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アメリカが進める日本改造 関岡英之
http://www.kobachan.jp/kongetsunohitokoto/sekioka.html
■アメリカの言いなり日本
郵政民営化法案が参議院本会議で否決され、小泉首相は衆議院を解散した。それにしても解散を断行してまで民意を問う郵政民営化は、日本の国益にかなうのかどうか。ノンフィクション作家の関岡英之氏は「アメリカの狙いは百二十兆円という簡易保険を?中にすること」と断言する。その根拠として氏は「年次改革要望書」というアメリカの日本に対する要求書の存在を挙げる。はたしてそれはどういうものなのか。
今年に入ってから日本の企業社会を揺るがすような大きな事件が相次いでおります。
記憶に新しいところでは、ライブドアのニッポン放送株取得問題、さらに日本を代表する一部上場企業のソニーで初めて外国人のCEO(最高経営責任者)が就任したこと、続いてコクドによる有価証券報告書の虚疑記載をめぐっての事件、それから最近では橋梁工事談合事件の摘発――と、いずれをみても日本の経済社会、あるいは各企業、各産業界を直接的・間接的に揺るがすような大事件であると思います。
これら一つひとつの出来事は、一見してそれぞれ偶発的に、また別個の原因と背景によって起きたと報道されることが多いわけですが、私が申しあげたいことは、それぞれの一連の出来事が一つの大きな流れの一環として起きているということです。
■拒否できない日本
実は私、昨年四月に文藝春秋から『拒否できない日本』を出版させていただきました。
出版直後にはほとんど反響がなかったわけですが、今年に入ってから講演会とか雑誌のインタビューが増えてきました。今起きている出来事をこの本で予言したわけではないんですが、この本でたまたま取り上げたテーマと今年起きている出来事が全部関連するということがようやく最近になって認識されるようになってきたからだと思います。
この本の表紙の下に「アメリカの日本改造が進んでいる」というサブタイトルを付けていますが、これは私の主張を一言で言い表したものです。つまり前述した一連の出来事はアメリカによる日本改造がもたらした余波≠ナあることをお話したいわけです。
■半世紀ぶりの構造改革!?
現在の日本では様々な分野で構造改革が進められています。こうした改革に対して新聞にはよく「半世紀ぶりの大改革」という見出しが踊りますが、実はこの「半世紀ぶり」というのがミソでして、半世紀前の日本はどういう状況であったか考えてみて下さい。ご存知のように、GHQによる占領期間、つまり占領中だったわけです。したがって今進められている構造改革は占領以来の大改革といっていいわけですね。しかも実は、そのほとんどの改革がアメリカ政府からの日本政府に対する公式の要望に基づいて進められているということ、そしてその改革はアメリカの国益を極大化することを目的にしており、アメリカは過去十年以上にわたって日本に要請し、それを受けて日本は改革を進めてきた。こういう 趣旨の内容をこの本で書いたわけです。
また、ここに書いていることは、実は私の仮説でもないし、例えばアメリカの何かインサイダー情報を入手して「ためにする議論」を書いたものではありません。すべてアメリカ政府が毎年公表している公式文書に書いてあることです。
では、どういう公式文書なのか。これはA、Bという二つの文献から成るんですが、Aは年次改革要望書といいます。これは秘密文書でも何でもなく、しかも日本語版でも発表されていますが、裏表印刷のA4版で四十ページぐらいの文書になっています。一応建前としては日本もアメリカに対して同じような要望書を提出しており、日米両国政府の間で秋に交換されるという仕組みになっています。
一方のBは、外国貿易障壁報告書といって、毎年春ごろにアメリカのUSTR(米国通商代表部)が連邦議会に提出している米国の国内文書です。
このAとBの二種類の文書がセットになっており、Aはアメリカが日本に対して出してくる要求のリストのようなものです。Bはその結果報告書というべきものです。つまりアメリカが日本政府に外圧を加えた結果、何が、どれくらい実現したか、アメリカの国益にどれくらいプラスになったか、時に具体的な数字を挙げてUSTRが自分の手柄を議会に対してアピールし、さらに来年度の予算と人員を確保するための自己申告表のようなものといっていいでしょう。
