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【布川事件が問いかけるもの―誤判はなぜ起きるのか】
(JANJAN 2005/10/04)
http://www.janjan.jp/area/0510/0510033296/1.php?PHPSESSID=60833c7f22bd1ab568e62f3c18b6d93b
布川(ふかわ)事件は、1967年8月28日に茨城県利根町で、一人暮らしの大工の男性(当時62歳)が殺害され、現金が奪われた事件である。本年9月21日に水戸地方裁判所土浦支部は、弁護側が提出した新証拠によって、確定判決が認定した殺害方法に疑いが出たと判断。桜井昌司さん・杉山卓男さんの第2次再審請求を認め、再審開始の決定をくだした(検察は9月26日、東京高裁に即時抗告)。
異例の捜査
事件当時、捜査は難航し、警察は10月10日に桜井さん、16日に杉山さんを、それぞれ別の容疑(桜井さん:窃盗/杉山さん:暴力行為)で逮捕した。警察の取調べで二人はそれぞれに、布川事件の強盗殺人について自白をする。しかし、その後の検事の取調べでは容疑を否認、担当検事は否認調書も作成し、強盗殺人容疑については拘留期間満了による釈放の措置すらとった。
だが、桜井さん(窃盗容疑)杉山さん(暴行容疑など)は、それぞれ起訴による拘留状態が続いた。本来、起訴後の二人は拘置所に送還されるべきところ、なんと警察の留置所に逆送され、ふたたび布川事件について自白を行う。さらに担当検事が交代し、二人は年末の12月28日に起訴された。
二転三転する自白内容と目撃証言
執拗で長時間にわたる取調べにより作成された自白は、その内容が二転三転する上に、金めあての犯行だったのに分配金額がはっきりしないなど、不自然な点が多い。再審開始決定は「自白は虚偽を誘発しやすい状況下でされた疑いがあり、著しい変遷が認められ、真実性に問題がある」と判断した。自白を裏付けるとされる目撃証言の数々にも、不自然で不合理な変遷があり、同決定では「状況証拠の価値を喪失」などと疑問をなげかけている。
決定骨子などを読むと、布川事件は、そもそも二人の逮捕、捜査と起訴、公判に、あまりにも無理があったといわざるを得ない。読者の中には「殺人も強盗もしていない二人が、どうして一旦は自白をしたのか」といぶかる向きもあろう。しかし少なくとも私は、私も警察署に長期間拘留され、連日、長時間にわたって取調べを受けたとしたら、していない犯罪も自白してしまうかもしれないと思う。
検察の不誠実
1968年2月15日に公判が始まった第1審から、桜井さん・杉山さんの二人は、一貫して犯行を否認し続けてきた。しかし第1審判決は有罪、東京高裁は控訴を棄却、最高裁は1978年7月3日に上告を棄却し、二人の無期懲役は確定。第1次の再審請求も退けられた。
この間、検察は段ボール箱9箱といわれる、二人の有罪立証に都合の悪い参考人調書などを公判に提出しなかった。今回、第2次再審請求の公判で、ようやくその一部が明らかになった。長年にわたって都合のよい資料のみを提出しつづけてきた検察は、不誠実ではないだろうか。なお、水戸地方検察庁は、再審開始の決定を不服として9月26日に東京高裁に即時抗告を申し立てた。
布川事件が問いかけるもの
今年は4月5日に、名古屋高裁が「名張毒ぶどう酒事件」(第7次再審請求)について再審開始決定をくだし、9月には水戸地裁土浦支部が布川事件の再審開始を決定した。だが検察は「名張毒ぶどう酒事件」については異議、布川事件については即時抗告を申し立てたので、どちらの事件もまだ再審は始まっていない。
しかし、もし奥西さん(名張)、桜井さん・杉山さん(布川)の3名が冤罪なのだとしたら(私見だがその可能性は高い)、警察、検察、裁判所のおかした過ちはあまりに大きい。犯罪捜査や立件、公判はどうあるべきなのか、布川事件、名張毒ぶどう酒事件は、私たちに大きな問いを投げているような気がする。
関連サイト
冤罪はこうして作られる
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=1491458
桜井昌司さん・杉山卓男さんを守る会
http://www.fureai.or.jp/~takuo/fukawajiken/
(青木智弘)