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【国際面】2006年06月03日(土曜日)付
ジャワ地震1週間 偏る援助、住民「不公平」
インドネシア・ジャワ島中部を襲った地震では、たった57秒間の揺れで6千人以上の生命が奪われ、家屋損壊は全半壊約14万戸を含む約23万戸以上に及んだ。テントとさえ呼べない路上の避難所もあり、食料不足を訴える被災者も多い。支援活動は本格化しているが、被害が特に大きかった地域に援助が集中し、周辺には届きにくいなどの問題も起きている。被災者に占める子どもの比率も高く、日常生活の再建には多くの困難が控えている。(ジョクジャカルタ〈インドネシア・ジャワ島中部〉=高原敦、小池淳)
2日、ほとんどの家屋が倒壊したクラテン県の村では、住民が協力してがれきの片づけ作業を始めた
クラテン県では、校舎が倒壊して休校中の小学校にも、子どもたちが集まってくる
ジャワ地震被災地
●テント不足
ぼろぼろに崩れた民家そばのテントの前で、赤ん坊をあやしていた上半身裸の男性が言った。「このテント、写真に撮って新聞に載せてくれ」。よく見ると、透明のゴミ袋を張り合わせてこしらえた「手作りテント」だった。
古都ジョクジャカルタから約20キロ離れたクラテン県コテサン村。人口は約2千人、ジャワ地震による死者は約20人と、最大の被災地バントゥル県に比べれば少なかった。だが村の家屋の9割以上が倒壊してしまった。
あちこちの急造テントで、横になったり、うつろな目を宙にさまよわせたりしている人がいる。口々に「援助が偏っている」と訴える。
村の中心部の三差路には、被災した村人が集まって情報交換する集会所が設けられていた。新聞のほか、地元テレビは連日地震のニュースばかりだが、数千人が死亡したバントゥル県の映像ばかりだ。最近は公的機関やNGOが次々と援助物資を運び込む様子も放映され始めた。
農業ハルジョノさん(40)は「バントゥルばかりに援助が集まって不公平だ。我々にも注意を払ってくれ」とつぶやいた。
ハルジョノさんらによると、まず雨露をしのぐテントが圧倒的に足りず、食料も総菜などが取れない。数日前、ボランティアの人がわずかな即席めんと米袋を持ってきてくれたが、行政側の援助はいまだない。日用品も不足し、鍋釜や台所用品などはがれきから見つかったものを近所の人で使い回している。
公務員プリヨルディさん(28)は、近所で一番大きかったという3階建てのれんが造りの家を失った。行政側とのコンタクトは取れていない。「建て直したい。州政府に援助してほしいのだが。遠い将来になるかも」とあきらめたように笑った。
●感染症不安
被災地では感染症が懸念されているが、家を奪われた村人たちは村を流れるカリオパ川の水で体を洗ったり洗濯したりしている。濁りで川底は見えず、大量のゴミも流れている川だ。
建設業ウントゥンさん(37)は「心配なのは食料と夜盗、そして健康面だ。援助が遅れている」。充血した目をしばたたかせながら言った。
インドネシアは人口の3割が15歳以下。「被災者の4割は子ども」という報告もある。校舎の多くが全壊する中で、行き場を失いかねない子どもの心のケアも課題になっている。
クラテン県全体では千人近くが死亡した。世界的に有名なヒンドゥー教遺跡「プランバナン」があるプランバナン市にあるセンゴン第3国立小学校に2日朝、子どもたちの歓声が響いた。
六つの教室があった校舎は全壊。全校児童127人のほとんどが被災した。校庭に建てた仮設の大型テントを教室代わりに、1日から授業を再開した。自宅が全壊してテント生活をしているワワン君(8)は「家は壊れたけど、けがはしなかった。友だちに会えてよかった」と笑った。
県によると、800の小学校のうち220校が全半壊した。中学、高校も計38校が壊れた。教育文化担当のジョコ・ストリシノさんは「被災した校舎は約400億ルピア(約6億円)をかけて再建する。新学期がはじまる7月までに、すべての学校で授業が再開できるようにしたい」と話す。
水田に囲まれたセンゴン第1国立小学校ではこの日、地元の大学生たちが子どもたちと一緒にサッカーや縄跳びで遊んだ。学生は皆、心理学を専攻。子どもの心のケアのために、5人1組で1日から学校の敷地に泊まり込んでいる。
●子の心に傷
同校も校舎は全壊した。154人の児童のうち、少なくとも3人が死亡。児童の95%は家を失っている。学校周辺の民家は、軒並みがれきの山だ。見知らぬ人に近づかなくなったり、口数が少なくなったりするなど、心理的な影響が表れている子もいるという。
大学2年のノリナさん(19)は「地震後、家の片づけが忙しくて、大人にかまってもらえない子どもが多い」と話す。
国連児童基金(ユニセフ)は、被害が最も大きかったバントゥル県にテントを設営し、子どもが遊べる庭を用意した。
ジャカルタから現地入りしている、保護担当職員のアイダ・エカさんは「5%くらいの子どもにトラウマの様子がみられる」と話す。
「ただ、今回の地震では、スマトラ沖大地震の時と比べて、子どもたちの多くが地震後も家族や地域住民と一緒に生活している。安心感をもたせて、少しずつ日常生活に戻してあげたい」
◆「州の官僚主義が援助妨げかねぬ」 副大統領が警告
1日に被災地入りしたカラ副大統領は「州当局の官僚主義が援助を妨げかねない」と警告した。州政府が、援助物資を受け取るのに「被災者の事前登録が必要」としたことで、配布の遅延や混乱が生じたからだ。
04年に津波と地震で被災したナングロアチェ州などに比べ、ジャワ島中部は観光地を抱え、インフラの整った「都市部」の印象が強い。04年の災害は政府が直接指揮をとる「国家災害」に指定されており、今回も指定するべきだとの声は強いが実現していない。(ジャカルタ=木村文)
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