ですから、この二つの文章を合わせて読むと、アメリカの意図なり戦略なりが自ずと浮かび上がってきます。
私たち日本人にとって問題となるのはAの年次改革要望書ですね。内容は大きく言って、個別産業分野と分野横断的なテーマの二部構成になっています。
まずは個別産業分野。現在アメリカがリストアップしているのが、@通信、AIT、Bエネルギー、C医療機器・医薬品、D金融、E流通 の六分野です。ただし、これは毎年差し替えられていき、例えば数年前までは建築分野が重点分野の一つになっていました。が、現在は建築についてはアメリカはほぼ望むところを日本から手に入れたということで、最近はもう具体的な要求は載せていません。とにかく今、アメリカが関心あるのはこの六分野ということになります。
しかし、これだけだと、あくまで個別産業の業界の話だということで、日本の経済社会、あるいは国民全般に影響する話ではないのでないかという受けとめ方が出てくると思います。私が問題とするのは、むしろこの次の五つの分野横断的テーマなんです。これも毎年変わるわけですが、最新版は次のような構成になっています。
第一は競争政策。これは日本流に言うと、独禁法行政のことですね。独禁法はまさに今国会で1977年以来の大改正を致しまた。その中で罰則の強化、内部告発の奨励などといったことが法制化されたわけですが、それらのほとんどにアメリカが数年前から要求してきたとおりの内容が盛り込まれています。
第二は、透明性及びその他の政府慣行。簡単に言うと、日本の政策決定のプロセスにおいて外国の利害関係者が発言する機会をなるべく拡大しようという内容なんです。例えばパブリックコメントという制度が一九九九年から導入されましたが、これもアメリカからの要求だったわけです。この制度が発足すると、そのチャンネルを通じてアメリカの利害関係者、例えば在日米国商工会議所などが日本の監督官庁に対して意見書や提案書を出しています。こうしたものが日本の実際の法律や政策に少なからず反映されているということがすでに五年近く前から起きています。
第三の民営化。これがいま、まさに小林興起先生が反対されている郵政民営化法案についてなんですが、これは後ほど詳しくお話したいと思います。
第四の法務制度改革。これは司法制度改革のことです。例えば、民事訴訟をもっとやりやすいようにいろいろ手続きを緩和せよ、弁護士の数を増やせという司法制度、主に民事訴訟に関わる制度を改革する。そしてもう一つは外国の法律事務所が日本で様々な活動ができるように、そういう方面の規制を緩和せよという、二本柱の要求になっています。
第五が商法に関する部分で、二〇〇二年から導入された社外取締役制度ですね。商法上は委員会等設置会社と言っていますが、平らたく言えばアメリカ型の社外取締役を日本にも導入せよということなんです。
実はソニーのあの劇的なトップ交代劇にもこの制度が大きく影響しているといえます。
それからライブドアの絡みで大きく脚光を浴びた会社法ですね。これは五月十七日に衆議院本会議を通過しましたが、この新しい会社法の中で注目されたのが「三角合併」と報道されているものです。メディアによっては株式交換型のM&Aとか外国株を対価とした株式交換制度だと言われています。
この三角合併は解禁されましたが、しかし、小林興起先生を始めとする一部自民党の志と勇気ある先生方のおかげで一年凍結ということになりました。これによって会社経営陣は、敵対的買収に対して様々な防衛作を講じるだけの時間的猶予が得られたわけです。もしも小林先生方が捨て身で一年凍結という働きかけをしていただけなかったら大変なことになっていたと思います。こういうことの淵源も、この年次改革要望書にあるということなんです。
■アメリカからの小泉総理と竹中大臣への指名
ところで、先ほども少し触れましたが、こうした文書は秘密文書でも何でもありません。
私のような元銀行員のド素人が、なぜ、こういうことを知っているのか、実は在日米国大使館のホームページに全部、しかも日本語に訳されて公開されているからです。【こちらをご覧ください。】もちろんアメリカ政府の公式文書ですからオリジナルは英語が正式版です。しかし翻訳しているのは大使館の経済部ですし、アメリカ合衆国の国璽も押されていますから正式な文書です。
