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公明党・創価学会と日本
平野 貞夫 (著)
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公明党・創価学会の真実
平野 貞夫 (著)
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『月刊現代』2005年07月号(前月号)
宗教に権力が屈するとき
創価学会と公明党──「談合と癒着」のウラ政治史
平野貞夫(前参議院議員) × 魚住昭(ジャーナリスト)
魚住 平野貞夫さんといえば、小沢一郎の側近であると同時に、実は衆議院事務局に勤務していたころから公明党の政界指南役を務めてきたことは知る人ぞ知る話です。その平野さんが今度、『公明党・創価学会の真実』『公明党・創価学会と日本』(ともに講談社より6月下旬刊行予定)という二冊の本を出版するそうですね。なぜこの時期に、そういった公明党・創価学会批判の本を出そうと思ったんですか。
平野 私は国会議員になってからも、細川連立政権を立ち上げるときや、その後の新進党の結党のときなど、公明党・創価学会とはきわめて親しく付き合ってきました。お互い信頼関係で結ばれていたと思っています。しかし、最近は、公明党が理念を投げ捨ててしまったことを憂えていたのです。
そこにきて、4月に行われた衆議院の補欠選挙で、私は公明党・創価学会に心底幻滅しました。首相補佐官の山崎拓さんが出た福岡2区のことです。選挙期間中に山崎さんは、公明党の地区責任者が集まる会合に出席して、それまでの創価学会批判を詫びたうえで「皆様とは一心同体ならぬ、異体同心の思いです」と言っている。これは新聞でも報じられています。
権力が宗教を屈服させたのが「踏み絵」ですが、山崎さんの場合は逆でしょう。権力のほうが宗教に屈してしまった。私はこれを「逆踏み絵」と呼んでいるんです。
魚住 政治権力が宗教に跪いている、と。
平野 創価学会はここまでやるのか、という思いがします。これこそ政教一致以外のなにものでもない。山崎さんの当選は、憲法違反で、当選無効の訴訟が起こされてしかるべきです。なぜなら「異体同心」なんていうのは、政策の問題じゃない。信条の領域の問題ですから。
しかし新聞も有識者もその問題を批判していないし、まして民主党が国会で追及しようという動きもない。まさに日本政治の脳梗塞もいよいよ極まったという感じがします。だから私は、公明党へのアドバイス役を務めてきた自己批判も含めて、ここで公明党・創価学会の実像を検証しておく必要があると思ったんです。
投票率60%ならこわくない
魚住 先の補選での山崎さんの当選に、学会の動きは決定的な要因になったんですか?
平野 学会票だけで2万票動いたと言われています。次点との差が1万8000票くらいでしょう。2万票が次点の民主党候補に入ることはなかったと思いますが、学会が動かなければ、山崎さんと平田正源候補との差は僅少だった。投票日2日前までは、平田侯補が勝っていたとも言われています。
魚住 小泉政権が誕生して以来、イラク派兵をはじめとして危険な政策が次々と実現していますね。自公連立の強引さの背景には、小選挙区制が大きな影響を与えていると思うんです。
平野 そこは私は違う。選挙制度にパーフェクトなものなどないのです。たしかにいまの制度にも欠点はありますが、かつての中選挙区は談合・派閥政治の温床になっていたことを考えてください。あの制度を続けていたら、日本は本当におしまいだったと思いますよ。
選挙制度には、国民を代表するという役割と、それから政権を構成するという役割があります。国民をパーフェクトに代表する政権なんて成立しませんからね。そこで、安定した政権を構成できて、国民の意思も反映できるということで、比例代表並立制にしたんです。小選挙区制を導入したために悪くなったというのは、単なる結果論だと思います。
魚住 しかし学会票が当落を左右することになってしまいました。
平野 だから、あと5%ほど投票率が高くなれば、学会の組織票なんてどうということはないんです。前回の総選挙で、公明党は自民党との選挙協力をしたにもかかわらず、比例区で目標としていた1000万票に届かなかった。ずっと少ない800万票台です。これは「比例区は公明党に」といわれた自民党支持者の票を入れての数字ですから、公明党・創価学会関係者にとってショックだったはずです。公明党・学会以外の立場からいえば、投票率が高ければ、学会票は恐れるほどではない。だから、有権者の60%程度が、国政選挙においてきちんと投票をする国にならなきゃだめなんです。これは日本人一人ひとりの問題でしよう。
サマワ訪問の真相
