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共謀罪 危惧や不安はもっともだ
犯罪を謀議しただけで処罰できる「共謀罪」の導入を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案の国会での審議が始まった。「国境を越えた組織犯罪の防止に関する条約」の要請に基づく改正だが、日本の刑事法制は犯罪の実行行為を裁くのが原則で、実行されなかった犯罪計画が罪に問われるとなると、歴史的な大転換となる。国際基準に合わせるのが目的とはいえ、国を挙げての論議が不可欠だ。結論を急いではならない。
同条約は国際マフィアによる銃器や麻薬の密輸の取り締まりを主眼とし、加盟国は国内法で共謀罪か組織的犯罪集団への参加罪のどちらかを整備することが条件とされている。政府は当初、「共謀や予備の行為を犯罪化することは、わが法制度に首尾一貫しない」として条約批准に消極姿勢を見せていたが、米同時多発テロ後の対テロ強硬論に押されて方針を転換したらしい。
政府が言っていたように、現行法制度で実行されぬ犯罪で罪に問われるのは、殺人、強盗、爆弾事件といった限られた重大犯罪に設けられている予備罪だけだ。刑法の共謀共同正犯で、謀議に加わっただけでも共犯に問われることはあるが、この場合も共犯者による犯罪の実行が前提だ。
法案では、犯行を計画した後、謀議に加わった全員が翻意して実行しなかった場合も処罰される。615種の犯罪が対象になるともいう。しかも、実行前の自首による減軽、刑の免除も認められるから、密告を奨励したり、捜査当局によるおとり捜査に道を開くことにもなりかねない。
南野知恵子法相は趣旨説明で「重大かつ組織的な犯罪を実行しようと共謀する行為を処罰する。具体的かつ現実的な合意がなければならない」と述べている。法務省も一般市民や労働組合、会社には適用されない、と説明している。
しかし、制定後の運用で解釈が変わったり、拡大されるのが法律の常だ。暴力団対策が目的だった凶器準備集合罪が、学生運動や市民運動の取り締まりに活用された経緯もある。共謀罪も、市民への弾圧法と化しかねない危険性をはらんでいる。衆院法務委員会の審議で法案への疑問が噴出、与野党双方から修正要求が出されたのも、市民の一部から「現代版の治安維持法だ」との批判の声が出ているのも無理からぬところだ。政府が条約の交渉記録の一部を黒塗りにして開示したり、条約では「組織的犯罪集団が関与するもの」が共謀罪の要件とされているのに、法案では明文化されていないことが、不安や不信を増幅していることも見逃せない。
政府はまず、条約に対して積極姿勢に転じた理由を明かした上で、条約が要請する法整備の範囲を明確にすべきだ。条約の要件が法案に盛り込まれなかったのはなぜか、も明快に説明してほしい。どうしても国内法の整備が必要とされる場合も、最小限で済ませるべきは当然だ。市民の危惧(きぐ)や不安を払しょくできないような法案を、認めるわけにはいかない。
毎日新聞 2005年7月25日
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/
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