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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050911-00000003-maip-int
【ヒューストン(米テキサス州)國枝すみれ】「人生で2度、ボートに救われた。でも、今回のほうが怖かった」。大型ハリケーン「カトリーナ」の被災者でベトナム系米国人のタム・グエンさん(43)はテキサス州ヒューストンの教会に設置された避難所で顔をこわばらせた。
「カトリーナ」に直撃されたルイジアナ州ニューオーリンズには「サイゴン」という名の通りもあり、約8000人のベトナム系住民が暮らしていたといわれる。ボートピープルとして故国を脱出した経験を持つ多くの住民が再び、すべてを失い、隣州の同胞の下に身を寄せている。
ハリケーンが上陸した8月29日午後、グエンさんはたった一人でニューオーリンズ市内の自宅にいた。子ども5人はテキサス州ダラスの親類宅に避難、同市役所に勤める夫(53)は母親を連れて前日に市を脱出していたが、グエンさんはそれほどひどくなるとは思わなかったという。
しかし、増える水を見てグエンさんは「死ぬほど怖くなった」。近くのベトナム系住民の集会所に駆け込むと、300〜400人の同胞が集まっていた。同31日にボートで脱出し、近くの高速道路の高架の上で一夜を過ごした。9月1日、州兵に誘導され、臨時避難所となったコンベンションセンターに移動した。
センターは混乱を極めていた。鼻を突く悪臭。レイプされ、殺された子どもの遺体が2階にあるといううわさが広まった。子どもを真ん中、次に女性を座らせ、一番外側に座った男たちが防護した。グエンさんは「のども渇かないし、食欲もなかった。恐ろしくて一睡もしなかった」と話す。
同月2日、グエンさんの居所を突き止めた夫がセンターにやってきた。「すぐにここから出るぞ」。夫婦は5人の親族と車でテキサス州に脱出。ベトナム人神父が経営するヒューストン郊外の教会に身を寄せた。
同じ教会には約200人のベトナム系住民が暮らす。美容師キム・トレンさん(33)は8歳の時、ボートでフィリピンに脱出した。「当時は水もなくなり、このまま死ぬのかと思った。それに比べればまだ、ましだ」と楽観的だ。
元南ベトナム軍兵士で、75年の統一後、8年間の刑務所暮らしを強いられたトロング・ヴさん(79)は「ハリケーンなど何でもない。財産をすべて失っただけだ」と淡々と話した。
(毎日新聞) - 9月11日10時29分更新