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http://www.mainichi-msn.co.jp/entertainment/shougi/news/20051105k0000e040044000c.html
日本将棋連盟がプロ棋士に対し、「許可なくコンピューターと対局することを禁ず」とのお触れを出した。アマチュアの大会で活躍したり、プロ棋士を冷やりとさせたりと、ファンの注目を集める将棋ソフト。果たしてどのくらい強いのか。【中砂公治】
10月23日、「人と電脳の最強対決」が公開の場で実現した。東京都内で開かれた国際将棋フォーラム(将棋連盟主催)。ソフト大会で全勝優勝した「YSS」(商品名・AI将棋)の挑戦を、森内俊之名人が迎え撃ったのだ。多くのファンが見守る中、「角落ち」のハンディを背負った森内名人がコンピューターをねじ伏せた。森内名人の終局後の感想は「序盤は弱いのに中盤から強くなる。こんな将棋を指す人間はいないと思った」。
チェスでは、97年に当時の世界チャンピオンが、IBMが開発したチェス専用コンピューターに敗れている(1勝2敗3引き分け)。だが、取った相手の駒をどこにでも打てる将棋は、チェスよりも選択肢がはるかに多い。人工知能とゲーム情報学が専門の松原仁・公立はこだて未来大学教授は「初手から終局までの可能な指し手は、チェスが10の120乗、将棋が10の220乗」とはじき出している。
それでも、コンピューター将棋は急速な進歩を遂げ、玉の詰みを見つける能力ではプロを上回るようになった。昨年のソフト同士の大会で優勝した「AI将棋」には、将棋連盟からアマ四段の免状が授与された。
その力をはっきり示したのは今年6月。アマチュア竜王戦の全国大会に特別参加したソフト「激指(げきさし)」が、予選と1回戦で計3連勝。2回戦で敗れたものの、ベスト16に入る大健闘だった。
さらに7月、月刊誌「将棋世界」の企画で、激指が現在竜王のタイトルを争っている2人と対戦(プロの角落ち)。渡辺明竜王には敗れたが、木村一基(かずき)七段を破った。
激指を発売する毎日コミュニケーションズは「売り上げが急上昇。でも、これ以上強くなると、敬遠されないか心配です」。
9月には石川県小松市で、プロ六段でもある飯田弘之・北陸先端科学技術大学院大学教授らが作成したソフトと、新鋭の橋本崇載(たかのり)五段が平手(ハンディなし)で対決。橋本五段は勝ったものの、「仮に早指しのルールで10局戦うとして、必ず全勝できるかと言われれば、自信はありません」と打ち明けた。
将棋連盟が「連盟に断りなく、公の場でコンピューターとの対局を禁じる」とする通達(10月6日付)をプロ棋士と女流棋士に出した背景には、プロが平手で負けた場合、イメージダウンになりかねないとの警戒感がある。
連盟専務理事の西村一義九段は「きちんとした形でプロとソフトを対決させる企画の話があれば、慎重に対応したい」と言う。「許可制」にすることで、対局への注目度を高めようとの思惑もうかがえる。冒頭の森内名人の対局も連盟主催の形で実現した。
コンピューター将棋について、松原教授は「これまでの進歩のペースから考えれば、10年後には名人と互角に渡り合えるのでは」と予想。森内名人は「そんな時代が来れば、人間が将棋の新たな面を学べるかもしれない。コンピューター将棋の進歩は私たちにとっても、プラスになると思う」と語った。
毎日新聞 2005年11月5日 11時37分 (最終更新時間 11月5日 12時02分)