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首相の判断による衆議院解散は違憲だが、参議院の個別法律案否決を理由にした衆議院解散は度を超えた政治的専横である。
小泉首相が「郵政民営化」法案に賛成する議員で衆議院の2/3を占める目標を掲げていれば、憲法第五十九条の「衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる」という条項に沿った判断だとは言えるが、彼が掲げている目標は衆議院の過半数を占めることでしかない。
問題点は後述するが、小泉首相は、総選挙で「郵政民営化」法案賛成派が過半数を得ることで、反対票を投じた参議院自民党議員が賛成に変わるはずという理由で衆議院の解散に踏み切った。
これまでも書いてきたことだが、小泉首相に対しては、その理念や政策内容を云々する以前に、政治手法や政治家としての身構えにおいて適格性がないことを理由に内閣総理大臣の地位からできるだけ早く去ってもらわなければならないと考えている。
「郵政民営化」法案の審議過程や解散後の記者会見でも見せたように、論理的な説明を避け、掛け声(スローガン)や情緒的呼びかけで国民の気を惹くことに終始してきた。
また、年金未納や政治資金問題で自分に掛けられた嫌疑に対しては、安全地帯にいる子どもが親に吐くような“突っぱね”言動を国会の場で得々とぶちまけてきた。
イラク人質事件では、その情報を知りながらメディア関係者と酒食に興じ、初期の対応策策定を部下(福田官房長官)に丸投げした。
北朝鮮による拉致問題も、自らが煽った経緯があるにも関わらず、経済制裁を求める家族会に対し、なぜ経済制裁をしないのかやどうやって解決を図ろうとしているのかを説明することなくずるずると今日を迎えている。
日本経済をさらに弱体化するものであっても、「構造改革」路線の是非は論議によって決すべき政治課題だと思っているから、「構造改革」路線を掲げていることで内閣総理大臣としての適格性を問うことはしない。
政治家が論戦をすり替えでかわそうとしたり「ためにする」論を展開したり国民を情緒的に誘導する言動をすることもある程度は承知しているし容認もしている。
しかし、日本国内閣総理大臣としてその責務を果たそうという姿勢さえ見せず、自分が正しいと思う“フレーズ”を現実化するためなら論理的説明は不要という態度は許容できない。
一部の人たちは、そのような小泉首相を「信念を持ちリーダーシップに優れている」と評し、現在のように行き詰った日本を良くするためにはそのような“実行力”を持つ政治家が必要だと語っている。
「信念を持ったリーダーシップ」とは、どだい無理な100%を要求はしないが、この政策を実行すればこのように変わり、変わることのなかには利益・不利益もあるが差し引きで国民多数は利益を得るという説明をきちんと行いことを進めていくことである。
不利益を隠すためにそれを進んではしないとしても、問われたらきちんと応えていく態度はリーダーに最低限必要な資質である。
小泉首相に対する「信念を持ったリーダーシップ」評は、強い政治権力を持った人物が正しいと思っていることなら刀を振り回しながら実行してもかまわないと言うようなものでしかない。
「戦争で得た既得権益を失うことは英霊に背くこと」という信念が自ら仕掛ける必要のない対米戦争に踏み切らせ、「国体護持のためならば臣民は我が身を犠牲に捧げるべき」という信念が“大東亜戦争”の終結をずるずると遅らせた。
「財テクは新しい時代に尊重されるべき経営能力」という信念が、“バブルの形成と崩壊”を生み、現在なお続くデフレ不況につながった。
信念を貫くことはその人にとっては“美学”かもしれないし、そのような“美学”を共有する人にとってもすばらしいことに見えるかもしれない。
しかし、政治権力者に対して、その信念の内容を問わない共感や信念の現実化手法を問わない共感は愚かな判断でしかない。
● 今回の解散・総選挙を「国民投票」と位置づける詭弁
自民党議員は、直接民主主義を危ない制度だと嫌い、代議制民主主義を尊重してきたはずである。
しかし、小泉総裁・武部幹事長などは、今回の解散・総選挙は「郵政民営化」法案の可否を問うためのものだと主張している。
消費税導入という税制の一大改編でもその信を問うための解散・総選挙は行われなかったし、現在の政府・与党も、世論調査で反対が圧倒的多数であった自衛隊のイラク派兵の是非を問う解散・総選挙を実施することはしなかった。
自民党の憲法改正草案でも重要法律案の可否を「国民投票」で問うような制度は用意されていない。
自民党執行部が今回の解散・総選挙を「郵政民営化」法案の可否を問うためのものと主張しているのは、郵政問題が有権者にとって優先的政治課題ではないことや、代議士の選択(投票)が個別法律案に対する賛否で行われるわけではないことを知りつつ、自民党公認候補の当選者数と公明党の当選者数が合わせて過半数を超えたときに、国民は「郵政民営化」法案を熱烈に望んでいると牽強付会するための詭弁である。
重要法案は「国民投票」で決すべきと考えているのなら、そのような制度を規定した憲法改正を志向しなければならない。
野党議員や反主流派与党議員は、個別法案を「国民投票」にかけると叫んだ小泉首相や自民党の言動を今後の政局で大いに活用しなければならない。
小泉首相や自民党執行部は、総選挙で自派が過半数を獲得とすれば、民意は「郵政民営化」法案成立にありと強弁し、自民党参議院議員に「郵政民営化」法案に反対するものは国民の敵であるかのような論陣を張るだろう。
(小泉首相は、総選挙で「郵政民営化」法案賛成派が過半数を占めたら、自民党参議院議員で反対票を投じた人も賛成せざるを得ないだろうと語っている)
参議院議員のみならず新しく選出された代議士であっても、立候補にあたり自らが「郵政民営化」法案賛成と公言していない限り、たとえ国民(有権者)の90%が賛成であっても賛成する義務はない。
