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特報
2005.08.25
2005夏 総選挙 激変
陣営PR会社とは
今回の衆院選では、二年前に導入した民主党に加え、自民党も「PR会社」を初起用した。狙いはズバリ、イメージ戦略だ。米国では大統領選挙などで、PR会社の存在は欠かせないが、日本ではまだなじみが薄い。今回の選挙では、すでにテレビで、注目選挙区の候補予定者らによる“空中戦”が繰り広げられているが、これもPR会社の得意分野のはず。選挙戦に参入したPR会社って何−。
■「大物出せます」テレビ局に電話
「先週ぐらいから、自民党のPR会社が、党幹部の実名をあげて『日程を押さえられる。テレビ番組で使ってください』と電話を頻繁にかけてくる。今週は『党の大物、誰でも出せます』と言ってきている。その売り込みで、番組をつくったことはないが」
こう話すのは、あるテレビ局の情報番組ディレクターだ。
「自民党のPR会社」というのは、一九七〇年に設立されたPR会社「プラップジャパン」(本社・東京都渋谷区)。自民党は党のイメージアップを図るために、初めてPR会社導入を決め、今年一月から、同社とコンサルタント契約を結んでいる。
このディレクターは「前回参院選の最後のころには、民主党サイドからも、要人の出演売り込みはあったが、今回はない。今のところ自民の方が力を入れている感じ」と話す。
気になるのは、PR会社の役割だが、自民党広報本部長代理の世耕弘成参院議員は「第三者の目で党を見て、指摘してもらっているが、奇手奇策や秘策を考えてもらっているわけではない。キャッチフレーズは小泉首相が自分で考えているし、(民意をくみ取る)調査も党に部署がある。PR会社に依頼しているのは新聞の切り抜きやテレビのビデオ録画など。選挙戦略は党で考えている」と話す。
冒頭のようなテレビ局への働きかけについても、自民党関係者は否定する。
■国内では民主がいち早く契約
もともと、国内で選挙戦のイメージ戦略にPR会社を使ったのは民主党だ。親会社が米大統領選でメディア対策を担当した「フライシュマン・ヒラード・ジャパン」と、二〇〇三年に契約。同社は全国で世論調査を実施し、「マニフェスト(政権公約)選挙」に持ち込むよう提言し、その戦略で、同党は前回総選挙で躍進した。「有権者の意識、ニーズを正確に吸い上げるのが目的だった」と、導入の背景を振り返るのは、同党総合選挙対策本部事務局次長の福山哲郎参院議員だ。
今回もその路線を踏襲しており、解散の一週間ほど前に、フ社と広告代理店二社を加え、広報戦略を練るチームを結成した。同党選対委の秋元雅人部長は「会議は毎日、党本部で開いている。マスコミ各社の論調をみて、次の日のワイドショーなどの展開を予想し、対応を検討する」と話す。
フ社は、岡田代表のテレビ演説を見た有権者に、印象を聞くモニタリング調査も実施、代表のイメージづくりにも役立てているという。
今回、民主は“刺客騒動”などで、自民ばかりがメディアに露出し、イメージ戦略のお株を奪われた格好だが、福山氏はこうけん制した。「今は面白がっているが、それが投票行動に結びつくとは思えない。有権者は賢明だ」
先のディレクターも話す。「小泉首相になってから、ワイドショー国会といわれ、いずれ、選挙でのテレビへの売り込みが激しくなるだろうとは思っていた。局にすれば、持ちつ持たれつの面もあるが、特定の党のイメージアップ番組をつくっているわけではない」
PR会社が政治の世界で重要な役回りを演じていることで、真っ先に思い浮かぶ国は米国だ。
選挙では、PR会社が候補者の演説原稿を書いたり、記者会見での服装や話し方をアドバイス。「ワンライナー」といわれる新聞の見出しになるような一言を考え出したり、討論で相手をどう論破し、自分をいかに強く見せるかのテクニックも伝授する。
■米での市場規模20兆円にも上る
大統領選挙になると、共和、民主両党それぞれにPR会社がつくだけでなく、コンサルタントが政党に出向し、戦術立案チームに入るケースも今では当たり前だ。雑誌「宣伝会議」の田中里沙編集長によると、PR会社がコンサルタント料を受け取るのではなく、逆に政治献金することもあるという。「特定の政党を応援することも投資であり、選挙で勝利した後の見返りを期待している」ためだ。
広告代理店がテレビや新聞など媒体の広告枠を取るのに対し、PR会社は「形にならないことをプロデュースする」(田中氏)点で大きな違いがある。米国のPR会社の市場規模は約二十兆円にも上るという。
新聞の一ページにたとえれば、下段の広告を取るのが代理店、上段の記事になるよう働き掛けるのがPR会社の仕事だ。
PR会社はときに戦争の広報も請け負ってきた。米大手PR会社のルーター・フィン社はボスニア紛争中の一九九〇年代、「民族浄化」と「強制収容所」をキーワードに、セルビア人の残虐行為の情報を流し続けた結果、米国人の間にセルビア人=悪人というイメージが構築されていった。
なぜこうしたPR会社が米国で発達したのか。
「米国は多民族社会で意思疎通が難しいうえに、情報伝達の速度が日本に比べてかなり遅い。そのためにPR会社が必要とされた」と、米国政治に詳しい双日総合研究所の吉崎達彦副所長は指摘する。
逆にこれまで日本でPR会社が根付かなかったのは、「PRというと日本人には『情報操作』というイメージがつきまとう。しかも広報は無料という考え方があり、PRに金をかけようという発想もなかった」と田中氏は解説する。
とりわけ政治の世界でPR会社の存在感が薄かったのは、「中選挙区制の時代は、同じ選挙区から複数の自民党候補が立候補し争っていたため、党をPRすること自体、無意味だった」(明治学院大学の川上和久教授)という面もある。小選挙区制になり、政党を前面に出しやすくなったことで日本の選挙でもPR会社が表舞台に出てくる条件が整ったわけだ。
■「有権者の心をつかむ仕事」
日本初の選挙コンサルティング会社「アスク」の三浦博史社長は、選挙PRについて、「例えば、ニンニクは臭いという先入観に対し、真空パックに入れたり、無臭ニンニクを売るのは消費者への迎合にすぎない。われわれの仕事はむしろそのにおいを好きになってもらうように努力することだ」と強調する。
PR会社を使った選挙戦は「イメージ選挙」といわれる。内実に乏しいような薄っぺらな印象を受けるが、「政策をいかにわかりやすく有権者の心に響くように訴えていくかを戦略的に考えていく点では、プラス面も大きい」と川上教授は評価する。その一方で、イメージ選挙に潜む陥穽(かんせい)にも注意を促す。
「ムードに流され、自分たちにとって何が重要な政策なのかを見極めることがおろそかになったら、『選んだけど間違いだった』ということになりかねない。イメージ選挙の時代こそ有権者の見識が問われる」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050825/mng_____tokuho__000.shtml
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