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第481 号 05/09/07
今週の論説
急展開の内外政治情勢
おはようございます。暦が9月になって内外の政治状況が急展開を示
しています。来週の総選挙ですが、4日の日曜日に日本の大手新聞が自
民圧勝の世論調査記事を流しましたが、これは切羽詰ったマスコミによ
る死に物狂いの選挙運動というのが真相のようで、政治評論家の森田実
さんのもとにきたマスコミの内部情報では、テレビ局上層部は小泉首相
を勝たせるためにはどんなことをしてもかまわない。誤報もおそれるな、
という姿勢だそうです(
http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/C02127.HTML)。ということは
与党が相当苦戦をしている一方、意外に民主党が健闘しているというこ
とであり、今度の選挙の焦点はまず与党がどの程度負けるか、なかでも
公明党がどの程度負けるか(マスコミの世論調査どおりに自民党単独過
半数となれば公明党は御用済みということになりますから、この調査結
果には公明党も慌てたり怒ったりしているのではないでしょうか)、そ
して民主党がどこまで過半数に迫れるか、というところだと思います。
かねてから米国の調査会社は日本人の特徴として驚くほど民度が低くて、
主義主張もなく勝ち組につきやすいという分析を行っていましたから、
その考え方に沿って、もう既に勝ち組がはっきり決まっているから、み
んな勝ち組である自民党に投票しなさいということでこんな調査を作り
上げたのだと思います。本当に人を馬鹿にした話ですが、現実に今まで
の日本人の政治行動がこの分析どおりであることが一番の問題なのです。
しかし今回は様子が違っていて、地方紙のなかには自民党圧勝を倒せと
絶叫しているところもあり(http://www.h5.dion.ne.jp/~chosyu/)、
また読売新聞政治部が『自民党を壊した男、小泉政権1500日の真実』
という本を出版して小泉政権の賞味期限切れの実態を伝えるなど、マス
コミ内部にも巨大な分裂が起きていることがわかります。あるいは海外
のメディアを見ていても、たとえばフィナンシャルタイムズは今回のマ
スコミの世論調査結果を淡々と紹介しながらも、結果については不透明
であるというニュアンスの記事を書いていますし、本来ならもっと大喜
びしそうな米国のメディアは小泉改革などもう既に終わったことである
かのように、関心を示していません。さらに興味深いのはここに来て政
府の世論調査の偽造が発覚したことで、日銀の生活意識調査、総務省の
家計消費指数など、世論調査に基づく統計に関して、外郭団体が正規の
手続きに従った調査をせずに大規模に数字を偽造していたことが発覚し
ました。そもそも戦後日本の統計制度は、米国がなぜ日本が無謀な戦争
に走ったのかを調べた結果、統計を歪めていたからだという結論に至り、
統計を歪めないことが民主主義を守るために非常に重要だということで、
作り上げていったものです。ところがたとえば経済の世界では経済予測
の結果についてこうしろ、ああしろと天の声が降ってきて、それに合わ
せて予測を作ることは当たり前ですし、世論調査も質問の文章や誰に聞
くかを上手に工夫して結果を誘導することは当たり前のように行われて
います。さらに金融市場でも株価の下支えなどといったように、市場価
格を操作することが官民挙げて大々的に行われています。まさに戦前と
同じ過ちを政府、マスコミ、市場関係者が繰り返し行ってきて、その手
練手管の集大成というところに小泉政権があるのだと思います。
またもうひとつ興味深いことは、小泉首相が衆院選後の訪米をキャンセルし
たことです。もし政権が選挙で圧勝し、また米国との関係も良好ならば
訪米を自らの意思でキャンセルするはずがありませんし、むしろ大々的
に訪米して日米関係の強化を宣言するはずです。あるいは米国の今回の
ハリケーン被害に対する日本政府の救援もいたって普通のものであって、
ブッシュ大統領という「友達」に対する熱い友情の表明とは言えません
(中国は日本の十倍の援助額だと言われています)。またイラクへの派
兵についても小泉首相はイラク政府からの要請によって派遣期間の延長
を考えると言っており、日米関係の強化に基づく米国からの要請だとは
言っていません。そしてインド洋上で米艦に給油していた海自は撤退す
るとのことで、形だけ見れば米国との協力は止めにして、あとはイラク
政府との関係だけになるということです。こうして小泉首相の動きを見
ていると日米関係そのものが実は大分変質していて、小泉首相は国内、
アジアだけでなく、米国からも見放されて四面楚歌状態になっている可
能性があります。だからこそ米国から見捨てられることを恐れたマスコ
ミや、いい加減な連中が何としてでも小泉を勝たせて郵政民営化法案を
通し、350兆円を米国に献上して米国の歓心を買おうと必死になって
いるのではないでしょうか。もちろん選挙ですから結果は最後までわか
りません。米国の大統領選のように票をすりかえられることがあるかも