魚住 平野さんは、公明党がイラク派兵を決めたのは、所得税の定率減税の廃止とのバーターだったと批判していますね。これは具体的にはどういうことだったんですか。
平野 2004年度の予算編成の目玉の一つは、基礎年金の国庫負担率を3分の1から2分の1に引き上げるということでした。その財源をどうするかという点について、公明党は、「定率減税を廃止して、それを財源に充てろ」と主張した。定率減税を廃止しても、公明党支持者・創価学会員には影響が少ないんです。自営業者が多く、そもそも所得税を払っていない人も多いんですから。当初はこれに自民党が猛烈に反発したんです。
魚住 なぜ自民党は反発したんですか。
平野 自民党の大きな支持基盤であるサラリーマソ層から票が入らなくなるからです。定率減税の廃止は、サラリーマソにとっては実質的に増税になりますからね。しかし、そうこうしているうちにイラク派兵をどうするかが大きな問題となった。自民党は、自衛隊のイラク派兵を認めるよう公明党を口説いた。おそらくは創価学会も、「サマワが安全ならば」という条件付きで、派兵を認めたのでしょう。それで、2003年12月に神崎武法さんが、わずか1時間ほどのサマワ視察で安全宣言をして、イラク派兵に道を開いた。このこととバーターで、自民党は定率減税の廃止を呑んだんです。
魚住 ところが昨年秋、定率減税を一気に廃止すると景気回復の足を引っ張りそうな見通しが強まってきた。そこで公明党は、「いっぺんに廃止するのではなく、段階的に廃止しよう」と言い出したわけですね。
平野 段階的ということにはなりましたが、構造は何も変わりません。結局公明党は、学会員や公明党支持者にとって一番影響の少ないところから財源をとろうという考えなんです。宗教団体が指導する政党が、国民の普遍的利益を考えずに、信者の利益を優先して考えているのです。
もうひとつ、私がこの廃止を問題にする理由は、そもそも自自連立のときに決めたこの定率減税の根本的な理念を無視しているからなんです。自自連立のときに決定した定率減税は、新しい社会保障のあり方を作る戦略の一環だったんです。もはや大量生産・大量消費の時代じゃないし、タックスヘイブンに本社を移転し税金を納めない企業も増えている。社会保障を所得税に頼る時代は終わったんです。そこで「税制の抜本改革をするべきだ。所得税を廃止して申告税とする。消費税を福祉目的税として活用すべきだ」という合意があって、定率減税はその一環だったんですよ。
岸信介と学会の関係
魚住 それにしても、神崎さんの滞在わずか1時間というサマワ訪問もそうですが、いま政権与党は国民を馬鹿にしていますよ。イラクでの多国籍軍参加も国会の議論なしに決めてしまったし、公明党もそれをよしとしてしまう。これは憲法体制の完全な否定ですよ。
平野 評論家の大宅壮一さんが、学会が公明党を作って政界に進出したときに、「ファシズムの体質がある」と指摘しています。最近になって私は、まさにそれは慧眼だったと思うんです。
魚住 現在の公明党にもファシズム的体質が受け継がれているということですか。
平野 そうです。いまの自公政権の構造は、自民党内の柔軟な保守層を政権中枢から外した小泉首相と、ともすれば一気にファシズムに傾きかねない公明党との結合体となっています。これが議会を機能させないような働きをしているんです。自民・公明が合意してしまえば、多数を握っているわけだから、もう民主党に議論させないでしょう。これでは本来、国民の要請を受けて国会議員が果たすべきチェック機能が働きませんよ。
それから日歯連から橋本派へわたった迂回献金の問題について、本来だったら公明党が一番、政治倫理の確立を言うべきでしょう。それなのに、橋本元首相の証人喚問もしようとしない。「これで打ち切り」となったら、一切議論しない。
魚住 結局、自公政権になってから、議会が機能しなくなっているのですね。
平野 まさに、それこそ間題なんです。私がもっとも心配するのは、公明党がいままでの動きを反省せずに、この路線を突っ走り、近い将来、彼らと安倍晋三が組んだ政権ができることです。
公明党は田中角栄以来、竹下派─小渕派─橋本派というラインとの関係が深いことはよく知られています。しかし、じつは創価学会は戸田城聖会長の時代から、岸信介と関係が深かったんです。岸さんが亡くたったときには聖教新聞が一面トップで大きく報じ、追悼記事を組んだほどです。岸の政治的DNAを引き継ぐ安倍さんと、ある意味で戸田城聖の遺言を忠実に守っている池田大作体制下の創価学会が、もういちど結びつく可能性は決して低くありません。
私はそれを懸念しています。安倍さんには、いま国内の一部の勢力が振り付けをしようとしている。そこに学会まで乗ってきたら、間違いなく日本のデモクラシーは壊れます。
魚住 安倍政権ができる可能性はどのくらいあると見ていますか。
平野 40%くらいですかね。
魚住 そんなにありますか。福田康夫政権は?
