋は、遠い遠いマイホームへ帰る前の「ガソリン」補給の場、至福のひと時である。
◆寂しい世の中
「男らしくないよなあ。巨人なんか行ったらだめだって。許さんよ、おれは」。とある立ち飲みの店から大きな声が聞こえてきた。阪神タイガースの星野仙一シニアディレクターの去就問題が話題らしい。「やっぱり巨人に立ち向かってこその星野だろう、え?」
入り口の看板に「夕焼けタイム16〜18時。生ビール中350円→200円。ウーロンハイ300円→150円」の文字。中に入ってビールと100円の枝豆を注文した。声のご仁は白髪の管理職風だった。連れとの話題は、巨人・清原和博選手の去就に移っている。「はい、お待ち」。
新橋を訪ねた前日(4日)、各紙世論調査で「自民強し」と伝えられていたけれど……。
あのう選挙なんですけど。恐る恐る声をかけてみた。「選挙?」。管理職風の男性は神奈川県平塚市から石油会社に通勤する54歳。「自民党が優勢なんだって? 小泉(純一郎首相)のどこがいいの?」。ブレーキが壊れたようにまくしたて始める。
「聞こえはいいんだよ。『官から民』へってね。じゃあ道路公団を民営化して何やった? 検察が逮捕しなかったら談合体質を引きずったままじゃないか。郵政民営化と言っても、どうせ政府が株主になってどんどん国債買わせるんでしょ。なあんにも変わらないよ、え? そうだろう? (郵便局の)公務員を減らすって? あの人たちの給料はね、我々の税金から出ているんじゃないんだね。(国と地方の借金は)1000兆円。民営化したって借金は減らないの。分かる?」
同僚の男性(53)が後を引き取った。「確か5年前の総選挙の時は700兆円だった。なんでこんなに増えるのかって、あなた『人生いろいろ、借金もいろいろ』じゃ済みませんよ。いずれ税金になって跳ね返ってくる。小泉さんになって雇用保険も介護保険も上がって、娘の国立大の学費も上がって。これで『改革、改革』ですよ」。う〜ん、お父さんたち、帰りの電車で駅売りの夕刊紙を熟読するのか、勉強なさっている。
神奈川県小田原市から通うこの男性は、月4万5000円だった小遣いがこの春から4万円に減ったという。「老後を考えると女房(48)のパートだけじゃね。二極化、『勝ち組・負け組』って何か寂しい世の中だよね。景気がよくなったのに財布も軽くなるって」
◆年金もらえるかな
確かに景気は「踊り場」を抜け、よい方向に進んでいるらしい。「らしい」というのは政府の発表だけで、それほど実感がないからだ。一方、同じ政府発表では02年に30万2600円だったサラリーマンの月平均給与は04年に30万1600円に微減。03年度に新たに生活保護を受け始めた世帯は24万5550戸で過去最多を記録した。総数は134万4327人だから国民100人に1人強。年収400万円以下の世帯が5割の半面、5000万円以上の金融資産を持つ世帯が3%いるという。
別の立ち飲み。埼玉の県立高校時代の同級生だという男性3人がビールを飲んでいる。スポーツ用品販売会社員(29)を除き、2人はフリーター。「わけ? まあ、就職口がなかったということ」と話した1人はビジネスホテルの清掃をしている。
「選挙って、次はもう4年間はないんですよね。憲法直して徴兵制にするって聞いたけど本当ですか?」。まあね、そう主張する前職議員もいるにはいるが……。「それと、おれたちってやっぱり年金もらえないのかな」。払ってる? 「親に払ってもらってて、ちゃんと就職して返そうとは思ってますけど『制度が破たんしている』って言うんですよ、親が。なあんか暗くて」。これにはスポーツ用品販売会社の友人もうなずいた。この若さで将来に希望を見いだせない現実はちょっとつらいなあ。
◆明るい方がまし
そういえば、消費社会研究家の三浦展(あつし)氏が「この5年間で『暗くなった人』が増えた」と話していた。「団塊の世代はまだいい。年金はもらえますから。しかし、30歳前後の生活水準意識はものすごい勢いで『下』が増えていて、私のアンケートでは、年収300万円台の男性は結婚もできないという状態です」
では、なぜ小泉さん人気が高いのだろう。「自民、民主どっちが勝っても増税は避けられないというあきらめの気持ちがあり、それなら眉間(みけん)にしわを寄せた暗い岡田さん(克也・党代表)より、明るい小泉さんの方がまだいいということ。本当に絶望した人はアンケートには答えませんけど」。そんな単純な理由なのだろうか?
