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IT革命時代における防衛力整備への一考察  【小 林 一 雅】 DRC
http://www.asyura2.com/0505/it08/msg/173.html
投稿者 愚民党 日時 2005 年 6 月 16 日 01:54:31: ogcGl0q1DMbpk
 

IT革命時代における防衛力整備への一考察

 http://www.drc-jpn.org/AR-6J/kobayashikazu-j02.htm                     

    (財)DRC研究委員

                                  小 林 一 雅

1.IT革命とわが国の安全保障

(1)IT革命の概観

 a. IT革命とその特質

 IT革命とは、「コンピューター及び通信を活用した情報処理技術の急速な発展を背景として人間の行う諸活動に革命的な変化をもたらしつつあること」といえるであろう。この傾向が、「革命」と呼べるか?については歴史が評価することであろうが、国家安全保障における軍事力の役割に多大なインパクトを与えることは必至であり、しかもこの傾向は今後も当分継続するものと見るべきである。そしてその特質として、@同時に、非常に多くの人が、大容量の情報を共有できること、AIT革命は国家の管理に先行し国際社会に急速に浸透しつつあること、B国民生活に関係の深い分野から進行していくこと、C努力しないものは置き去りにしてしまうこと、等が挙げられる。

 b.IT革命の進展とわが国の現状

IT革命は依然として拡大しつつある。米国が先進しており主導であることは不変であるが、欧州及びアジアの一部、特に韓国及び中国において急速に進展しつつあり、アジア及びアフリカ諸国にも徐々に浸透しつつある。この拡大は、経済及びメディアの分野が先行しているが、軍事分野は相対的に後発であると言えよう。

   わが国は、技術面及び浸透の度合いの面において米国に比較し約3-5年以上の遅れており、これは、国家施策としてのソフト、ハード両面におけるインフラ整備の遅れに起因していると言えよう。さらに、官僚及び自衛官のIT革命に対する認識が甘く意識改革が強く求められるところである。当面、現在、鋭意推進されつつある「電子政府事業」が我が国の今後のIT革命の進捗度を占う試金石となるであろう。

(2)IT革命とわが国の安全保障

a.わが国の安全保障政策への影響

IT革命は、わが国の安全保障政策に多大な影響を及ぼしつつある。特に防衛庁・自衛隊は、以下の事項を真剣に受けとめ、諸施策を策定し、直ちに実行することが重要である。

@ IT革命に起因するテロやサイバー攻撃等の新たな脅威には、従来型の軍事力のみでの対応は極めて困難であり、部隊の規模、編成・装備、及び運用方法に見直しの必要がある。

A IT革命の進展に起因する作戦速度の向上及び予測し得ない多様な事態への対応には、国家としてのより迅速な意思決定が必要となり、関係省庁及び米軍との緊密な連携の下、適切な軍事力によるより的確な対処を支援し得るC4ISRの整備が必要である。

B さらに、非対称脅威に対しては、防衛庁・自衛隊のみでの対処には限界があり、他省庁、地方自治体及び民間との共同連携が不可欠であり、これらの適切な活動を可能にするために必要な強靭な国内IT基盤の整備が急がれる。

C 新たな脅威に適切に対応するには日米安全保障体制の堅持が重要であり、各種シス テム間のみならず、日米間の諸活動におけるインターオペラビリティの確保が必要である。

D IT革命時代の安全保障政策を的確に実施するためには、国際協調を強力に推進するとともに、国際世論、及び国内世論の動向を注視し、時として世論の醸成のための積極的な活動が求められる。

E IT革命時代における安全保障政策の一つとして忘れてはならないのが、国民生活基盤の安定・向上のための努力である。この際、IT革命が進展した場合には自国民の生活基盤の向上には、世界人類の生活水準向上への寄与が不可欠であることを忘れてはならない。

 b.我が国の防衛政策への影響

 わが国の防衛政策の策定にあたっては、特に次の事項を重視すべきである。 

@ 事態の複雑化及び規模の拡大、並びに状況の推移の高速化を意識した部隊の任務、組織、手順の確立

A 非対称脅威等に対処するには関係省庁、地方自治体等との緊密な連携が不可欠であることから防衛庁・自衛隊の役割分担を法的に明示すべきこと

B 民生技術の有機的活用と自衛官でなくても実施可能な業務や特定の分野における豊富な経験と知識を要する分野におけるアウトソーシング

C 海洋、宇宙利用の促進と防衛体制の確立

   防衛政策の策定にあたりさらに今後、注目を要する事項として、@中国におけるIT革命の進展度合い、A米軍事力の変化、B欧州におけるIT革命の進展、及びC軍事以外の分野におけるIT革命の進行度合い、が挙げられる。