平野 20%くらいですかね。
魚住 それじゃあ、いま一番ありうるシナリオというのは、ポスト小泉で安倍政権ができ、安倍政権で憲法改正が現実化し、そこに公明党・創価学会が全面的に協力していくと。
平野 絵空事ではありません。両者の動きは、これからしっかり注視していかなければならんでしょう。
すべて名誉会長のため
魚住 もうひとつ、イラク問題については、公明党の冬柴鐵三幹事長が、「スプーン1杯で200万人の殺傷能カを持つ炭疸菌を、イラクは1万t保有している疑惑がある」なんてたびたび語り、自衛隊を派遣したい小泉首相の露払い役を務めましたよね。かつて公明党は平和や人権を標榜していたはずですが、冬柴さんの言動は、それとはずいぶん断絶していますね。
平野 私は、自民党との連立に一番こだわっているのは冬柴さんだと思っています。自自公の連立を組むとき、公明党には連立を嫌がる議員もたくさんいた。そういう人々を一人ひとり呼んで、説得したのが冬柴さんです。
実は冬柴さんに呼ばれたある人から聞いたのですが、「連立はすべて名誉会長を守るためだ」と言って、冬柴さんは議員たちを説得したそうです。
魚住 イラク問題で小泉路線の側面援助をするような冬柴さんの発言は、公明党が主導したのか、それとも冬柴さんの個人的判断だったのか、どちらだと見ていますか。
平野 私は冬柴さん個人だと思います。やはりそれは連立を強化しようという思惑があるからですよ。
それと彼の性格もあるんです。彼は新進党のときもああいう言動をしていました。つまり、その時々の党の権力者におべっかを使うんです。新進党での憲法調査会のときも、小沢理論をそのまま援用した。小沢さんにおべっかを使ったんです。そういうキャラクターなんですよ。
魚住 その後、冬柴さんは野中広務さんに対しても側面援助をずっとやっている。2人の精神的共鳴が、自自公連立のひとつの要因にもなっていますよね。
平野 それが彼の性格なんです。
魚住 つねに上位の人に寄り添っちゃう、寄り添う相手によって自分の意見がいかようにも変わる、ということですか?
平野 ええ。弁護士だからそうなのかもしれませんよ。顧客のいいなりになる(笑)。
魚住 こういうことは考えられませんか?「名誉会長を守るためだ」と言いながら、それを口実に実は冬柴さんは自身の保身を図っていると。
平野 そういう可能性もありますが、軽々には断定できませんね。
ただ私が思うのは、ある意味で、いま池田名誉会長はまったく実権を握っていないんじゃないかということです。
池田名誉会長は裸の王様
魚住 どういうことですか?
