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霧島連山に囲まれた宮崎県都城市。大型小売店の閉店などで活気を欠くなかで、都城郵便局では爆発的に売れている商品がある。個人向け国債だ。
国債の営業マン
今年度の販売額は二億八千万円強と九州の郵便局でトップクラス。これまでに目標の倍近い額を売り切った。貯金課に勤務する総務主任、岩戸光博(37)は十九年目のベテラン。パンフレットが詰まったカバンを抱えて市内を飛び回る。さながら国債の営業マンだ。
個人向け国債は財務省が二年前に販売を開始。膨らむ国の借金の調達先を広げるのが目的だ。一口一万円から証券会社や銀行でも買える。
しかし都城局からほど近い宮崎太陽銀行都城支店の担当者は「郵便局にはかなわない」と漏らす。元本保証で変動金利、中途換金可能といった商品性が、郵便貯金の主力商品である定額貯金とそっくりだからだ。
郵便局が郵貯や簡易保険で集めたお金の残高は約三百五十兆円。旧大蔵省の特別会計に預託され、財政投融資として政府系金融機関など特殊法人に流れた。
二〇〇一年度の財投改革で郵貯の全額預託義務は廃止。郵貯から特殊法人への資金のパイプは途切れたはずだった。だが実際には郵貯が国債の一種である財投債などを購入し続けている。
日銀統計によると、郵貯・簡保の総資産に占める公的部門向け投融資の比率は昨年三月末で九〇・一%。財投改革直前(八八・七%)より上昇した。これに個人向け国債の販売が加わる。国民のお金が郵便局を通じて「官」に流れ込む構図は変わらない。
「郵貯は国債引き受けの重要なインフラ。民営化の影響は十分に考えないといけない」。財務相の谷垣禎一(59)は国会で、政府の民営化方針では資金は民間に回らないのではないか、との指摘にこう反論した。
政府方針では、民営化前の郵貯・簡保資金のうち通常貯金を除く約三百兆円を「旧勘定」に区分、国債など安全資産での運用を義務付ける。
郵貯を引き続き「国債消化機関」にしておきたい財務省。年百兆円を超す発行が続く国債の安定消化は重要だ。だが官から民へ資金の流れを変えるという郵政民営化の原点に同省が慎重に構える背景には、もう一つの事情がある。
二〇〇一年七月。首相官邸。首相の小泉純一郎(63)に当時の財務次官、武藤敏郎(61)が向かい合った。
小泉「石油公団は廃止する。財務省も(所管の特殊法人を)一つくらいつぶせ。政府系金融機関は本来一つでいい」
武藤「政策金融は必要です」
小泉「財投機関に国が出した資金には(不良債権化して)返ってこないものもある」
武藤「郵貯は郵貯。財投は財投で改革を続けるしかありません」
小泉は経済産業省が所管する石油公団に続き、財務省にも日本政策投資銀行など政府系金融機関の統廃合を迫った。しかし財務省は徹底抗戦。小泉・武藤会談の翌年には民間の金融不安を和らげるという理由で統廃合の先送りが決まった。
天下り先を温存
政策投資銀や国際協力銀行の総裁はいまも財務次官OBが務める。理事を含め天下りポストは温存されたままだ。
政府は民営化法案を巡る自民党との協議で、郵貯・簡保会社の株式売却益などで新基金を設立、それを原資に両社の完全民営化後も全国一律サービスの維持をめざす妥協案を示した。民営化の成果である売却益の一部は実質的な地域対策の補助金に化け、国民全体には回らなくなる。
郵政民営化の原点は、巨大な郵貯・簡保が「官の無駄遣い」の資金源となっている現状を変え、政府のリストラを進めることにあったはずだ。
その無駄にはメスが入らず、逆に懸念が膨らむ。歳出削減で国債を減らす抜本策よりも、国債の安定消化を優先する政府の姿勢が、郵政民営化への国民の期待をしぼませている。=敬称略
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