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検察側「免訴」主張へ 横浜事件再審 刑の廃止、理由に
戦時下最大の言論弾圧事件とされ、9月にも再審が始まる見通しの「横浜事件」で、横浜地検は裁判手続きを打ち切る「免訴」を主張する方針を固めた模様だ。元被告を有罪とした治安維持法は終戦後の勅令で廃止されているが、刑事訴訟法は刑の廃止があった場合、免訴判決を下すよう定めており、実体審理を行うのは不可能と判断したとみられる。元被告の遺族や弁護側は、有罪・無罪の判断に踏み込まない免訴ではなく無罪判決を求めており、横浜地裁の判断が注目される。(二階堂友紀)
●元被告側「無罪判決を」
3月の東京高裁決定は、元被告が拷問で虚偽の自白を強いられた可能性を指摘。取り調べを担当した警察官を特別公務員暴行傷害罪で有罪とした判決などを「無罪を言い渡すべき新証拠」と認め、再審開始を支持した。
こうした事件の特殊性から遺族・弁護側は、実体審理で事件の経緯を明らかにし、無罪判決で元被告の名誉回復が図られることを求めている。
現在、検察側と弁護側は、旧刑訴法の規定をめぐり、公判を開くかどうかで対立。地裁が今月29日の三者協議で審理方法を決める見通しだ。免訴判決は、事件の内容に踏み込む実体審理以前の判断となるため、公判審理を開くかどうかの判断にも影響を与える可能性がある。
再審で免訴規定を適用すべきか、無罪を言い渡せるかについては学説が分かれている。このうち「免訴説」は、再審開始の確定後は通常の公判と同様に審理を進めるよう刑訴法が定めているとして、免訴判決を下さざるを得ないとする。また、食糧メーデーで掲げたプラカードの内容が不敬罪に当たるとされた「プラカード事件」をめぐる48年5月の最高裁大法廷判決は、免訴とされた被告が無罪を主張して上訴し、実体審理を求めることはできないと判示。免訴理由がある時に実体審理をすることの違法性を指摘した。これらを踏まえ、地検は免訴を求める判断をしたようだ。
これに対し、元被告の名誉回復という再審の理念を重んじる立場から、免訴理由があっても再審では有罪・無罪の判決を下すべきだとする「無罪可能説」もある。「大逆事件」をめぐる65年12月の東京高裁決定も「免訴規定は通常手続きについての定めで、非常救済手続きである再審には適用されないと解釈すべきだ」と指摘している。
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◆内容踏み込み審理と判決を
加藤克佳・愛知大教授(刑訴法)の話 もし免訴判決が下されれば、有罪か無罪かをはっきりさせることはできず、元被告の汚名をそそぐという再審制度の理念にそぐわない結果となる。東京高裁が「無罪を言い渡すべき新証拠がある」と判断し、再審開始を決定したことを踏まえれば、無罪の証拠が認められた場合は、無罪判決を下すべきだ。国による言論弾圧という横浜事件の特殊性を考慮すれば、なおさら事件の内容に踏み込んだ審理と判決が求められる。
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◆キーワード
<横浜事件> 評論家細川嘉六が富山県で開いた宴会を「共産党再建準備会」とみなされるなどして42〜45年、雑誌編集者ら60余人が、治安維持法違反容疑で神奈川県警特高課に逮捕された言論弾圧事件の総称。拷問で4人が獄死し、戦後、警察官3人が特別公務員暴行傷害罪で有罪とされた。98年8月に起こされた第3次再審請求では、「中央公論」の出版部員だった故・木村亨さんの妻まきさんら5人が裁判のやり直しを求めた。東京高裁は今年3月、横浜地裁の再審開始決定を支持。検察側も特別抗告を断念、再審開始が確定した。
http://www.asahi.com/paper/national.html