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震災11年 教訓が生きない悔しさ
地鳴りとともに淡路島の断層に亀裂が走る。阪神高速道路が崩れ落ち、繁華街ではショーウインドーのマネキンが押しつぶされた。
阪神大震災を再現する7分間の映像だ。神戸港沿いの工場跡地に立つ「人と防災未来センター」の「1・17シアター」で上映されている。
兵庫県が震災体験の継承と災害支援を目的に02年4月に開館した。16万点の資料を備えるセンターには展示の施設もあり、年間50万人が訪れている。
震度7を実感できるこの映像は、怪獣映画の監督が手がけた。「生々しすぎる」という声もあるが、震災の記憶を伝える重い教材だ。
6434人が亡くなった阪神大震災から、きょうで11年になる。
大震災では81年以前の旧耐震基準で造られた建築物に被害が集まった。死因の8割が建物の倒壊によるものだ。人々を守るはずの住居が凶器となったのだ。地震で壊れにくい家に住む。それが震災の最大の教訓だった。
犠牲から学び、災害に備える。安心して住める街づくりこそ、最優先の課題である。しかし昨秋、被災者の気持ちを逆なでする事件が発覚した。
首都圏を中心に、マンションやホテルの耐震強度を偽装した事実が次々と明るみに出た。中には震度5弱の地震で倒れかねないものもあるという。「地震大国」である日本で、そんな建物に住むのは命にかかわることである。
そのことは全壊10万棟という阪神大震災で目の当たりにしたはずだ。一連の耐震偽装事件は、震災をひとごとのようにやり過ごし、安全より利益追求に走る社会の姿を浮き彫りにした。
いま、日本には偽装物件と同じように危うさを抱える住宅が1150万戸もある。古い基準で建てられたため、耐震性に不安が残るのだ。国内の全住宅の25%を占めるこれらの建物を、政府は10年で10%に減らす目標を掲げている。
耐震性を調べたうえで、改修を急ぐべきだ。そのために国や自治体の支援が欠かせない。県庁所在市では横浜、静岡、大津など9市が耐震診断の費用を無料にしている。地震に強いか弱いか、知らなければ改修は始まらない。手始めの負担をなくすことは意義がある。ほかの自治体も考えるべきだろう。
耐震性に不安のある住宅の数は膨大だが、98年から5年間で250万戸減った。工夫しだいでもっと目標に近づけることができる。病院や学校など公共施設の改修は、優先して進めた方がいい。
人と防災未来センターでは37人が震災の語り部として体験を伝えている。そのひとり、神戸市の秦詩子(はたうたこ)さん(60)はマンションの6階で被災した。1階がつぶれ、九死に一生を得た。「ミキサーの中にいるようだった」と話す。
犠牲を無駄にしない活動が、地元では地道に続く。残された者たちの責任は、より安全な街を築くことだからだ。
http://www.asahi.com/paper/editorial.html