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田中康夫の奇っ怪ニッポン】
2006年2月22日 掲載
どうした!? イケイケ守旧派の皆さんよ
畏(おそ)るべし米中。劣るべし日本。フィリピンのレイテ島で発生した大規模地滑り災害への対応を巡り、彼我の差は歴然としています。行方不明者を含む犠牲者が一体、何千人に上るのか、皆目、見当も付かぬ程に甚大な被害が現実に存在するにも拘(かかわ)らず、日本政府の対応は「遅い」「鈍い」のです。各紙から抜粋引用すれば、「約200名の米海兵隊員は20日朝、レイテ島沖に停泊した米艦船2隻からヘリコプターで現地入りし」、「ギンサウゴン村ではフィリピン国軍に加え、米海兵隊や台湾、マレーシアなど外国の専門家チームによる本格的な捜索・救助作業」が行われているのです。
のみならず、「中国政府はフィリピンに対し、100万ドルの緊急援助を行うことを早くも18日段階で決定」し、「その内訳は、現金が25万ドル、援助物資が75万ドル」となっています。「国際赤十字・赤新月社連盟が同日、国際社会に今後6カ月で152万ドル(約1億8000万円)の支援拠出を求める緊急アピールを発表」したのに対する即時対応です。
対する「台湾も緊急医療支援として10万ドル(1180万円)の支出を表明」し、負けじとばかりに「当初5万ドルの拠出を表明した米国も拠出額を10万ドル(約1180万円)に増額。74万ドル(約8700万円)の支援を表明したオーストラリアの他にも、シンガポールやスペインも救援を表明」しています。
では、一時期、国連常任理事国入りを政治課題としていた日本は、如何(いか)なる対応をしているのでしょう。驚く勿(なか)れ、「政府は19日、フィリピン中部のレイテ島で起きた大規模な地滑り災害を受けて、フィリピンに総額2500万円相当の緊急援助物資提供」を決め、その内訳は「テントや毛布、浄水器、発電機等、2500万円相当の物資」を送るのみです。イケイケ守旧派が大好きな、相貌の見える貢献は、これっぽっちも感じられないのです。
ガセネタを巡ってチキンレースに興ずる前に、亜細亜の一員として、将又(はたまた)、多くの“ジャパゆきさん”に国際貢献頂いている法治国家・日本として、今少しは考える事があるでしょうに。
郵政民営化が実現すれば外交問題も全て解決する、と広言していた宰相・小泉純一郎は、加えて、「ゴルゴ13」で世界情勢を学んでいるらしき外相・麻生太郎は、一体全体、如何なる思考回路を持ち合わせているのでしょう。中国を批判するのは簡単です。野放図な伐採が原因で頻発している国内の洪水を防ぐべく、近時、フィリピンから大量輸入しているのです。
環境配慮型を装う“死の商人”かも知れません。が、そんな悪徳振りも、迅速な支援行動でチャラです。災害救援活動では、或いは世界で最も知識と経験を有する筈(はず)の自衛隊を何故(なぜ)、派遣しないのでしょう。イラクのサマーワで、無菌培養状態の敷地内で終日(ひねもす)、過ごしているだけでは申し訳ない、と恥じ入っている心ある自衛隊員だって、少なくないのですから。
どうした国際貢献、と大見出しで批判する事すら忘れた護送船団記者クラブの面々も含めて、どうして、こんなに阿呆アホなんでしょう。【田中康夫】