平野 名誉会長というのは、一種の裸の王様になっていると思うんです。名誉会長というカリスマを、会長の秋谷栄之助さんが牛耳っているのではないでしょうか。組織においては、腹心の徹底的に尽くすような態度が、逆にトップを苦しめることがあるんですよ。池田さんと秋谷さんの関係は、そういう関係のような気がしますね。
いいことでも悪いことでも、上から言われたことを腹心が100%こなしてしまうと、逆にトップとしては非常に苦しい思いをすることになるんです。いわゆる名番頭といわれる人は、その仕事の3〜4割はトップを諌めることなんです。それではじめて人間関係ができるんです。しかし秋谷さんは100%やってしまう。そこに秋谷さんの凄さがあるわけですが、私はそこに、彼の名誉会長に対する忠誠心以上の感情、一種の恨みにも似た感情があるような気がするんです。
魚住 興味深い分析です。創価学会には、まず池田名誉会長がいて、その下にはナンバー2もナンバー3も不在で、ナンバー20くらいになってようやく秋谷さんの名前が挙がる。そういう権力構造だという議論はよく聞きますけどね。
でも、そうだとしても、秋谷さんはどうやって名誉会長を動かしているんですか。トップの言うことを守るだけでは牛耳ることにはならないでしょ。
平野 いま、秋谷さんがしつらえたものに対して、池田さんがノーということはほとんどないと思います。あるいは、かなり以前からそういう体制になっているのかもしれません。
例えば、新進党の党首選挙で小沢さんを推すなんていうことは、はじめに神崎さんが言い出したことになっているけど、実は秋谷さんがオーソライズしていたんです。それに対して、池田さんはもう何も言えなくなっているんじゃないですか。
魚住 秋谷さんの動きが分かっているのに、何も言えない、と?
平野 ほんのつい最近まで、池田さんは「小沢と平野は大事にしておけ」と一部の側近に言っていたという話を聞いています。つまり池田さんの本心は、政治家とは全方位で付き合いたいんです。
魚住 池田さんが全方位を志向しているのに、その陰で秋谷さんが別の絵を描いているというわけですか。
平野 私はそうだと思います。だから池田さんにしてみれば、自分の人生の締めくくり方というのは、とても難しい問題だと思いますよ。
魚住 秋谷さん以外の幹部、たとえば都議会議員の藤井富雄さんとか、関西の実力者、西口良三さんたちも影響力があったのでは。
平野 役割からいえば格が違いすぎますよ。だから小沢さんの失敗というのは、秋谷さんの存在を軽視したことにあるとも言えます。小沢さんは、「こいつは何もわかっていない」とばかりに、秋谷さんから西口さんに傾いた。それが新進党を解党せざるを得なくなった原因のひとつですよ。公明党が政治改革に目覚めていくプロセスというのは、ずっと秋谷さんが主導しているんです。宇野さんから海部さんに首相が代わるときや、竹下さんが首相を辞任するときなんかに、いつも秋谷さんの使いが私のところに来て、「次はどうなるのか」と意見を聞きに来ていた。
だから簡単にいえば、創価学会というのははじめから宗教団体じゃなかった。政治団体だったんです。だって創価学会の二代目会長の戸田城聖だってそう言っています。私はそれでもいいと思うんです。まともなことをやる限りは。でも、いまの創価学会はそうじゃない。
魚住 そうすると創価学会を分析するときに、池田さんの人間像とともに、秋谷さんの人間像もきちんと理解しておく必要がありますね。秋谷さんの実像を平野さんはどう見ていますか。
平野 やんちゃ坊主のカリスマである池田さんをあやしながら、組織としての学会を確立したのが秋谷さんですよ。戸田城聖とか池田大作というひとりのカリスマが褒められたりけなされたりするうちはいいんですけど、組織としてさまざまな動きをすることは、非常に怖いことです。秋谷さんはそれをできる冷徹な人間なんですよ。
戸田城聖という天才
魚住 戸田城聖の話が出ましたが、彼の発言などを調べてみると、とても宗教団体とは思えない発想がいくつもある。驚くのは、まだ学会が組織的に弱体だったときに、聖教新聞を作っているんですね。メディアの重要性というものをあれだけ理解していた人物というのは、おそらく日本で最初といってもいいと思うんです。
平野 戸田城聖が優れていたのは、情報をどう集めるかという面、資金をどう作るかという面、そして選挙をどう勝ち抜いていくかという面です。しかしこうなると、性格的に宗教団体とはいえない。
魚住 彼は社会というものが、どういうもので形作られているかというツボを、きわめて正確に押さえていると思うんです。新聞、政治、そしてもうひとつ、教育・学校というツボも押さえている。これらを押さえたうえで、総体革命によって官僚をも押さえることができれば、世の中を支配することはできますからね。
