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綿花補助金、南北で対立 米とマリの生産現場から
米−ガニソン
マリ−バマコ
綿花の国際価格の推移
先進国の農家が補助金を受けて農産物を大量に生産・輸出する結果、綿花や砂糖などの国際相場が低迷し、外貨獲得を農産物輸出に頼る途上国が貧困から抜け出せない――世界貿易機関(WTO)の貿易自由化交渉(新ラウンド)の農業分野では、関税引き下げと並んで、補助金の廃止・削減が焦点になっている。世界最大の綿花輸出国である米国と、綿花栽培を基幹産業とするアフリカのマリで、生産現場を訪ねた。(米ミシシッピ州=小陳勇一、マリ・バマコ=小森敦司)
●最先端の技術 米の巨大農家、低価格時に「収入を保証」
見渡す限りの綿花畑。米ミシシッピ州北西部、人口600人余の町ガニソンに、ケネス・フードさん(64)ら兄弟4人の農場はある。全約5500ヘクタールの9割が綿花畑だ。
月に3、4回、センサーを積んだ小型機を畑の上空に飛ばす。生育具合や土の湿り気、窒素の含有量などの情報を集め、農場のコンピューターを経由して、トラクターなどの農機の端末に送る。畑には、高さ約55メートルの送信タワー1本と約9メートルの補助タワー3本が立つ。
売り上げは、天候や相場次第で大きく変わる。昨年は約500万ドル(約5億6千万円)に達したが、干害の今年は150万ドル程度の見通し。
ただ、米国政府から数種類の補助金が出る。農家に保証される手取りは綿花1ポンド(約454グラム)あたり72セント強(約80円)と、近年の国際相場より2〜3割高い。フード家が受け取る補助金は年間100万ドル(約1億1200万円)前後だ。
このほか米国産綿花を買う国内紡績業者にも、年間で総額2億ドル以上の補助金が払われている。
現行の米農業法が成立した02年当時の全米綿花評議会議長がフードさんだ。「農産品の価格が低い時にコスト割れを埋めるのが補助金の目的だ。どうやったらマリの小農家の生活を、最先端の技術を使える米国の水準にまで引き上げられるんだ。50年か100年後なら可能かもしれないが、WTOは10年か20年で実現しようとしている」
●外貨獲得手段 マリの生産者、赤字でも「作るしかない」
マリの首都バマコから南西に50キロの村ダファーラ。熱帯林の間に広がる畑では、綿花が10センチほどに育っていた。ウジュマ・トラオレさん(49)が手で雑草を摘み始めると、額にはすぐに汗が浮かぶ。雨期でも気温は30度を大きく超える。
ウジュマさんの綿花畑は6・5ヘクタール。5月の種まきから10月の収穫まで、繰り返し雑草を取り、肥料を入れ殺虫剤をまく。綿花栽培にかかる労力はトウモロコシの5倍といわれる。息子たちが素足で雑草取りを手伝う。
政府系企業が今秋に買い上げる公定価格は1キロあたり160CFAフラン(約33円)。昨年より24%安い。米農家の手取り保証額の5分の1だ。
ウジュマさんによると、肥料代などが1キロあたり約210CFAフランかかるといい、今年は赤字が確実。それでも「現金を手にできる作物は綿花ぐらい。借金しても綿花をつくるしかない」。
マリの主要な外貨獲得手段である綿花は、政府系企業が全量買い上げる。公定価格は国際相場を参考に、世界銀行などとの協議で決まる。最近の綿花相場は、米国などの大量生産・輸出もあって低迷している。
マリにとって綿花は、人口の約3分の1が携わる基幹産業。しかし、国内の農業生産者団体AOPPのティアセ・コウリバリー綿花委員長は「このままではマリの綿花生産は消えるだろう。米国の補助金廃止に向けて、国際社会の動きに期待をかけたい」と話す。
●「廃止」へ動き、米議会は難色
大枠合意をめぐって大詰めを迎えているWTO農業交渉では、途上国が先進国の農業補助金の廃止・削減を強く主張している。綿花のほか、欧州連合(EU)の砂糖農家などに対する補助金もやり玉に挙がっている。03年9月のWTO閣僚会議が決裂したのは、綿花を生産するマリなど西アフリカ4カ国の強い反発が一つの引き金になった。
途上国支援に取り組む国際NGOオックスファムによると、米国の2万5千の綿花農家が受け取る補助金は年間30億ドル以上で、「これが世界の綿花価格を25%程度引き下げ、アフリカの農家を苦しめている」という。
米国の綿花補助金に対しては、貿易ルール違反とするブラジルの提訴を受け、WTO紛争解決機関の上級委員会が05年3月、ブラジルの主張をほぼ認める判断を下した。
米政府はWTO交渉の中で対応を決めるとしたうえで、輸出促進補助金については今月5日に廃止を表明。しかし米議会には反対の声が強く、国内補助金については政府も方針を示していない。
http://www.asahi.com/paper/business.html