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「営業の神様」暴走 カネボウ帆足元社長
カネボウの帆足隆・元社長宅の家宅捜索を終え、マンションから出る東京地検の係官=29日午後7時10分、東京都世田谷区で
業績躍進の立役者が巨額粉飾の果てに名門企業を破綻(はたん)の淵(ふち)へ追い込んだ。カネボウ旧経営陣による粉飾決算事件で逮捕された同社元社長・帆足隆容疑者(69)。後発の化粧品事業を業界2位のブランドに育て上げた功績の陰で、不正な経理操作を主導し、市場を欺き続けた。社の頂点に登り詰めた「営業の神様」は、誰もその違法行為を止めることができない「裸の王様」となって転落した。(西川圭介、西山貴章)
●過酷ノルマ「覚悟しろ」
東京湾に近く、三角形の外観が目を引くカネボウ本社ビル。12階の会議室では、週に1回、帆足元社長や上席役員、企画・財務両部門の幹部らで構成する「経営会議」が開かれていた。
「計画必達だ。できない場合は覚悟しろ」。帆足元社長はトップに座った98年の直後から、事業部門ごとの営業ノルマを告げ、檄(げき)を飛ばした。
元幹部は「命令された数字は現実離れしていた」と振り返る。各部門は、架空利益を上積みした営業成績を競って並べ立て、帆足元社長の顔色をうかがう。粉飾決算の容疑がもたれた01年度以前から、既に不正の温床は出来ていた。
●異例の出世
香川県のとある街の化粧品店。早朝、店主が外に出ると、同県担当のカネボウ販売子会社支配人だった帆足元社長が、シャッターを見つめて立っていた。61年に入社した大阪の販売子会社で頭角を現し、30代で支配人に異例の抜擢(ばってき)をされていた。
「ここ、傷んでますね。会社のカネで直しましょうか」。修理した後のシャッターには、「カネボウ」の宣伝のロゴが描かれていた。帆足元社長は故郷の大分弁丸出しで「タダでは修理できませんよ」と、人懐こい笑顔を浮かべたという。
本業の繊維が低迷する中、多角化路線で生まれた亜流の化粧品事業が、猛烈な営業攻勢で売り上げを伸ばし、業界首位の資生堂を追い上げていく時期だった。社内には、夜から朝まで店先に立ち尽くし、根負けした店主から契約を勝ち取った帆足元社長の武勇伝が全国的に広まった。
「営業の帆足」の名は、最大の実力者、伊藤淳二・元名誉会長の耳にも届いた。本社に登用された後も、ノルマ強化で化粧品部門の売り上げ拡大に貢献し、同部門として初の社長となった。歴代社長は「学閥」とされる慶応大卒の管理部門出身者が占める。松山商科大卒で営業マンからたたき上げた帆足元社長は異例中の異例だった。
●「公私混同」
社長就任後、金遣いに悪評が立つ。同社関係者によると、数年前の親族の結婚式では、来賓に招いた全国の有力小売店主の旅費などを、カネボウの経費で落とさせたという。「公私混同がひどくなったが、誰も恐れて口出しできなかった」と元役員は話す。
98年に巨額の不良在庫が経営問題化していた毛布メーカー「興洋染織」との取引では、元副社長・宮原卓容疑者(63)とともに損失処理の先送りを決定。仮装取引を続けて被害を拡大させた。
化粧品の黒字を繊維や食品などの赤字が食いつぶす収益構造が続き、過酷なノルマ達成も不可能となった。「モーニングコーヒーから夜の盛り場まで一緒だった」と評される宮原元副社長と話し合い、01年度の債務超過を隠すため、「粉飾以外に道はない」という意見で一致した。
「営業現場ではナマの数字で勝負してきたのに、社長になって虚構の数字という麻薬から抜け出せなくなった」。化粧品部門の社員は嘆いた。
http://www.asahi.com/paper/national.html