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社説:総選挙公示 政権選択の大きな構図競え
毎日新聞 2005年8月30日 0時08分
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/feature/news/20050830k0000m070151000c.html
きょう30日、第44回衆院選が公示される。
自民党の分裂という特異な状況の中で行われる選挙となったため、小泉純一郎首相が衆院を解散した直後から「刺客」問題など自民党の内紛に関心が集中した。
だが、これから9月11日の投票日まで、与野党は政権選択という総選挙本来の意義を踏まえた政策論議を競うことになる。
郵政民営化法案の参院否決に端を発する今回の解散は、小泉首相自身が認めているように「異例中の異例」だった。
「小泉改革の本丸」と位置づけた法案に対して、衆参両院で自民党内から多くの造反者が出た。これは小泉首相の自民党総裁としての党内統治力が低下したということにほかならない。このような場合、議院内閣制の下では、与党は総裁を降ろし、より指導力のある総裁を新首相にするのが筋ではないだろうか。
ところが小泉首相は、参院の法案否決に衆院解散で応じるという奇手を使った。解散は、立法府で与党と野党の対立が抜き差しならなくなり、内閣不信任を突きつけられたとき、行政府の長である首相に許された非常大権である。
ところが小泉首相の「郵政解散」の矛先は、野党より、むしろ与党の反対派議員に向けられていた。反対派を公認せずに党から追放し、代わりに直属の親衛隊に差し替えることによって、小泉・自民党を純化し、総裁としての統治力を回復しようとする作戦だろう。
主役は有権者だ 政治手法としては、国民の目に見える場に党内抗争をさらしたという意味で、旧来の談合政治、派閥政治からは脱皮している。この新しさが、国民の高い関心を呼んでいる要因だろう。
29日に行われた党首討論で小泉首相は、今回の総選挙が郵政民営化法案の賛否を国民に問う「国民投票」である、と主張した。郵政民営化法案の賛否のみを問う構図のなかに選挙を封じ込めたいという意図がうかがえる。
もっぱら眼中にあるのは、新党に身を寄せたり、無所属で立った党内反対派だとすれば、小泉首相が望んでいるのは、野党を相手に政権選択を競うのではなく、党内を純化するための「小さな構図」の選挙といえるだろう。
解散は首相の専権事項だが、総選挙の主役は有権者である。「国民投票」だという首相の都合に付き合う必要はない。
有権者が、これからの選挙戦で期待しているのは、人口減少という社会の変化や財政状況の悪化を見据えた枠組みの大きな構図の議論である。将来の年金制度や子育てへの不安に、だれが応えてくれるのか。小泉首相の郵政民営化法案にしても、4年あまりに及ぶ小泉政権で行われた他の改革と併せて論じなければ評価はできない。
瓢箪(ひょうたん)から駒のような解散・総選挙なので、各党とも十分にマニフェストを練る余裕はなかった。だが、選挙が始まった以上、各党の党首は、顔が見え、声が心に響くように、マニフェストを訴えかけ、政権選択という選択肢を示す「大きな構図」の選挙にしなければならない。
党首討論では、争点を郵政一本にしぼろうとする自民党と連立を組む公明党の神崎武法代表は「郵政は構造改革のシンボル」としたが、児童手当拡充などの社会保障も取り上げた。
これに対して、最大野党の民主党・岡田克也代表は「年金と子育て」を軸にして、長期展望に立った改革のためには、政権交代が必要だと訴えた。
2大政党化が進む中で、共産党の志位和夫委員長は「確かな野党」と、野党らしい政権批判力を強調した。社民党の福島瑞穂党首も「社会の格差が広がった」と政権批判を鮮明にした。
もともとは自民党だった国民新党の綿貫民輔代表は「解散はルール無視」と小泉首相の政治手法を批判した。
自民党も、野党の挑む論争から逃げて、争点は郵政一本だけというわけにはいかない。
マニフェストは重い 党首討論で小泉首相は、公明党と合わせて過半数の議席を取れなければ退陣すると、改めて明言した。岡田代表も、岡田政権ができなければ代表を去ると断言した。せっかくお互いに、背水の陣で政権選択選挙に臨む決意を示しているのだから、それにふさわしい選挙戦にしてもらいたい。
今回の総選挙では、マニフェストの重みが、さらに増すことになるだろう。
小泉首相が強引に解散に踏み切ったのも、01年の自民党総裁選以来、郵政民営化をうたってきたという大義名分があったからだ。
もっとも、自民党のマニフェストは郵政民営化さえ実現すれば、「この国のかたち」を作る外交・安全保障まで展開できると明記している。それについて首相は「経済力の発展がなければ戦略的な外交も進んでいかない」と説明したが、論理があまりにも粗雑だ。
野党にとってマニフェストは、与党との違いを際立たせる有力な武器になっている。だがもし、政権交代が実現した時に、マニフェスト実現で党内が一致できなかったら、政権を去るだけの覚悟が必要だ。
すでにこれまでの与野党論戦でも、お互いにあいまいにしてきたマニフェストの論点が、追いつめられるような形で鮮明になっている。歓迎すべきことだ。
有権者にとってすでに、マニフェストは耳新しい新語ではなくなった。政権選択という高みで、各党の論戦を見つめたい。
意外性のある解散・総選挙の展開だったために、今のところ世論の関心は高い。無党派層を中心に、投票率が大きく上がることを期待したい。
毎日新聞 2005年8月30日 0時08分
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