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“違憲”の「解散権」を振り回して恫喝する小泉首相:憲法は内閣総理大臣に無条件の衆議院解散権なぞ付与していない。
http://www.asyura2.com/0505/senkyo10/msg/596.html
投稿者 あっしら 日時 2005 年 7 月 21 日 13:25:56: Mo7ApAlflbQ6s
 


何度も続いたり長期に存続するものは違憲であっても見過ごされるようになるという典型が、自衛隊と「七条解散」である。

小泉首相は積年の主張であった郵政民営化法案を今国会で成立させるため、衆議院の解散をもちらつかせて自民党内の反対派の動きを抑え込もうとしている。

一部の国会議員は小泉首相が振り回す解散権を違憲だと考えているようだが、主要なメディアは内閣総理大臣に無条件の衆議院解散権があるかのように切った張ったの政局報道を続けている。

現行憲法下での衆議院選挙(総選挙)は、ほとんどが任期満了ではなく内閣総理大臣による解散で実施されてきた。
多くの場合、「衆参ダブル選挙」に代表されるように政権与党が有利な状況で総選挙を実施するための手段として衆議院の解散が使われた。

しかし、現行憲法が内閣総理大臣に前提条件なしで衆議院解散権が付与していると解釈することは困難である。
前提条件なしの衆議院解散というのは、衆議院の内閣不信任案可決や内閣信任案否決という衆議院の国政行為を経ないままの衆議院解散を指す。
衆議院が内閣を信任しないという意思表示をしてもいないのに、天皇の国事行為に関する条項(第7条)をダイレクトに使って衆議院を解散できるという“荒業”が通用してきたのが戦後日本の政治実態である。


無理筋で行使されてきた「解散権」の該当憲法条文は、
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第七条【天皇の国事行為】

 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。

一  憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二  国会を召集すること。
三  衆議院を解散すること。
四  国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五  国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六  大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七  栄典を授与すること。
八  批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九  外国の大使及び公使を接受すること。
十  儀式を行ふこと。
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列挙されている項目のなかで、その国事行為を行う根拠となる国政行為が憲法条文として示されていないのは「栄典を授与すること」・「外国の大使及び公使を接受すること」・「儀式を行ふこと」の三つのみで、それ以外の七つの項目は、天皇が内閣の助言と承認に基づき行うとしても、それがどのような権源及び国政過程で決定されるものであるかを憲法自身が規定している。

三項の「衆議院を解散すること」が内閣の判断のみに基づく天皇の国事行為で可能なら、ある内閣(実質的には内閣総理大臣)が憲法を改正したいと考えれば、天皇に助言と承認を与えることで憲法改正を公布できるとも言えるのである。
しかし、憲法全体を理解すれば、憲法改正の公布という国事行為は、第九十六条に書かれた国政上の手続きを経たときに初めて可能であるがわかるし、政治に関心がある国民も政治家もそのように理解しているはずである。

第七条にある「内閣の助言と承認により」という規定は、憲法を含む法律に規定されているとか国政の動きでそのような決定がなされたことはわかるからといって、それを受けた天皇が単独の発意で国事行為を行うことをも禁止し、ある国事行為を天皇がしなければならないことが公知の状況であっても、天皇の国事行為は内閣の管理下で行われなければならないということを意味する。


第七条三項の「衆議院の解散」は、
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第六十九条【衆議院の内閣不信任】

 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
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という国政過程で内閣が衆議院の解散を選択したことを前提とする国事行為であって、その前提条件がないまま「内閣の助言と承認により」行えるものではない。

それは、現行憲法の基本理念・体系・条文を考えれば当然のように帰結する判断である。

政治権力に関する現行憲法は、最高権力機関=国会・議院内閣制・衆議院優位を基本としている。
そして、立法・行政・司法の三権分立を実効あるものにしようといくつかの相互牽制策が用意されている。

国会が国権の最高機関であるのは、国会議員が直接選挙で選出され、国民の権利義務や行政機構の在り方・活動目標を規定する法律を定め、行政権の頂点に立つ内閣を主宰する内閣総理大臣を国会議員のなかから選出し、行政機構の活動原資である予算を承認する権限を有しているからである。

端的に言えば、選挙を通じて国会より言えば衆議院で多数派を形成した政治勢力がそのまま行政権を掌握しさらには最高裁判事の任命権を通じて司法権にもある程度の影響力を行使できるという統治構造である。

憲法第六十九条の「衆議院の内閣不信任」は、衆議院自身が選出した内閣総理大臣に対し、指名(任命)後の行政活動からその任にふさわしくないと判断したときや国会議員政治勢力の離合集散があったときに行われる政治的意思表示であろう。

国権の最高機関である国会のなかで優越的地位にあり内閣総理大臣の指名決定権を有する衆議院なら、“単純”に内閣総理大臣を罷免できるようにしても体系的な齟齬はないと考えるが、三権分立概念からいったん自分を指名した衆議院が辞任を求めた場合衆議院の勢力構成を変え任を継続できる可能性を内閣総理大臣に与えたのである。
(衆議院にとっては、自分たちがいったん指名した内閣総理大臣を信任しないという政治的判断をしたら内閣総理大臣から議員を解職されるリスクがあるということになる)

内閣(内閣総理大臣)が衆議院を自由に解散できるというこれまでの理解は、国民が唯一直接選出することができる国家権力の構成者である国会議員(衆議院議員)を国会議員(衆議院議員)から選出されたに過ぎない内閣総理大臣が自由に解職できるいう転倒した権力関係を容認することになる。

憲法が第四十一条で「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」と規定するのは、国民主権を基礎に、国会構成者(国会議員)が主権者である国民から選出される存在だからである。

「七条解散」は、憲法第41条が規定する「国会は国権の最高機関」を無効化しかねない違憲行為である。

※ 「七条解散」が有効ならば、

第七十四条【法律・政令の署名・連署】
 法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。


この規定を利用して、内閣総理大臣は国会が採択した気に入らない法律に署名しないことで、米国大統領のような「拒否権」を行使することもできる。
国会が「拒否権」を覆すための規定はないから、日本の内閣総理大臣は選挙で国民から選出された米国大統領さえ手にしない法律拒否権を持っていることになる。

第74条は、国民の権利制限につながりかねない法律の施行について慎重な手続きを規定したものであって、内閣総理大臣に「拒否権」を付与したものではない。
内閣総理大臣に「拒否権」を付与したのなら、国権の最高機関である国会が拒否を覆す手段を規定しているはずである。


「七条解散」を合憲とするのは、第74条を根拠に内閣総理大臣に国会が可決した法律への「拒否権」を認めるのと同じくらい頓珍漢な憲法理解なのである。


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