国会議員は、自分が掲げた政策に沿うべきであっても、国民の多数派に従うべき存在ではない。
小泉首相のようにそうだと言うひとは、違う表現で「大政翼賛会」の再現を声高に叫んでいることになる。
反対票を投じた自民党参議院議員が、小泉執行部の詭弁や脅かしに屈して「郵政民営化」法案に賛成票を投じるようなことがあったら、それこそ国会議員としての資質を疑われることになる。
● 郵政民営化と「郵政民営化」法案
小泉首相特有の強弁に類するものであるが、“郵政民営化=廃案になった「郵政民営化」法案成立”であるかのように言い立てるのは最悪の部類の言論詐欺である。
郵政は民営化すべきという大枠で同意しても、その目的・過程・形態などの考え方が同じだとは限らない。
「景気を回復させるべき」という命題には自民党から共産党までが同意している。
しかし、どうやって景気を回復させるかという話になれば、政党間のみならず政党内でも対立がある。
自らが提出した「郵政民営化」法案に反対するものは郵政民営化に反対するものというキメツケ(すり替え)には論理性のかけらも見られない。
その流れで、解散・総選挙を「郵政民営化」の賛否を問うものとし、過半数をとれば今回の「郵政民営化」法案の成立を国民過半数が望んでいると主張するのは口げんかレベルの言動である。
● 亀井静香氏ら反小泉派自民党員の採るべき道
亀井静香氏など反小泉派の自民党政治家をすでに見限っているが、小泉首相をその座から降ろす貢献はしてもらいたいと考えている。
見限っている大きな理由は、小泉的「構造改革」路線を亡国政策と考えていながら、好機を迎えても、「郵政民営化」法案や政治手法にとどまった小泉批判(それも泣き言に近い内容)にとどまっているからである。
「郵政民営化」法案は小泉的「構造改革」路線から出てくる具体的政策の一つなのだから、それを単独に云々するだけではなく、小泉的「構造改革」路線そのものを批判し、自分たちが考える改革路線を打ち出す好機としなければならない。(念のため、亀井静香氏の政策が正しいとかそれに同意するという話ではない)
亀井グループと小泉氏は、ともに森派であった時期の確執を引きずっている。
小泉氏が2回目に自民党総裁選に立候補したとき、亀井グループは表立っては小泉氏を支持していながら梶山氏に投票したため、小泉氏は自派の員数にも満たない票数で敗北した。こののち、亀井グループは森派から分かれることになる。
今回の政局でも、亀井グループは“小泉降ろし”の意向を持っていたはずだが、それがなかったとしても、小泉氏は亀井グループが自分を引き摺り降ろすために「郵政民営化」法案を利用していると考えても当然の関係にあった。
山崎拓氏も、旧中曽根派から分かれた経緯から、亀井氏とくっついた旧中曽根グループとの確執を抱えている。(亀井グループと旧中曽根グループが政策的に近いというわけではなく、少数派同士が影響力確保のために手を組んだという側面が強い)
さらに言えば、自民党内で「郵政民営化」法案に反対しているもう一つの主要グループである橋本派は、小泉氏及び山崎氏の宿敵であった経世会(竹下派)の流れを汲む政治勢力である。
このように見てくると、小泉氏にとって現今の政局は、宿敵を一掃するとまではいかないとしても、宿敵を弱体化させる千載一遇のチャンスであることがわかる。
亀井グループは、小泉氏の情け容赦のない敵対政策に文句を付けたり泣き言を繰り返すだけではしのぎ切ることができないだろう。
亀井グループは、「郵政民営化」法案賛成派である自民党公認の当選者と公明党の当選者を合わせた数が241名に達しないときは辞職すると明言している小泉氏を受けて、それを実現する戦いを徹底して進めることでのみ政治生命を維持することができるのである。
自民党反対派+民主党+共産党+社民党で241議席を獲得すれば、どの政党が中心になって政権を担うかという問題は別として、小泉氏は総理・総裁を辞めることになる。
亀井グループは、小泉氏が辞めた後で自民党と交渉すればいいのである。小泉氏から他の誰かに代われば、権力維持が接着剤となって自民党の統合は実現するはずだから、自民党反対派+自民党公認派+公明党で過半数を占めていれば政権を維持できる。
亀井グループは、自民党公認派+公明党の過半数割れとともに自民党主力政権維持を達成するために、欠席や棄権という政治行動をとった14人についても“変節”を回避させ自民党非公認で当選する動きを強めなければならない。
小泉氏の辞職条件が明確になった今、その一点に絞り込んだ政治決戦を挑まなければ亀井グループの政治的生命力は大きく失われてしまうことになる。
※ 内閣(首相)の独断による解散は違憲であるが、それを脇において論を進めた。
[参考投稿]
『“違憲”の「解散権」を振り回して恫喝する小泉首相:憲法は内閣総理大臣に無条件の衆議院解散権なぞ付与していない。』
( http://www.asyura2.com/0505/senkyo10/msg/596.html )
→七条解散の違憲性
『憲法規定に違背して内閣(行政機構)優位の統治構造が維持されてきた日本』
( http://www.asyura2.com/0505/senkyo10/msg/738.html )
→内閣(行政権)提出法律案の違憲性
『自民党などが考えている「憲法改正」は“違憲”であり、“違憲”を避けるためには“2段階”の改正手続きが必要』
( http://www.asyura2.com/0505/senkyo10/msg/609.html )
→憲法の全面改正は合憲か?
※ 郵政民営化政策については
『今回の郵政民営化政策について』
( http://www.asyura2.com/0505/bd40/msg/351.html )
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