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(回答先: まじめな15歳がなぜ、3者面談前日の凶行 【読売新聞】 goo ニュース 投稿者 愚民党 日時 2005 年 6 月 22 日 17:18:16)
板橋・夫婦殺害 親の一言の重さ
衣食住バラバラ 子だけの世界築き
東京都板橋区の社員寮管理人夫婦殺害事件で、逮捕された高校1年の長男(15)は調べに対し父親(44)に犯行前日、「おまえはおれより頭が悪い」とばかにされたなどと供述した。父親への不満がうっ積する中で、直前の「言葉」が犯行に踏み切らせる「最後の一押し」となった可能性もある。親の「一言」が子どもに与える重さと、そこから見える親子関係とは−。
「感情的にバカヤロー、アホと言っちゃうときはある。そういうときは、やりすぎたなあと思って後できちんと話をする。小さくてもプライドはある。それを否定するとすごく反発される。男同士、大人同士として話さなければと、最近は思っている。子ども扱いは危険かもしれない」。小学六年、二年の二人の息子がいる都内の会社員男性(47)は実感を込めて話す。
逮捕された高校生は一人っ子だった。男性は、長男が合宿で家にいないときの二男の変化に驚いたことがある。「兄弟でいると言い合いもけんかもするが一人だとおとなしい。内面に何があるのか分からないかもしれないなと、その時思った。どっかでバランスを崩せば、負の部分を刺激する情報はインターネットやゲームなどにあふれている」
中学生の長男(14)を持つ都内の公務員男性(46)は「『おまえはバカだ』なんて、つい出そうなしかり言葉でしょ。難しい」と話す。
長男は小学校二年生の時、不登校が一カ月続いた。
「六歳離れた妹が生まれ、『お兄ちゃんなんだから、しっかりしろ』と怒ったことがあった。それだけしか言った覚えはないが、直後に登校しなくなった。不安になりましたね。今は意識して話しかけているが、子どもの方がろくに聞いていないようだ」
■「きつい言葉をかけぬように」
中高生の息子二人がいる会社役員(50)は「難しい年ごろなので、きつい言葉はかけないようにしている。約束を違えたりしたときなどに、ぎりぎりのところで注意するぐらい」と話す。スポーツチームのコーチもしている経験から「自分がなぜ怒られているかが分からないと、子どもにはこたえるようだ」という。
調べに対し、高校生は「土日や夏休みも父親に食事の用意や掃除でこき使われていた。(犯行前日)父親から『おまえはおれより頭が悪い』と言われ、頭を押さえつけられた」と話し、父親への恨み言を並べ立てているという。これまでの不満が前日の「一言」ではじけた可能性もあるようだ。
非行少年などの更生にかかわるNPO法人「ユース・サポート・センター友懇塾」理事長の井内清満氏は「おまえなんていない方がいい」と真顔で子どもに言う父親や、言葉で傷つけて子どもに殴られ、傷害で自分の子どもを訴える母親など、さまざまな家庭を見てきた。
■プライド否定されると…
「自分の子だから何をしてもいいという意識がある。子育てのどこが間違っているかを指摘してくれる人もいない。自分がかかわっている子どもの親も最初は『何で人に言われなきゃいけない』と居直るが、話しているうち納得し、親子の闘いもなくなってくる」
では、親子の間に“禁句”はあるのだろうか。
「言ってはいけない親のひと言」の著書もある、教育カウンセラーで子ども家庭教育フォーラム代表の富田富士也氏は「本来、親子の間で『言ってはいけない一言』はない。実は何を言ってもいい」としたうえで、こう指摘する。「四十−五十代の世代が子どもだったころに比べ、今は親子の衣食住がばらばらで、親子関係がぶち切れていることにまず気づくべきだ。親が『おまえなんか出て行け』『バカ』などと言い過ぎても昔は取り返しがついたが、今はこじれた関係を修復するタイミングがない。子ども部屋に引きこもったり、携帯電話やメールで連絡を取る子どもの人間関係に、親は無力になっている」
その結果、寸断された親子関係の中で「言ってはいけない一言」が出てくる。富田氏は、勉強や容姿といった目で見える問題以上に、本人が無力だと感じている精神的なハンディキャップを指摘されることが子どもにはこたえるという。
「例えば、気が弱い親は、子どもが気弱だとよけいに腹が立ち怒ってしまう。でも、子ども自身どうしようもないと感じている性格の弱さなどを言われれば、子どもは絶対的な無力感に襲われる。予想でしかないが、今回の事件でも『バカ』よりも前にもっと、子どもを無力にさせた言葉があるのではないか。さらに、爆発物まで仕掛けたことから、親子関係をゼロに戻したいというリセットの意識が垣間見える」
■「虐待として認知されず…」
「親の言葉というのは子どもにとって重いが、虐待とは認知されにくく、社会の盲点になっている」と指摘するのは、児童虐待問題に詳しい東海女子大学の長谷川博一教授だ。
親の言葉が子どもに与える悪影響は二つの形が考えられるという。一つは親が暴力的に怒鳴り続けた場合だ。子どもは、身体的な虐待を受けた事例と同じような形で、小学校高学年ぐらいから問題行動を起こすようになる。二つ目は、人格を傷つけたり、屈辱感を与える言葉を、諭すように言い続けた場合だ。子どもはしつけのように言われると反発しなくなり、おとなしくなるが、内面の負の蓄積は大きくなっていく。
今回の高校生や、山口県光市で爆発物を教室に投げ入れた高校生の事例は、後者と考えられるという。
■子ども本来の力を引き出せ
「父親は、少年が比較的小さいころから言葉で屈辱感を与えていたと推測される。ため込んだ気持ちを解消する場もなかった。怒りや悲しさのダムが満水となっているところに『おまえはおれより頭が悪い』という言葉が最後の一石となり、崩壊してしまったのではないか」。高校生は母親に対する同情の気持ちを供述している。「おそらく父親は母親に対してもばかにしたことを言っていただろう。母親に対してかわいそうだという気持ちと、ふがいないという気持ちの両方があり、後者の気持ちが事件に結びついたと考えられる」
親はどうすればよいのか。富田氏は「仕事が忙しいため、週末に集中して三十分ずつでも親子の会話に努めようとする家庭がある。でも、子どもたちに聞くと『親と話す土曜日が苦痛だ』とこぼす。親は仕事を優先した合理的な姿勢のままでいるわけで、子どもには通じない」と指摘した上で、「今は仕事を理由にすれば、どんどん親は自分を忙しくできる時代だが、もっと家庭に戻る時間を増やし、自覚的に家族と一緒の衣食住を取り戻す必要がある」と話す。
長谷川教授は子どもの持つ力に期待し、提言する。
「子どもは大人にとって本来、やっかいなものだ。大人にとって望ましい過ごさせ方をするのではなく、子どもらしい時間を与えることが必要だ。子どもは本来、自分で自分をしつける力を持っている」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050624/mng_____tokuho__000.shtml