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http://www.kiyomi.gr.jp/essay/archives/000543.html
郵政民営化は、まやかしだ
2005年08月19日
衆議院が解散されて10日経ちました。そのきっかけとなった郵政民営化についてど
う考えたらいいのでしょう?
郵政民営化というと、「郵便局がなくなって不便にならないか」とか、「日本全国ど
こでも郵便が配達されるのか」という問題が取り上げられます。もちろん、これは大
きな問題です。
でも、小泉首相が唱える「構造改革としての郵政民営化」の主な対象は郵便ではあり
ません。郵便貯金と簡易保険です。この2つの分野を、郵政公社ではなく、新しく株
式会社を作って、そこに行わせようというのです(もっとも、株式会社の上に持ち株
会社を作り、国がその株の3分の1以上を持つことになっていますので、純粋な民間
会社ではありません)。
この民営化が必要な理由として、総額340兆円にのぼる郵貯と簡保のお金が問題だ
とされています。この金が政府の野放図な財政運営や無駄な公共投資、あるいは非効
率な特殊法人を温存させてきたというのです。さらに、このお金を「官」ではなく、
「民」に回すことによって日本経済を立ち直らせることができるとも宣伝されていま
す。
しかし、ここには2つの大きなゴマカシがあります。
第1に、国民にとって意味のない公共投資や特殊法人がはびこる原因は、郵貯や簡保
があるからではありません。普通の人たちが、厳しい生活の中からやっと取り分けた
お金を郵便局に持っていくことが、国の無駄遣いを生み出すはずはないのです。国の
財政政策や公共政策が間違ったのはそのような政策を立ててきた行政当局、つまり
「官」の責任です。その責任を負わないまま「民」の貯金や保険が問題だというの
は、明らかな責任逃れです。
次に、民営化された株式会社が、これまでの郵貯や簡保に相当するお金を集めたとし
て、そのお金は本当に経済の活性化のために使われるのでしょうか。残念ながらそう
ではありません。
長い不況を経験してきた日本企業は、今でもお金の有効な使い途を見つけられないで
います。東京証券取引所1部上場企業という一流とされている会社だけでも、82兆
円ものお金が現金貯金として眠っていると言われています。本来であれば、これらの
お金は設備投資に向けられ、そこから新しい雇用や所得が生まれるはずです。ところ
が、今の企業には、将来のビジョンを描ける力がなく、新しい設備を作り出していく
こともできません。その結果が、使い途のない巨額の現金預金なのです。
そんなところに、この何倍ものお金が流れ込んだらどうなるでしょうか。生産活動に
使う当てがないのですから、企業は、少しでも有利な預け先か投資先を見つけるしか
ありません。
その格好の対象とされるのが、米国の財務省証券です。これは日本の国債にあたるも
のですが、これを購入するということは、国民が営々として貯めたお金が米国に流れ
こむということです。つまり、これまでは主として日本国内で流動していた国民の資
産が、米国を中心とする世界経済の真ん中に取り込まれるのです。これまでも、財務
省証券の保有高で、日本は他を圧倒的に引き離していました(今年2月の数字では、
1位の日本は約7020億ドルですが、2位の中国は約1960億ドルと日本の4分
の1程度です)。民営化されれば、米国に流れ込む日本マネーはますます増えていく
でしょう。「米国の赤字を日本が面倒を見る」という構造がさらに進むのです。日米
の関係は、軍事だけでなく、経済でも、切り離せないものになりつつあります。
このことを最も歓迎しているのは、もちろん米国政府です。米国は、毎年、日本に対
し、「改革要望書」というのを出しています(小泉首相の考えでは、米国から来るの
は、「内政干渉」ではないのでしょうね)。そして、昨年10月の要望書では、「米
国政府は、日本郵政公社を民営化しようという小泉首相の野心的な奮闘に、特に関心
を有している」とされ、さらに、「本年度の米国の要望の中心は、日本郵政公社の民
営化は、野心的で市場志向でなければならないとの原則である」と述べられていま
す。このように、「野心的」という言葉を2回も使って褒められたのですから、小泉
首相としては何が何でも民営化を実現しなければならなかったはずです。
さらに、日本国債について、別の問題があります。これまで郵貯・簡保で集まったお
金のかなりの部分は、国債を買うのに使われてきました。民営化されたら、その会社
が国債を引き受けるかどうかは、その会社の自由なはずです。しかし、国が大きな発
言権を持った会社が国債の引き受けを断ろうと思っても、それができるとは限りませ
ん。むしろ、拒否するなどということはできず、これからも、株式会社という名の国
策会社が国債の引き受けを続けることになると思います。これでは、「官から民へ」
とはとても言えません。国民のお金が国債に流れるのですから、むしろ「民から官
へ」と言うべきでしょう。
こうして見たように、小泉首相の郵政民営化というのは、「官」でなすべきことをし
ないまま、国民の財産を、使う当てもない市場の中に投げ込むようなものです。それ
を真っ先に利用しようとするのは、「グローバル化」された世界企業だけです。本当
に資金を必要としている中小零細企業に回されることはありませんし、困っている個
人の助けに使われるということもないのです。
これでは、到底、「構造改革」とは言えません。経済が活性化するどころか、富める
者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなるのです。
私は、本当に構造改革をするのであれば、まず次の3つが必要だと考えています。
1 天下りの禁止
2 企業団体献金の廃止
3 財源移譲した地方分権
小泉首相は、いつも「官から民へ」、あるいは「民間でできることは民間へ」と言っ
てきました。しかし、この4年間、上に掲げた3つの「官」の問題には全く手をつけ
てきませんでした。官の問題は、官が解決しなければなりません。これを民営化する
ことはできないのです。
官僚の天下り禁止は、やろうと思えばすぐに実行できる政策です。それなのに、この
官僚の利権構造を温存し、官の特権を維持したまま改革ができるはずはありません。
だから私は、郵政民営化はまやかしだと言うのです。
kiyomi : 2005年08月19日
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