平野 私は、宗教団体が政治に関わってもいいと思うんです。それで、例えば国立戒壇を作りたいというのなら、そういう論を立てるのも自由だし、そのために政治活動をするのもいい。いろいろ批判されることもあるかもしれないけれども、それが正しいと思ったらあえて打ち出せばいいんです。しかし彼らは、それじゃあ世間に通らないということが分かっているから、嘘をつき、本当の目的を隠しながら活動している。
魚住 そこが間題なんですよね。
平野 そうなんです。ただ政治の世界で嘘をつくというのは、公明・創価学会だけじゃないんですけどね(笑)。
ただ創価学会と公明党に対して、私が怒りを覚えるのは、「国立戒壇は目指しません、政教分離します」と言って、「これからは平和・人権・福祉が創価学会と党の方針です、これが理念です」と宣言したのに、それをこっそり変えちゃうことなんです。宣言したんだから、その方針を貫かなければならないんです。それをごまかしながらやっているから、「ひょっとしたら、国立戒壇もまだ……」という猜疑心を持たれてしまう。
憲法改正と公明党
魚住 いま、政界では憲法改正が現実味を帯びてきています。この状況をどう見ていますか。
平野 これは危ないですよ。もともと小渕首相が亡くなったドサクサに憲法に違反して作った森政権の人たちが政界に残っている間は、憲法改正などするべきではないんです。自民党の新憲法起草委員会の委員長に森喜朗さんが就いているのは、ブラックユーモア以外のなにものでもありませんよ。しかも、中曽根、宮澤という、まったく理念の違う人を委員に並べている。私は少なくとも、森政権を作った人たちが引退するか、自民党が解党するまでは、現行憲法を運用していくべきだと思いますよ。
魚住 「危ない」とおっしゃいましたが、どう危ないんです。
平野 民主党にも問題はありますが、そもそも憲法を「変える」という発想が間違っているんです。憲法というものは、政治家が共通の歴史認識、共通の時代認識を持ったうえで、何年もかけて条文化をして作り上げていくものなんです。
それをなんですか。すぐに条文の議論でしょう。9条をこう変えるとかなんとか、弁護士的な憲法論議ばかりやっている。条文から議論し始めれば、意見の対立を深めるばかりですよ。
文明の転換期にあたるいまは、新しい価値観や経済の基本原則についてみんなが合意しなければならない。それを抜きにした改憲論議なんてナンセンスですよ。ましてや自民党の結党50年にあわせて改憲試案を作るなんて、本末転倒もいいところです。
魚住 憲法改正に対する公明党の態度というのも非常に分かりづらいですね。加憲とか論憲なんていう言葉を使ったりしていますが、彼らの本音はどこにあるんですか。
平野 新進党の時代に、市川雄一さんは論憲という言葉を使っていました。加憲とか論憲とか、彼らは単に言葉遊びをしているだけですよ。ただし、仮に安倍政権が発足し、それを学会が本格的に支援するということになれば、内部の低抗はあるでしょうが、学会は安倍流の憲法改正にまで乗ってくると思うんです。
魚住 平野さんが不可欠だという時代認識、歴史認識とは、要するに「日本人とは何か」という問題ですよね。
平野 そうです。それから国家戦略、世界戦略というものを、100%とはいいませんが、ある程度の部分まで共有しなければ、憲法改正なんてできるもんじゃありませんよ。明治憲法だってそうやって作ったんですよ。天皇中心で行こう、列強に追いつき追い越そう、それから議会制を取り入れようと。そうやって明治という時代感覚が共有されていったんです。
魚住 その当時の憲法論議を調べてみると、かなり高度な議論をしているので驚きます。憲法学者である樋口陽一・早稲田大学特任教授はこんな話をしていました。明治憲法ができる直前に「そもそも憲法を設ける趣旨は、第一に君権(国家の権力)を制限し、第二に臣民(国民)の権利を守ることである」という議論を、なんと藩閥政治家の伊藤博文がやっているんですよ!
平野 それから憲法制定の議論の中では、それだけ憲法に詳しく、また権力者だった伊藤博文を叱り付けている官僚がいるんです。それくらい人間がしっかりしていたんですよ。
魚住 条文ばかり議論していて、どういう社会をつくるのかという根底の議論がまったくなされていませんよね。
平野 改憲派ばかりじゃなく、護憲派もしませんからね。
魚住 そうなんです。その恐ろしさといったらありませんよ。
平野 そもそも私は積極的な新憲法制定論者なんですよ。その私がこれだけ懸念を抱いているんですから、いまの改憲論議はあまりにも異常なんです。
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