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《朝日新聞 8月25日掲載》
追跡 政界流動
「改革賛成派結集」をめざす小泉首相と、「反小泉」の礎を残そうとする反対派との争いはなお各地で続いている。
24日。首相に近い自民党幹部は言った。「本当の郵政対決は『亀井静香とホリエモン』の広島6区なんかじゃない。野中氏の京都4区だ」
野中広務元自民党幹事長、79歳。03年の党総裁選で首相の再選阻止を図って敗れ、直後の総選挙前に引退に追い込まれた。今月18日、京都市の自由民主会館の記者会見場に独特の甲高い声が響いた。
「知事選で自民党に反旗を翻した人だ。党本部はその経緯も咀嚼しないまま公認した。私は先頭に立ってやります」
攻撃対象は党執行部が前日、4区で公認したJA京都中央会の中川康宏会長。野中氏が地盤を継がせ、郵政民営化法案に反対票を投じた田中英夫前衆議院議員への対抗候補だ。伊吹文明・京都府連会長ら賛成派が牛耳る「会館」で野中氏は反乱の声を上げたのだった。
中川氏は野中氏の出身地・京都府園部町の隣の八木町長を務めた。かっては指折りの野中氏の側近だったが、02年の府知事選で野中氏が推す候補者に反旗を翻す形で立ち、2人の対立は決定的となっていた。
党執行部はこの関係に目を付けた。「旧橋本、旧堀内両派の反対派の裏で糸を引いているのは、なお両派に強い影響力を持つ野中氏だ」。衆参の郵政法案の間、首相周辺や執行部は断じていた。
首相も公認を決めた17日、党本部で中川氏に「厳しい選挙区。よく決断して頂いた。日本の改革のために精いっぱいやって下さい。」と声をかけた。旧橋本派を「古い自民党」の象徴とみる首相側は、反抗の芽を完全に摘み取るために「骨肉の争い」を仕掛けてきた。
22日、4区支部幹部会は「中川氏支援せず」を決定。23日、京都市議団会議が田中氏支持で一致―。地盤を固めながら地元後援会で野中氏が強調するのは首相批判だ。
「郵政選挙は小泉首相の作戦だ。首相の内政・外交政策が行き詰った結果だ」
伊吹氏「大火事」板挟み
一方賛成派の伊吹文明氏は、京都と派閥の両方で「火事」の後始末が出来ないでいる。
「私たち全員は、家の大火事の中に巻き込まれて、生きるか死ぬか分からない状態だ」
伊吹氏は19日、東京都内の派閥事務所で開いた記者会見で、会長代行に就いた旧亀井派の窮状を隠そうともしなかった。
会長の亀井静香氏が国民新党に去った。派閥の衣替えを急ぎたいのだが、賛否両派が同居する現状をみると、賛成派だけ選挙応援をするとは踏み切れない。
一方伊吹氏は衆院解散直前に府連会長に就任した。野中氏の力を考えれば敵に回すなど無理な相談だ。さりとて党執行部の方針に刃向かうわけにはいかない……。公明党の支持母体である創価学会関係者に「自公でお願いしたい」と、中川氏の支援を要請したが、野中氏は自公連立政権の誕生にもパイプ役として深くかかわった。公明党幹部は「野中氏とけんかするわけにはいかない。党としても京都4区では動けない」伊吹氏が22日に出した結論は「自主投票」だった。
地元と反対派と党執行部のはざまで立ち往生するのは、京都だけではない。秋田や宮崎、鹿児島各県連でも「自主投票」「決定せず」となった。首相が「改革賛成派」の結集で新しい自民党を訴えるなか、地元と派閥の双方で、方向性はなお定まっていない。
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