「郵政民営化について民主党はプレゼン下手ですね」。なるほど昼間、駅前で240円の立ち食いそばをかき込んでいた印刷会社員(37)も「マニフェスト(政権公約)なんて難しくて読む気もしない」と言っていた。「所得だけでなく『意欲の格差』もあります」と三浦氏が続ける。「階層化が進んでいるとはいえ、あくまで中流の中での現象です。生死にかかわる貧富差じゃない」。ぼやきはあっても真の不満ではないという。
それでも、新橋のお父さんたちの間では「今度ばかりは政権交代を」という声が強いように感じた。訳が分からなくなって、無党派層に詳しい政策研究大学院大学の橋本晃和教授に聞いてみた。このギャップは何ですか。
「背景には共産主義の崩壊による冷戦の終えん、バブル経済の崩壊による右肩上がり経済成長の終えんがあります。つまり『体制』イデオロギーと『成長』イデオロギーの終えんですよ。いずれも平和と繁栄を支えてきた海外直輸入のイデオロギーが、今の日本社会で抜け落ちてしまっています」と橋本教授は解説する。
「そして私たちが自前のイデオロギーを見つけられずに漂流状態にある時に、まさに灯台のように“小泉”イデオロギーが登場しました。それは中身でなくイエスかノーかで迫るデジタル社会の申し子のような分かりやすさで、自民党が強いのではなく『小泉教』的ムードなんですよ」
◆古典落語の極意?
台風14号が北へ移動した7日夜。再び新橋を訪ねた。選挙戦は終盤。かつて必ずあった駅前での政党幹部の街頭演説が、今回は予定なしという。「駅前の道路が狭いし、渋谷や新宿、有楽町の方が人が多いから」だそうだ。
この夜も、民主党政権を望む声は多かった。「一度やらせて、だめならまた代えればいいじゃないですか」と記者の肩をポンポンたたくのは、外資系の化学メーカー部長(51)。「公約通りに議員年金を廃止してもらいましょうよ。僕らは100円払って100円戻ってくるか不安なのに、議員の分は税金で上積みされるんでしょ。こんな制度はないですよ」
「生ビール最初の1杯は210円」のこの店は、60人ほどの客で満員だ。カウンターに座っていると隣の部長さん、ボルテージが上がってくる。「小泉さんの話は、下手なお笑い芸人の芸で、もう一度聞こうと思えない。その場はおもしろいけど、心に何も残らない」。ふむふむふむ。「笑いの芸は古典落語に限るんです。ジワーッときて、ツーンと聞かせてさ。(立川)談志の噺(はなし)は最高だね」。何か変だぞと思っていると「寄席での客との駆け引きがうまいね。あ、そうだよ岡田さんの演説にはこれがないんだよ。それでね……ん?」。
部長さん、次の瞬間、店のテレビの前に走っていた。「よっしゃ」。見ればサッカーの国際親善試合で日本代表が5点目のゴールを決めている。「4点も入れられちゃあね。こんなんで大丈夫かな。それで岡田さんの演説なんだけど」……。かくして新橋の夜は更けていくのだった。【根本太一】
*「あれま! 心理戦で戦う前から負けている。」の一鍼多助 の意見に賛成です。
http://www.asyura2.com/0505/senkyo13/msg/849.html
この「毎日新聞」夕刊の記事でも都市部でもミンシュが郵政いや違った優勢なレポートではないですか。
▲このページのTOPへ HOME > 政治・選挙・NHK13掲示板