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■ PS3はゲーム機ではなく汎用コンピュータである
PS3にもPSPによく似たXMB方式のメニューシステムが搭載される
PS3の価格は下位モデルで62,790円。上位モデルはオープンプライスだが75,000円前後になる見込みであり、ゲーム機としてみると非常に高価だ。ところが、「PS3は単なるゲーム機ではない」ということが昨年のE3以降言われつつあり、これを踏まえれば、今回の価格公表こそが「単なるゲーム機じゃないのだ」というメッセージと等価であるようにも思える。
まずはハードスペックではなくコンセプト面において、PS3はこれまでのゲーム機と何がどう違うのかを川西氏に聞いてみた。
「PS2も含めて、これまでのゲーム機は、ゲームディスクにOSからドライバにいたるまでが入れられていました。これはそのゲームプラットフォームが生き続ける間、そのゲーム機のハードウェア仕様を変更しないというコンセプトがあったからです。ところがPS3では、ハードウェア仕様が時代の要求に従って変わることを許容します。つまり、PS3ではOSやドライバがPS3本体側にプリインストールされており、まずはこれが起動して、そのハードウェアの違いを吸収する役割を果たすことになります。つまり、非常に、現在のPCの姿に似ていることになります」(川西氏)
ソフトウェアは、ディスク起動だけでなく、SDカードスロットやメモリースティックスロットからもインストールや起動が可能になる。こうしたソフトウェアはゲームスタジオによって制作されたものだけでなく、個人が制作したものの実行も許容される。
「PS3ではLinuxを搭載する予定ですので、Linuxプログラミングの活動が認められます。裾野の広いプログラミング環境を提供する……というのは面白いことだと思うんです。プレイステーションの時にも様々なクリエイターを発掘しましたが、PS3でもいろんな方々がクリエイターとなってデジタルコンテンツを作って頂きたいというのがあります。ライセンス契約をしているゲームスタジオ以外の個人の方でもPS3のコンテンツクリエイションに参加して欲しいと思いますね」(川西氏)
PS3というエコシステムを考えたときに、ゲームスタジオはやはりこれまで通りPS3をゲーム機として、ライセンス料を支払ってゲーム開発に参加する。では、そうした個人開発者達はどういった形でPS3のソフトウェア開発に参加すればいいのだろうか。
「そうした個人の開発者に対してライセンス料を要求する……というのはLinuxワールドではちょっとあり得にくいですね(笑)。ライセンス締結したゲームスタジオがPS3のゲーム開発を行なう場合は、SCE側から開発に必要なツールやライブラリといったSDKライブラリが提供されますし、さまざなテクニカルなサポートも行なわれます。これに対して、PS3をLinuxワールドで利用するという場合には、ライセンス料などの要求もされない変わりに、そうしたツールやSDKなどのサポートは最低限になりますから、自分たちでいろんなことを解決していかなければならないという、いろんな意味での制約というのはあると思います」(川西氏)
Linuxプログラミングがある程度DIYの世界であることはわかるが、CELLプロセッサに内蔵されるSIMD型ベクトルRISCプロセッサである SPE(Synergistic Processor Element)の活用などは、システム側のサポートがないと難しいといえるが……。
「Linuxベースでも、CELLプロセッサに関しては、OS側のスーパーバイザーのハードウェアのレイヤーの管理下にはなると思うんですが、SPEなんかも含めて開放できると思っています。ただ、ゲームプラットフォームとしてのPS3のビジネスと、Linuxワールドの中のPS3というのを融合させるようなつもりはないですね」(川西氏)
ということは、PS3をかなり強力な汎用コンピュータして活用できることになり、そうなれば、PS3を“プレイステーション”ではなく“ワークステーション”としての価値を見出す使い方も出てくることだろう。
たとえばだが、HDVカメラなどで撮影したHD動画像を編集したり、H.264にトランスコードしたり……といった処理は現在のWindowsベースの PCでも相当ハイスペックなマシンでないと時間が掛かるやっかいな作業だ。PS3であれば、CELLプロセッサのパワーを活用することで、かなりこうした処理を効率よく実行できそうに思える。実際、そういう活用が見出せたときには、6〜7万円という本体価格は決して高くないようにも思えてくる。
PS3では「ゲームではないソフトウェアの台頭」……、もっといえば「実用ソフトウェアの台頭」がありうるのだろうか。
「PS3はどこまで行っても“プレイステーション”です。ですが、コンピュータエンターテインメントというくくりで考えれば、PS3に提供されるべきものが必ずしもゲームである必要はないともいえます。そうなったときにはWindows PCに代表されるパソコンと競合してくるんじゃないかな、とは思いますね」(川西氏)
今回はそういったPS3に対するノンゲームソフトウェアの可能性については全く示唆されなかったわけだが、これはどういうことなのだろうか。
「それは、なにしろ、このイベントがE3ですからねぇ(笑)」(川西氏)
■ PS3に必要なもの〜それは「Office for PS3」!?
今、既にPS2で満足しているカジュアルゲームユーザー層にとって、“ゲーム機として”見たPS3はとんでもなく高価なものに思えるはずだし、購入したいと思う人は少ないかもしれない。BDプレーヤーとしての価値も見出せるが、現行DVDで大半の一般ユーザーが満足している現状において、その訴求だけで PS3の価値を見出すのは正直、苦しい。
しかし、汎用コンピュータとして活用できる……と認識できたときには、PS3は一瞬にして違ったものに見えてくることだろう。6〜7万円という価格も、むしろ安いと思えるようになるかもしれない。
たとえばだが、PS3に表計算ソフトやワープロソフトが同梱されたオフィススイートソフトや、HDV編集ソフトやフォトレタッチソフトのような、実用ソフトがリリースされれば、10万円以上するハイエンドスペックのデスクトップパソコンよりは確実に安く思えてくるだろう。
「何を馬鹿なことを」といわれそうだが、今回の一連の川西氏のコメントを拡大解釈すればその可能性はまったく否定されない。
実際、PS3は実用レベルの1,920x1,080ドットの映像が出せるので、コンピュータとしての使い勝手も平均的なデスクトップPCの同等以上だ。表計算やワープロといった実用ソフトは完全実用レベルで使えるはずだ。もっとも、テレビをディスプレイのように間近で見る習慣がないのでその部分は何かしらの工夫が必要かもしれないが。
今回のPS3のライバルは、Xbox 360でもWiiでもなく、Windows PCということであれば、6万円超の価格もまったく違和感がない。
とはいえ、SCEとしては、「PS3はゲーム機を超えた汎用コンピュータである」というこのメッセージをどうやって伝えるか……ここが最大の課題となりそうな気がする。
一番の早道はマイクロソフトに「Office for PS3」を作ってもらうことだが……、まぁ、それは……「ソニック」や「バーチャファイター」がPS2で動いたあのときよりも実現は難しそうだが……。
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20060511/ps3.htm