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アメリカン・ジャズの故郷、ニューオーリンズが消滅する。家屋を浸した水にバクテリアなどが繁殖し、住民は残らず立ち退かされ、遺体や動物は放置され、たとえ水が引いても、もはや住める環境ではない。恐らく汚染を手っ取り早く一掃するために、市街に火が放たれるであろう。その昔ネロ皇帝が放火したと言われるローマのように焼き尽くされるのだ。大火を眺めて全米国民は黙祷するしかないだろう。
その昔、綿花農場における労働のhard times をひと時でも忘れるため、黒人奴隷たちは歌い、踊った。身の回りにある日用品、古バケツを叩き、壊れた水道管を吹き鳴らし、櫛をかき鳴らし、モップに弦を張って音を創った。ジャズの誕生である。仲間が死ぬと、「おまえは何と幸せなんだろう」と歌いながら、陽気なブラスバンドの葬列が町中を行進した。キング・オリバー、ジェリーロール・モートン、シドニー・ベシェ、ベッシー・スミス、ルイ・アームストロング、ジョージ・ルイス ---- 偉大な芸人たちの魂が宿っている街だ。『サッチモ故郷に帰る』というドキュメンタリー映画で、アフリカの空港に着いたルイ・アームストロングが、トランペットを吹きながらタラップを降りて行くと、飛行場は2万人の黒人の群集で埋め尽くされ、一斉に喚声を上げて迎え、やがて狂喜して踊り始める。冒頭の感動的なシーンだ。大恐慌後の1930年代、失業者が街にあふれた時代、ジョージ・ルイスの『世界は日の出を待っている』のバンジョーの強烈なリズムが、いかに飢えた人々に希望を与えたか。その記念すべき故郷の街が廃墟と化したのである。この歴史上の大きな汚点は、国内を無視して軍産複合体に奉仕し、戦争に狂奔するブッシュ一党が負うべきものだ。