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09/07 19:44 米社会の脆弱さ一気に噴出 貧困、銃、差別…問題山積
唯一の超大国として君臨する米国の主要都市が、「カトリーナ」
という一つのハリケーンであっけなく壊滅した。激しい風雨による
堤防の決壊と洪水という「外的な力」に加え、大量の避難民が行き
場を失い一部が暴徒化、略奪と銃撃による無秩序が街を覆って人口
約四十六万人の都市を内部からも崩壊させた。
記者がルイジアナ州ニューオーリンズに入ったのは九月二日未明
。異常事態に直面したとの実感は、郊外の高速道路沿いに放置され
た無数の車を見たころから始まった。避難民が燃料切れで放棄した
もので、真っ暗な路肩に頭を突っ込んだ車は、光を目指して飛び続
け、ついに力尽きた虫の死骸(しがい)のように見えた。
市内に入ると、空のペットボトルを満載したショッピングカート
などが散乱。八歳ぐらいの黒人の少年が、たった一人で市外に向か
って歩いていた。手ぶらでTシャツにサンダル姿。電気と水がある
のは、約百キロ離れた州都バトンルージュだ。
ルイジアナ州は全米でも最も貧しい地域の一つ。米国勢調査によ
ると、一世帯当たりの平均年収は約三万二千ドル(約三百五十万円
)で全米平均を九千ドル程度下回り、人口の約20%が貧困層。
競技場「スーパードーム」に取り残されて缶詰め状態となり、水
も食料もない極限状況に陥った約二万五千人の大多数が黒人の貧困
層だった。
「ドームに一時避難したが、排せつ物をまたいで歩くような状況
で、浸水した自宅に帰った。人間に対する扱いではなかった」と、
黒人の自営業チェスター・リーダーさん(46)は振り返る。リー
ダーさんは警官の目を盗んでドームを離れたが、避難民の多くは「
移送バスを待て」と退去を禁じられた。息が詰まる湿気の中で自由
を奪われ、奴隷貿易の中心地として栄えたニューオーリンズの忌ま
わしい過去がよみがえった。
別の避難民によると、最初に暴れたのは麻薬中毒者で、「麻薬が
手に入らないため正気を失い射撃を始めた」という。混乱の中、市
内各地で略奪が始まる。一部の暴徒は、銃を販売するスポーツ用品
店や雑貨店も略奪、警察官らの襲撃に用いたもようだ。
貧困、麻薬、銃、差別といった問題が山積する米社会の脆弱(ぜ
いじゃく)な部分が、ハリケーンにより圧縮され、爆発した。「ハ
リケーン襲来前に市外に避難しろって言われても、ホテル代がなか
ったんだよ」と話す残留者の一人。モテル宿泊代の五十ドルが生死
を分けた市民も少なくないだろう。
ニューオーリンズは五万人に上る兵の派遣で治安が回復し、ブッ
シュ政権による〓(始めダブルミニュート)制圧作戦〓(終わりダ
ブルミニュート)は成功しつつある。しかし、貧しい黒人市民の間
には「白人地域の復興ばかりが進んでいる」との疑念が広がってい
る。
富裕層には自衛のため銃の購入ブームが起き、先日立ち寄った郊
外のファストフード店では、白人の男性客が「女房に銃の撃ち方を
教えたけど、全然だめなんだよ」とぼやく声が聞こえた。現実を無
視して力で押さえ付けても離れていく人々の心。約二年前に取材し
たバグダッドの情景が頭によみがえった。(ニューオーリンズ共同
=半沢隆実)
20050907 1944
[2005-09-07-19:44]