しれませんし、投票日までに何か事件が起こされて有権者の関心が外に
逸らされるかもしれません。しかし流れを変えることはできないでしょ
う。既に小泉改革の時代は終わり、日本は新しい方向性を模索する段階
に来ています。基本的に今の市場原理主義の改革を進めていくと何が起
きるかは、米国ニューオリンズ市の惨状を見ればよくわかります。「貧
しい人は能力のない人だ。だから淘汰されるのは自然の摂理だ、むしろ
災害対策を行ったり救援をするから淘汰が遅れて世の中が良くならない
のだ」というような極端な弱肉強食主義、あるいは黒人の災害は放置し
ても政治的マイナスにはならないという人種差別主義が政治の表舞台に
出てきて、世の中はどんどん乱れていくのです。もう既に米国でもブッ
シュ政権は今回のハリケーン被害の対応を巡って国内で政治的な背骨が
折れたようですし、インドでも国有企業の民営化が撤回となり、韓国も
イラク派遣軍の3分の1を撤退する意向を示すなど、ウォール街が主導
する市場原理主義やブッシュ政権による米国帝国主義に真っ向から反対
する国が内外で出始めました。欧州においてもEUを支えてきた仏のシ
ラク大統領が突然倒れて入院。英のブレア首相はロンドンでのテロとイ
ラク戦争は無関係だと言い続けていることに国内で強烈な批判が高まっ
ており、さらにドイツは日本の翌週に総選挙を控えて、反EU主義の高
まりがどこまで広がっているか、非常に注目される状況になっています。
特にドイツに関してはフォルクスワーゲン社が数千人の首切りを選挙戦
の最中に発表し、またドイツ株式の4分の1がヘッジファンドに買われ
ていることがわかり、ドイツが経済的にもはや自立できない限界に達し
ていることが誰の目にも明らかになりました。ですからドイツは98年
のロシア危機を裏から演出したように、これから国内で金融危機をわざ
と起こして市場を崩壊させ、国際金融資本を根こそぎ追い出して経済的
自立に道を開こうとする可能性を考えておかなければなりません。また
EUの東の端ではロシアとポーランドがベラルーシの政権交代を巡って
峻烈な対決状況に陥りつつあり、EUはこのまま平穏無事に各国が納得
する21世紀の政治経済システムとして機能し続けることが難しい状況
になってきたと言わざるを得ません。米国帝国主義もEU帝国主義もほ
とんど同じ時期に同じようにガラガラと壊れ始めており、政治情勢は世
界中で急展開の状況です。そして振り子はグローバリゼーションからア
ンチ・グローバリゼーションへと戻り始め、世界は一度バラバラになっ
て改めて自立と連帯を模索する時代に入った観があります。ですから日
本で脱小泉政治が始まることはごく自然な流れだと思います。逆に言え
ばたとえ民主党が政権をとっても小泉政治の延長では国民の理解を得る
ことができませんので、民主党内の主導権争いが大変になるのではない
でしょうか。やはりこれからの日本では、国民新党のような21世紀的
な新しいパラダイムを具体的に実行していくような情熱と行動力が要求
されるのです。
したがってこれから少なくとも3年ぐらいは首都東京
は一種の南北戦争の時代であり、混乱の時代だと思います。市場原理主
義が止まる、米国の属国化が止まるということは、ここから先は日本が
自分の力で経済と外交の方針を決めて行動していかなければならないと
いうことですから、日本全体が新しい方向へ収斂するまでかなりの内部
対立があると思います。ですからその間に地方が立ち上がって自分たち
の生活と経済を守るべくリーダーシップを発揮していくことが大切であ
り、同時に同じ志を持った人や組織がヨコに連帯していくときだと思い
ます。日本は団塊の世代がそろそろ還暦を迎えようとしています。今の
日本の年金でも保険でも、団塊の世代が天寿を全うするのを支える原資
が枯渇しています。だからこそ、机上の空論の算数で制度改革を言って
いる暇はなく、まだ団塊の世代が元気に行動できるこれから十年の間に
新しい仕組みを創らなければならないのです。あと十年放置したら団塊
の世代は70代であり、そこですべてが瓦解したら目も当てられない惨
状になります。日本の眠っていた底力が試されるときがいよいよ来てい
ます。
今週のニュースから
ニューオリンズの惨状
米国のハリケーン・
カトリーナの被害は面積が英国とほぼ同じ広さであり、なかでもニュー
オリンズは市の8割以上が冠水。依然として数万人が市内に残留してい
るとみられ、未だ遺体の収容どころか生存者の救出すら終わっていませ
ん。そして被災地域から隣のテキサス州だけでなく、遠くデトロイトや
ソルトレークシティーのほうまで、全米各地に避難している人は50万
人。米国赤十字も史上最大規模の救援体制を組んでいますが、猛烈に暑
い時期であることもあり、残念なことに体力の弱い高齢者に衰弱死が出
始めており、生活の復興すらまだままならない状況です。全米各地では
被災者受け入れのために空いている部屋や水、食料を無料で提供したり
していますが、本格的に連邦政府が仮設住宅の建設などを行わないと、
民間の善意だけでは限度があります。さらに街の復旧、仕事の復旧とな