こういう文書がホームページで公開されている。ということは,アメリカはまったく隠すつもりはないわけですね。ところが、私たち日本人は何人の人がこの文書の存在を知っていたでしょうか。この文書に載っているアメリカの要求が日本の法律や制度にかなりの部分で具体的に反映されて実現してきているのに、ですよ。不思議なことに、日本の報道機関もあまり大きく取り上げないし、その存在さえ知らないマスコミ人もおります。その意味で言えば、マスコミの責任も大きいと言わざるを得ません。
ところで、アメリカの年次改革要望書を通じて、これまで具体的にどういうものが実現されてきたか、あるいは実現されようとしているのでしょうか。
現在、国会で最大の焦点となっているのが郵政民営化ですね。
最近になって小泉総理は「郵政民営化は十年来の私の持論であり、初めて自民党総裁選に出馬したときからずっと政策課題として掲げてきた」と主張しています。実はアメリカが日本に対して郵政民営化を要求してきたのも十年前の一九九五年の年次改革要望書からです。
九五年はまだ英語版しかありませんでしたので、九六年の日本語版からその該当部分を紹介してみます。
アメリカは次のように要求しております。
「米国政府は日本政府が以下のような規制緩和及び競争促進のための措置をとるべきであると信ずる。郵政省のような政府機関が民間保険会社と直接競合する保険業務に携わることを禁止する」
「政府系企業への外国保険会社の参入が公正、透明、非差別的かつ競争的な環境の下で行なえるようにする」
つまり、アメリカの要求は官が保険会社(簡保)を経営することを禁止しろ、と言っているわけです。また、政府系企業に対して外資が参入できるように、経営参画できるようにせよ、と。要するに、買収できるように環境を整えよと、すでに十年前から要求してきているわけです。
その後、一九九九年には、「現在の制度を削減、叉は廃止すべきかどうか検討することを強く求める」と、だんだん具体的かつ踏み込んだものになってきます。そして二年前の二〇〇三年度版になると個人名が出てきます。
「米国政府は、二〇〇七年四月の郵政民営化を目標に、小泉首相が竹中経済財政・金融担当大臣に簡保・郵貯を含む郵政三事業の民営化プランを二〇〇四年秋までに作成するよう指示したことを特筆する」
アメリカの政府文書で個人名が出てくるのはとても珍しく、わざわざ「竹中」という名前が出てくるので、ここで敢えて引用させていただきました。
さらに昨年十月の最新版ではどうでしょうか? この点について簡単にアメリカの要求を紹介します。
アメリカは、実は、郵政三事業の民営化といっても郵便事業にはほとんど関心を示していません。十年前の当初から「簡易保険はけしからん」と言い続けてきています。どういう文脈で言ってきたかといえば、年次改革要求書にある「金融」項目の中の「保険」のところですね。つまり、アメリカにとって郵政民営化問題は日米保険摩擦の延長線上にあるということです。今年二月に来日したアメリカの生命保険協会のキーティング会長も「米国の生保業界にとっても最も重要な通商問題だ」と述べて日米両国の保険摩擦という事実を隠していません。
■ ザ・生保
日本の生保業界は、一九九四年、九六年の日米保険協議に基いて一連の規制改革を進めてきました。その中で、例えば第三分野といわれる医療保険分野ですが、この分野では現在、日本の生保会社よりもむしろアメリカ系を中心とした外資が圧倒的なシェアをもつに至っているわけです。アメリカはこれだけでは足りずに、簡保という日本国民が持つ百二十兆円の資産にも食指が動いてきた、これが十年前からの動きですね。
日本の生保会社は九社ほど破綻に追い込まれましたが、そのほとんどが今外資の傘下に組み込まれています。もともと生保会社の破綻は、生保がプラザ合意以後に米国債を買い支えてきたと同時併行して進んだ円高によって莫大な為替差損を抱え込むことになったのが原因です。かつては「ザ・生保」と言われたように、日本の生保はアメリカの財政赤字を支える役割を果たしたわけです。
アメリカは、日本の民間の保険市場にこれ以上ウマ味がないと判断して、今度は官的な保険市場に手を伸ばしてきた これが郵政民営化論議の本質ではないかと思います。
そこで郵政民営化に対して最新版の年次改革要望書では、さらに次のように詳しく、アメリカは突き付けてきています。
