★阿修羅♪ > ニュース情報1 > 289.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
ODA100億ドル増額、「債権放棄」苦肉の活用
貿易保険が絡む債権放棄の仕組み
政府は主要国首脳会議(G8サミット)で、政府の途上国援助(ODA)について「今後5年間で計100億ドル(約1兆1千億円)増額」を打ち出した。財政難をものともしない異例の大盤振る舞いにも見えるが、実はイラク向けなど貿易保険がからんだ「債権放棄」を駆使するからくりがある。財政再建の形を崩さないため、無償援助など一般会計からの拠出を抑えた結果、貿易保険を支える特別会計にしわ寄せが行くことになるうえ、無償援助の増額を求められる可能性も消えない。(日浦統、大滝敏之)
ODAには、一般会計が中心の無償援助や技術協力、主に財政投融資を活用する円借款などがある。ところが今回の増額決定で「主役」となったのは、もともとODAとは無関係な貿易保険付きの民間債権だ。
貿易保険付きで輸出や海外投資をした民間企業が、相手国から資金回収できなくなると、独立行政法人「日本貿易保険」が保険金を支払う。独法は政府の「貿易再保険特別会計」に再保険しており、政府は再保険金を支払う代わりに、相手国への「求償権」を得る。
求償権を放棄すると「援助と同等の効果がある」とみなされ、国際統計上は全額をODA実績額に計上できる。今回のODA大幅増額では、この仕組みをフルに活用している。
日本政府はイラクに対して、返済の遅れによる損害金を含め約70億ドル(約8千億円)の債権があるが、3段階に分けて80%放棄することを国際的に合意済みだ。この大半に貿易再保険が絡む。
他にもナイジェリア向けや重債務貧困国向けに同様の債権を計4千億円余り抱えており、「これらを放棄すれば『100億ドル増』は達成できる」(経済産業省幹部)状態にある。債権放棄は、ODA大幅増額の「ウルトラC」とも言えるが、何度も使える手ではないうえ、問題点も少なくない。
貿易再保険特会は、再保険金の支払いに合わせて一般会計から繰り入れて穴埋めするのが原則だが、財政難から先送り傾向が続く。アフリカなど多重債務国への債務削減に伴う穴埋めはここ数年先細りしており、05年度は20億円にとどまった。同特会を所管する経産省によると、必要な穴埋め額は約1900億円に上るという。
同特会の剰余金と資本金は計7千億円を超えているため、財務省は「財政的に安定している」として、06年度以降も大幅な繰り入れ増は認めない方向だ。しかし、世界的な大規模災害や経済危機などが生じれば、同特会の財政が急激に悪化し、多額の繰り入れが必要になる危険がある。
ODAの「質」の問題も残る。債権放棄が必要になるような途上国は一般的に、新たな資金も必要としており、無償援助への要望が強い。
国連は先進諸国に「国内総所得の0・7%」というODA水準を求めている。日本が安全保障理事会の常任理事国入りを目指すうえでも、「無償を着実に増やしていくことが不可欠」(外務省筋)との声が今後もくすぶり続けそうだ。
http://www.asahi.com/paper/business.html