るとまったく目処が立たない状況であり、とりあえず壊れた堤防を直し
たものの水が抜けるまでに数ヶ月。無人になった街を建て直し、仕事が
元に戻るまでには何年もかかるのではないかと思われます。ニューオリ
ンズ港が止まったために米国の穀物輸送の大動脈であるミシシッピ川の
海運に大きな支障が出ているほか、メキシコ湾岸沿いの製油所にも大被
害が出ていて、ハリケーン直後には14の製油所のうち9カ所がストッ
プ。なかには油が漏れ始めたところもあり、また海上の油井も流されて
いて、米国内のガソリン供給に大きな支障が出ています。価格は急騰し、
ブッシュ大統領が不要なガソリン購入は控えてくれと全米に呼びかける
ありさまです。イラクの原油を手に入れようと不法な戦争を始めた米国
が、足元でガソリンがなくて悲鳴を上げている様子は実に象徴的です。
各国は戦略原油の放出に踏み切りましたが、今後北半球が需要期を迎え、
また中東での戦争懸念もますます高まっていることから、まだまだ原油
価格が上昇する可能性を考えておかなければなりません。被害金額も1
1兆円という数字が出されましたが、実際には今後ますます被害と影響
が広がって保険請求金額は予測できない状況です。さらに今回の被害は
人災だ、人種差別だと大変な抗議が草の根から湧き上がってきていて、
それでブッシュ政権に対する国民の支持は決定的に地に堕ちて、政権の
背骨が折れた観があります。たとえば同市の堤防は以前から老朽化して
危険だと言われていたのに、イラク戦争にカネがかかるからと連邦政府
から放置されていたこと。遠く離れたインド洋沖の地震では米軍によっ
てすばやく救援が始まったのに、ニューオリンズの中心部に水と食料と
治安維持部隊が到着したのは被害から5日も経ってからだったこと。あ
るいは共和党議員の一人がまだ救援をしている最中に救援しても無駄だ
というような暴言を吐いたこと。連邦緊急管理庁(FEMA)長官の前
職が何と馬主協会の幹事で、その職を追放されてこの職についた無能な
人であることなどなど、CNNテレビで出演者が政府は人種差別主義者
だと叫ぶ様子は、ついに米国の弱者の不満が爆発したという感じです。
同市は貧しい生活をしている人が多く、同市内で暮らしていて着の身着
のままで脱出した日本人ミュージシャンによる現地からの報告を聞くと
いかに悲惨な状況かがわかります(
http://page.freett.com/poboy/ot/20050901.htm最後の音声リンク参照)。
市当局はかなり早くからハリケーンの危険を市民に知らせて避難勧告を
出していましたが、食うや食わずの人は避難したらその日から生活に困
りますし、避難する車もありません。さらに堤防決壊前に停電したこと
でテレビが止まり、堤防の決壊や市の避難命令を知らなかった人が相当
いたようです。略奪は早い時期から起きていて、警察官も当初は水・食
料自弁で配置されましたから警察官が略奪を行うという状況で、市の中
心部はあっという間に無法地帯になりました。そして脱出した人はほと
んど家財を持ち出す余裕がなかったので、家が水につかってほとんどの
財産を失っており、自己責任、弱肉強食が強調される今の米国政治の現
実を前にして、みんな途方に暮れ始めています。またイラクに派遣され
ている米州兵のなかで被災地域出身の兵士たちが即時帰国を求めてイラ
クで準反乱状態になっているようで、もはやブッシュ政権は内外で総崩
れの状況です。イラクの憲法制定も結局スンニ派の合意が得られておら
ず、米国はスンニ派に7千5百万ドルを渡して納得してもらおうとして
いますが、国民投票の結果は不透明です。金融市場の状況を見ても今回
の被害で原油をはじめ生活、復興物資は大幅に不足し、インフレはまだ
かなり続くことが決まったようなものですから、FRBが利上げを止め
るとは思えず、米長短金利の逆転は避けがたい状況ではないでしょうか。
日本も小泉政権が倒れれば日銀はフリーハンドになって、持論の金融引
き締めをもっと大胆に進めてくる可能性が高いと思います。ですから金
融市場も到底無事で済むはずはなく、最近は日米でヘッジファンドが破
綻して騒ぎが広がりつつありますが、こちらも大規模な整理を覚悟して
おくことが必要だと思います。世界情勢というのはこうして大国の覇権
が崩れ始めたときが一番危険で、ロシア、中国、イランが打って出る危
険が非常に高いと言わざるを得ません。しかし同時に米国が崩れ始めた
ということは同じような内部崩壊がロシアや中国でも始まっている可能
性があり、当面は何が起きても不思議ではない状況です。
先週末は愛媛県の松山で高松藤原塾の皆さんのご尽力でふじわらフォーラム
が開催され、全国の藤原塾・学校から130名の方が参加されました。中村時
広松山市長から市政建て直しと新しい街づくりのお話も聞くことができ、
とても楽しいネットワークの場になりました。新しい時代の息吹を感じ
ている人は毎年着実に増えているというのが実感です。大きな森が倒れ
て小さな草木から再生が始まる時です。 藤原直哉 拝
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