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強権治安政策のツケ エジプト、不満勢力が協力か
23日、爆発があったシャルムエルシェイクのオールドマーケットで大破した車=AP
【カイロ=川上泰徳】シナイ半島の海洋リゾート、シャルムエルシェイクで23日に起きた同時爆破テロは、エジプトの観光産業に大きな打撃を与えることは必至だ。犠牲者数では、日本人観光客も含めて約60人が殺害された97年のルクソール事件も超えた。ムバラク政権は治安回復を最も重要な課題に掲げ、ある程度の成功を収めてきたが、再び凄惨(せいさん)なテロが起き、変わらぬ強権政策のツケが回った格好だ。
同政権はルクソール事件の直後、テロ再発を防ぐため、強硬派のアルフィ内相を更迭して現在のアドリ内相を任命した。同内相は獄中のイスラム集団やジハード団の指導者との対話路線をとり、99年にはイスラム集団指導部が「暴力停止」を宣言。暴力放棄を宣言した同組織メンバーを何回かに分けて釈放した。
アドリ内相の手腕によって、90年代半ばまで続いたイスラム集団と治安部隊との戦闘は終わりを告げた。しかし、イスラム過激派を生む政治、社会的な問題がなくなったわけではない。
米国はイラク戦争前後に「中東民主化構想」を打ち出し、民主化を親米国家のエジプトにも促した。今年になってムバラク政権は、9月予定の大統領選挙で初めて複数候補の立候補を認めるため、憲法を改正した。しかし、対立候補を排除する仕組みは変わらず、野党や同国最大のイスラム政治組織ムスリム同胞団は頻繁にデモを続けている。
エジプトは81年にサダト元大統領が暗殺されて以来、非常事態宣言が出されたままだ。治安当局は平和的なデモに対しても、参加者を大勢拘束する強硬策をとっている。当局は政府を批判する政治家や言論人、デモ参加者について、具体的な逮捕理由がなくても逮捕、拘束できる。
04年10月にシナイ半島のタバでイスラエル人ら30人以上が死亡した連続爆弾テロが起きた時も、同半島アリーシュで「2千人以上が令状もなく拘束された」と内外の人権組織が告発している。
シナイ半島はシャルムエルシェイクなど一部の外国人向けリゾート開発を除けば、住民用の社会基盤整備などが遅れた地域とされている。シャルムエルシェイクは海に囲まれた閉鎖的な地域なので、外国勢力だけではテロ活動は難しい。不満を募らせる地元のエジプト人の協力が不可欠だ。治安対策だけでは解決できない過激派問題の根の深さを示している。
政府は90年代から国際通貨基金(IMF)主導による経済改革を進め、基礎食料やガソリンなどへの補助金を削減。パンや砂糖、食用油の補助金は残っているものの、貧困層には生活苦への不満が強まっている。政権の腐敗や非効率、貧富の差の拡大など、政府への批判材料は山積している。かりに過激派の国内指導者がテロ活動を抑制しようとしていたとしても、かつて反政府の武装活動で最前線にいた若者たちの不満は消えていない。
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