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郵政民営化法案の参院採決のカギを握る「反対派」は、どんな人たちなのか。衆院採決前後、民営化反対派でつくる郵政事業懇話会の拡大役員会に出席した自民党参院議員１３人をみていくと、郵政官僚ＯＢら「族議員」と、反小泉を鮮明にする派閥幹部の意向に沿う「派閥系」とが混ざり合った集団、という姿が浮かぶ。（伊藤宏）
●「血判状」取り団結か、「反小泉」の号令重視
２１日の参院郵政民営化特別委員会。「この法律では多くの郵便局は廃局に追い込まれる」。長谷川憲正氏が民営化批判の力点に置いたのは、「郵便局の存廃」だった。
長谷川氏は郵政官僚ＯＢで、典型的な「組織内候補」だ。四国、東海両郵政局長や郵政審議官などを経て、小泉首相が郵政民営化を「公約」に掲げた０４年参院選で特定郵便局長ＯＢらの支援を受けて当選した。
１３人の中には、長谷川氏のほか、郵政政務次官を務めた吉村剛太郎氏や父親が郵便配達員で、母親が電報局に勤めていた荒井広幸氏もいる。
荒井氏は、長谷川氏らと「荒井勉強会」と呼ばれる会合を続ける。１４日には記者団に「これは天下の悪法だ」と語りつつも、今後の活動については「水の上に顔を出すと弾圧される。レーダーに映らないステルス作戦でいく」。
党内では、反対に向けて郵政族が中心になって集めた「血判状」があるとの情報も流れる。「荒井、長谷川……この辺はひっくり返せない」。政府関係者もつぶやく。
反対派のもうひとつの特徴は、反小泉を鮮明にする派閥幹部の影響を受けそうな人たちという点だ。１３人の派閥別の内訳は、亀井、旧橋本両派が６人ずつで圧倒的だ。
特に、法案否決―内閣総辞職を求める亀井静香元政調会長の影響力がカギになりそうだ。実兄の郁夫氏はもちろん、「（亀井派の）秋元司、桜井新、中川義雄各氏は反対で固い」（政府関係者）、「亀井派の４、５人は確信犯」（参院幹部）といった見方が出ている。秋元氏は、衆院採決で反対の青票を掲げて投じた小林興起衆院議員の元秘書でもある。
桜井氏は２１日の派閥総会後、法案否決―衆院解散といった展開を首相がちらつかせていることについて「邪道だ。できっこない。解散したら負ける」と非難した。
衆参の関係も微妙だ。旧橋本派の場合は、反対派を束ねる綿貫民輔前衆院議長と、青木幹雄参院議員会長のどちらの意向に沿うかの選択になる。
さらに、公明党の草川昭三参議院会長は２１日、党中央幹事会で「参院は衆院の上に乗っかっているケースがあるので地元の衆院が反対といったらなかなか賛成とはいえない」と説明。自民党幹部も「（佐賀県の衆院議員）保利耕輔、今村雅弘の２氏とも衆院で反対票を投じた。佐賀の岩永浩美氏は厳しい」という。
ただ、いまの自民党参院議員は、いずれも小泉政権下で議席を得た。小泉首相は２０日、経団連会館でのシンポジウムでこう語った。「私は衆院選挙、参院選挙でも郵政民営化を説いて、国民の信任を得たわけです」
◇ ◇
◆首相に毒された党三役 亀井郁夫氏
戦後の復興に大きく貢献し、子供への仕送りなどでも貢献してきた郵便局の１３０年の歴史は重い。小泉首相は郵政民営化に財投改革の効用を挙げるが、財投の問題は財務省に責任があり、郵政とは関係がない。
党内手続きも問題だ。党の政調審議会でも、総務会でも、賛成が得られていないのに、執行部は一任が取れたなどと言う。首相の執念に自民党の三役が毒されてしまっている。
◇ ◇
◆郵便局の収入断たれる 長谷川憲正氏
私が反対する一番の理由は郵便局がなくなるからだ。郵便貯金銀行、保険会社が設立されるが、これらは郵便局と契約する義務はない。郵便貯金、簡易保険で収入の７５％を占める郵便局は、収入の道が断たれてしまう。
郵便局は２万４千局。「社会・地域貢献基金」で２千局を救済しても焼け石に水だ。公社職員の人件費は３事業の収入でまかない、税金は一銭も使われていない。民営化しても税金の節約にはつながらない。
◇ ◇
◆恫喝・「少数決」には抵抗 中川義雄氏
政局にするとか、衆院を解散するとか、恫喝（どうかつ）で国会議員の信念を曲げさせようとするやり方はおかしい。抵抗せざるを得ない。党内手続きも「少数決」みたいなことばかりしている。
世論調査を見ても「郵政民営化は急ぐ理由がない」という結果だ。この法案は、伝統ある郵貯や保険を廃止し、郵便局の存在を危うくする。地方も良好なサービスを続けている現行制度の継続を望んでいる。
◇ ◇
◆衆院採決前後、郵政事業懇話会に出席した参院議員
秋元司 亀井（１）比例 小林興起衆院議員の元秘書
荒井広幸 亀井（１）比例 元自治政務次官、親が郵便局員
岩永浩美 旧橋本（３）佐賀 元農水政務官
太田豊秋 堀内（３）福島 元農水副大臣
亀井郁夫 亀井（２）広島 元内閣府政務官、亀井静香氏実兄
後藤博子 亀井（１）大分 元県中小企業家同友会理事
桜井新 亀井（１）比例 元環境庁長官
中川義雄 亀井（２）北海道 元党農水部会長
野村哲郎 旧橋本（１）鹿児島 元県農協中央会常務理事
長谷川憲正 旧橋本（１）比例 元郵政省郵政審議官
松村祥史 旧橋本（１）比例 元全国商工会青年部連合会長
吉田博美 旧橋本（１）長野 元県議会議長
吉村剛太郎 旧橋本（３）福岡 元郵政政務次官
（敬称略 名前の次から派閥、当選回数、選挙区、経歴。出席は懇話会事務局による）
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