まず郵便事業と金融部門(簡保と郵貯)を完全に切り離せ、さらに、切り離された簡保と郵貯については、総務省ではなく金融庁の監督下に移せということをはっきりと要求しています。
それから独占禁止法……公正取引委員会の監視の対象にも加えろとも言っていますね。つまり、現在の簡保をそのまま民営化しても巨大な保険会社ができるだけのことですから、アメリカ系の保険会社にとってこれは目の上のコブというか巨大なライバル会社が出現するだけのことなんですね。だからアメリカの真の意図は、簡保を地域別に分割するとか、とにかく解体に追い込んで、その上で分割された簡保の会社を個別撃破で、それぞれ傘下におさめていく――こんな戦略があるのだと思います。しかも、そこに金融庁の検査とか公取委による監視といったものを手駒として使っていく、こういうアメリカの"意図"が透けて見えてくるわけです。
そう、アメリカの"意図"です。たとえば、足利銀行やりそなグループに引導を渡したのは会計事務所ですね。その会計事務所のほとんどが「ビッグ4」と言われるアメリカ系の巨大会計事務所と業務提携関係に入っていますし、その背後に金融庁がいます。そして公取委ですね。この公取委については後ほど独禁法がらみで詳しくお話しますが、いずれにしてもアメリカの影響をかなり受けるような状況になってきています。アメリカ側ではこうした機関をドメステック・アライズ(国内の同盟者)というふうに呼んでいます。まあ「友軍」ということですね。ですから、くり返しますが、これら友軍を使って郵政が民営化されたあとも簡保に対して揺さぶりをかけていきながら、やがて分割・解体に追い込み、最終的に資本傘下におさめる、アメリカはこれをめざしているんだろうと思います。
ここで独禁法がらみで官製談合防止法に話を移します。今まさに談合摘発事件が話題になっています。私の見るところ、この談合事件は今後かなりの大きな広がりをもつ事件になっていくのではないか。
具体的には、発注者側にも摘発の余波は広く及んでいくだろうと思うわけです。そして実は、これこそがアメリカのねらいではないかと思います。
なぜか。昨年十月に新潟市の下水道工事でやはり談合事件の摘発がありましたね。これは非常に示唆にとむ事件だと思います。このとき日本経済新聞の見出しは「談合摘発に新手法」と書いています。
では、談合摘発でどこが新しいのか。
当初、公取委はいろいろ調査したのですが、刑事告発を見送ったわけです。ところが、新潟地検が公取委に対して家宅捜査を行って関係書類を押収しました。その後、新潟地検が刑事事件として立件し、市の幹部を逮捕するに至ったというわけです。もちろんこれは公取委と検察が事前にじっくりと打ち合わせしてのうえでのことであり、こういう公取委と検察の連携プレーも実はアメリカの要求なんです。つまり、九九年の年次改革要望書ではこうあります。
「刑事上の談合行為を調査する上での協力を強化するために、公取委と警察庁及び地方警察本部との連携メカニズムを確立する」
「故意に談合行為を政府職員、特に指定入札システムを利用したり、予定価格を不当に漏らした職員に厳しく対処するという政策及び執行制度を日本政府全体で採用する」
さらに翌二〇〇〇年の年次改革要望書から「官製談合」という言葉が出てくるようになりました。要するに、日本の談合がいっこうに減らないのは、受注者の談合行為だけではなく、発注者もそれを黙認しているか、もっと言えば共謀しているという見方を強めているわけです。つまりは発注者側の、要するに政府や自治体の調達担当官による談合の幇助や共謀を摘発する法整備を進めよと言ってきているわけです。そして、そのアメリカの要求どおりに二〇〇一年七月に官製談合防止法が成立しました。この摘発の適用の第一号が北海道の岩見沢談合事件でした。このときは市長に対する改善措置が要求されただけで、発注者側の逮捕には至りませんでした。しかし、二件目である昨年の新潟事件では官製談合防止法によって初めて官側の刑事責任が問われたわけです。
■アメリカの目的
アメリカの目的は、各企業や官庁をどうこうするというのではなく、日本的なシステムそのものを破壊することにあります。そしてアメリカの業者が日本の公共事業に参入する突破口にしたい。その意味で、今回の橋梁談合事件などはアメリカにとって目的を達するチャンスですから、したがって、かなり大きな事件に発展すると私が言った理由も、まさにここにあるわけです。
