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CIA工作員名漏洩疑惑 大統領側近に集中砲火 リーク「誰が」「違法か」
記者収監に非難声明
米中央情報局(CIA)工作員名の漏洩(ろうえい)事件で、リークしたとの疑いを持たれているブッシュ米共和党政権の実力者、カール・ローブ大統領次席補佐官に対する風当たりが強まってきた。ホワイトハウスはローブ氏擁護に躍起だが、民主党などは攻撃の手を緩めず、政争の様相を帯びている。この問題をめぐっては、特別検察官の要求をはねつけて取材源の秘匿を貫いた記者が法廷侮辱罪で収監されるなど、波紋が広がっていることもあって、捜査の行方は重大な関心を呼んでいる。(ワシントン 樫山幸夫、有元隆志)
■ローブ氏
十一日発売の米誌ニューズウイークが、疑惑を報じたタイム誌のクーパー記者の情報源の一人はローブ次席補佐官だったとローブ氏の弁護士が認めたと報じて以来、民主党は辞任要求などで同氏を集中攻撃してきた。ローブ氏が、政権の屋台骨を支えるブッシュ大統領の側近中の側近だからだ。
大統領は昨秋の再選後、ローブ氏をその「立役者」とたたえ上級顧問から次席補佐官に昇格させ、社会保障改革や税制改革などの内政課題とともにイラク問題、本土防衛など外交・安保にも関与させることを決めた。
ローブ氏は大統領が歴史に名を残すために必要な重要政策課題遂行のカギを握るといっていい。
大統領は十三日の閣議ではローブ氏が閣僚席の後ろに座っていたにもかかわらず、その際の記者団の質問には、「捜査が終了すれば喜んでコメントする」と述べるにとどまった。大統領が同氏を擁護する発言をすると見る向きが多かったため、この発言は波紋を広げた。
ブッシュ政権はローブ氏の関与について、二年前の疑惑浮上の際は全面否定したものの、今回はノーコメント一本やりだ。
民主党のリード上院院内総務は十四日、情報機関工作員の身元を漏らした政府高官から機密情報に接する権限を取り上げる法案を提出するなど、この問題で政権への揺さぶりを続ける構えだ。
民主党の攻撃が今後も続けば、重要政策課題の遂行に支障を来すとして、ローブ氏が身を引くとの観測も出ている。
だが、十四日に専用ヘリに搭乗するためカメラの放列を浴びながらホワイトハウスの芝生を歩く大統領が付き従えていたのはローブ氏だった。通常は一人で歩く大統領が同氏への信頼を誇示しているようにもみえた。
■捜査
今回の問題では公正、客観的な立場で捜査するためシカゴの連邦地方検事、パトリック・フィッツジェラルド氏が特別検察官に任命されている。
フィッツジェラルド検察官は、CIA工作員名を漏らしたのではないかと疑惑が持たれるローブ次席補佐官から三回にわたり証言を得ている。ブッシュ大統領、チェイニー副大統領、パウエル前国務長官らからも証言を得て、ホワイトハウスの多数の文書、高官らのEメール交信録などの任意提出も受け、これらを基に捜査を進めている。
米国の刑事訴訟専門家によると、検察官の捜査目的は、(1)誰がCIA工作員の名前をリークしたのか(2)リークが違法に当たるか−の二点に尽きる。
米国では直接、諜報(ちょうほう)活動に当たるCIA要員の名前は国家機密に指定されており、それを漏らせば法律で罰せられる。一般職員の名前は機密指定の対象とはなっていない。
ただ、諜報活動から離れてから五年以上たった要員の場合は氏名はもはや国家機密ではなく、それが漏洩したとしても犯罪を構成しなくなる。
ウィルソン元駐ガボン大使夫人の場合は、諜報活動から離れて七年が過ぎていたともいわれ、氏名は国家機密に当たらないとも指摘されている。
もう一つは「犯意」の問題だ。CIA職員は何万人もおり、一般職員か諜報活動に携わる要員か外部から判別するのは困難だ。もし、リークした政府高官が、その職員が諜報活動に携わっていることを知らずに名前をリークした場合、または、諜報活動から離れてまだ五年以内だとは知らなかったような場合、起訴が可能かどうかは議論が分かれるところだという。
十五日付のニューヨーク・タイムズ紙は「捜査は大詰めを迎えている」とのフィッツジェラルド検察官の発言を伝えた。
だが、タイム誌最新号では、事件取材で法廷侮辱罪に問われたクーパー記者がチェイニー副大統領のリビー首席補佐官も情報源の一人と報じるなど、状況は混沌(こんとん)としており、「起訴に持ち込むのは困難かもしれない」(刑事訴訟専門家)とも指摘され始めている。
■メディア
今回の事件では、取材源について連邦大陪審が求めた証言を拒否したニューヨーク・タイムズ紙のジュディス・ミラー、タイム誌のマシュー・クーパーの両記者が法廷侮辱罪に問われている。
ミラー記者は今月六日、四カ月の禁固刑を言い渡されバージニア州内の拘置所に収監された。同様に法廷侮辱罪で収監されることになったクーパー記者は自らの取材メモなど文書を提出、大陪審での証言に応じてひとまず収監を免れた。大陪審での証言内容は公表されていないが、クーパー記者は「情報源の了解が得られた」などと述べており、取材源を明かした可能性が強い。
「報道の自由」のためにあえて収監される道を選んだミラー記者に関しては、所属するニューヨーク・タイムズ社は“救出”の方策を検討中だ。
ミラー記者の弁護人は、「四カ月の禁固刑のうち一定期間が過ぎたところで『拘留を続けてもミラー記者が取材源を明かすことはない。それ以上の拘留は無駄だ』と裁判所に訴える」としている。一切の妥協を排して取材源を秘匿するという同記者や同社の決意は固い。
今回の記者収監については、ナショナル・プレス・クラブなども非難声明を出すなどしている。しかし、記者が証言拒否で禁固刑に処せられるケースは米国では少なからずあることもあって、広がりを見せてはいない。
ただ、今回の問題が、議会で進められている取材源保護法案の審議の行方に影響を与えることも取りざたされている。
http://www.sankei.co.jp/news/morning/19int002.htm