ところで、これまで日本で大きな談合事件の摘発を見ますと、この背景に必ずといっていいほど日米の政治問題が横たわっています。
たとえば、一九八六年に関西国際空港プロジェクト問題がありました。このときアメリカの通商代表部は国際公開入札を要求してきたわけです。ところがアメリカの思うとおり落札できない。すると二年ほどしてから関空の土木工事をめぐる問題で公取委が談合を指摘して排除勧告を出しているわけです。
そしてその翌年(八九年)から日米構造協議が始まったわけですが、この中でアメリカから「日本は独占禁止法の運用が甘すぎる」「公正取引委員会の予算が少なすぎる、人員が少なすぎる」「刑事告発が少なすぎる」という趣旨のことを盛んに言ってきたわけです。
それから数年して日本の公共事業をめぐって日米の間で再び通商摩擦が起き、アメリカが対日制裁措置を発表するわけです。するとこの時に、一連の対ゼネコン疑獄がもち上がり、茨城県知事、宮城県知事、最終的には中村喜四朗建設大臣などが逮捕されたわけです。
その翌年(九四年)一月に建設省は、明治以来九十年以上続いてきた指名競争入札という大方針を転換します。公共工事については公開入札に踏み切ったわけですね。
このように、談合摘発と同時並行的に日米の公共工事を巡る通商摩擦があったわけですから、その意味で、今回の橋梁談合事件、はたしてどこまでその余波が及ぶのか、これまでの日米通商摩擦の視点から見ると、今後の展開がきわめて注目されるところです。
■アメリカのような訴訟社会日本へ・・・
さらに司法制度改革はどうでしょうか。これはすでにほとんどの関連法案が成立しています。例えば弁護士法改正も終わりましたし、裁判員法の成立も昨年五月にすんでおります。
ではアメリカが、なぜ、日本に司法制度の改革を要求したのか。それは民事訴訟をやりやすくするためです。これまで見たように、アメリカは日本の談合など経済社会の取引慣行を公取委や検察によって摘発していく、しかし、それでも摘発できないものについては民事訴訟によって追いつめていく戦略ですね。これまでは公取委が摘発したものしか訴訟できませんでしたが、二〇〇〇年五月の独禁法改正によって公取委が告発・立件を見送ったものも、民間の利害関係者が直接裁判所に訴え出ることが可能になりました。
アメリカの狙いは、住民訴訟を組織すること、例えば地方公共団体が発注した工事について納税者に税金の返還訴訟を起こさせるという形で揺さぶっていくというわけですね。アメリカでは地域住民のように不特定多数の利害関係者が裁判費用を分担することによって訴訟を起こすことが一般的に行なわれています。そしてその訴訟の背後で弁護士がオルグしているわけです。今の司法制度改革がめざしているものは、日本もアメリカ並みの訴訟社会にするというわけですね。
いま日弁連に登録されている弁護士の数は約二万人だそうです。ではアメリカは何人いるかというと、人口差でアメリカは日本の2.3倍ですから、四,五万人であれば日本社会と同じ価値観を共有している社会といえるかもしれません。しかし、アメリカには何と百万人もの弁護士がひしめき合っているのです。百万人もいれば一つの産業ですね。ということは、訴訟というものが完全に一つのビジネスになっているということです。だからアメリカで有望な弁護士とは、なるべく多くの賠償金なりお金をふんだくれるような相手を被告に仕立てあげる能力をもった弁護士のことだそうです。したがって当然、狙われるのは企業です。アメリカではこの種の訴訟が爆発的に多く、それがアメリカ企業の国際競争力を弱めさせるような事態になっていました。企業を支持母体とする共和党のブッシュ政権は、自国内ではその種の訴訟を抑制する動きに出ていますが、逆に日本に対してはどんどん「私訴」をやれと要求している、つまり自国でやめようとしていることを日本にはやらせようとしている。その理由を一言でいえば、アメリカの弁護士にとっての日本でのビジネス・チャンスの拡大、それと日本の企業、あるいは日本の経済社会の弱体化ですね。
このように、いまや日米の経済紛争は、八〇年代のような個別業界における通商摩擦ではもうなくなっています。いまや目に見えない形で、さらに、もっと国家の本質にかかわるところに焦点が移ってきていると思います。
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