2.ITの発展とRMA(Revolution in Military Affairs)

IT革命は軍事のみならず経済活動、社会活動、メディア等の人類の社会生活全般に波及している。近年、米国を中心に進展しつつあるRMAは、IT革命を背景に、近年における脅威の変化、各種技術の進歩、及び社会の変化等の要素が複雑に絡み合って策定された軍の見なおしプロジェクトであると理解すべきである。すなわち、近年におけるITの急激な発展はRMAの一要因であり、またIT革命とRMAは切り口の異なる概念であることから、IT革命のみがRMAの原因であるとの理解は誤りである。従って、RMAの検討にあたっては、ITに係わる部分のみの検討に終わることなく、広く社会・経済活動等の環境の変化も視野に入れることが必要である。

(1)RMAとは

FY99米国防報告によれば、RMAは「技術の大きな進歩が、組織及び教義上の変革とあいまって、軍事能力の劇的な進歩を生み出す状況」であり、背景に社会・経済活動面における革命的な変化、国防予算の限界と人名の尊重等の要因があると認識すべきである。

  (2)RMAが進行した軍隊の特質

     RMAが進行すると、あらゆる事態において必要とする指揮・統制・情報機能が、「時と所」を選ぶことなく迅速かつ柔軟にシステム化され、指揮官から末端の兵一人に至るまで情報の共有が可能となり、必要とする多くの情報の入手が同時に可能となる。いわゆるC4ISRの近代化の完整である。このような状況に進化した軍隊においては、任務目的により、広域に展開した陸・海・空部隊等から作戦目的にとって、必要とする要素のみを抽出し、これらを組織化し、要時・要域に戦力を集中し、柔軟に統合運用することが可能となる。さらに、情報優位の常続的な確保が可能となり、長距離、迅速、精緻な攻撃が可能となり、戦場、空域のコントロールが容易になる。このような、戦力の運用要領の画期的な変化に伴い、@ミサイル防衛等による兵員、装備に対する多層防護、A情報、兵站、輸送技術の融合による迅速、柔軟、精確な後方支援、B被損率の大幅な低減の追及、C取得・調達の迅速化・効率化、等が厳しく追及される反面、所要ウエポンの量的削減が可能となり、人的戦力の安全性や効率性が飛躍的に向上する効果が期待できることも肝に銘じておかなければならない。

(3)将来戦の様相

a.戦闘の形態が大きく変化する。

   RMAが進行した軍における戦闘は、軍隊同士の消耗戦から、宇宙及び海底に存在する情報通信、偵察等のインフラ等の優位性の獲得戦、国家及び軍事中枢へのショック戦、高度に情報化された国家のシステムの中枢情報ネットワークを中心とした戦いへと変化するであろう。すなわち、ハイテクを駆使した情報戦が重要な役割を演じることとなろう。また、精緻な攻撃が可能となることから、戦域の移動・拡大と作戦スピードは飛躍的に向上するであろう。さらに、メディアの発達により、常に国際世論、国内世論を意識した戦闘を強いられることとなり、人命をより尊重する必要から省人化、無人化が進捗することになろう。

b. 攻撃目標が敵の軍事力中心からシフトする。

  開戦当初、敵の衛星を含む各種C4ISRシステム、防空システム等を破壊無力化し情報支配の確立を追求することとなろう。すなわち、国家の重要インフラ・軍事中枢に対するサイバー攻撃、あるいは精密誘導兵器等を駆使した精密攻撃、コンピュ−タ・ウイルス等による隠密・先制攻撃が重要視されることとなろう。また、宇宙を含む民間の情報通信・放送等に係わるインフラも重要な攻撃目標の一つとなろう。

c.攻撃手段が多様化する。

   従来の航空機やミサイル等の兵器による攻撃手段は維持されるものの、これらに加えて、サイバー攻撃、CB兵器、レザー兵器等による攻撃が行われることとなろう。

d.防御への努力が重要となる。

   攻撃方法の多様化に伴い、偵察衛星を含む各種C4ISRシステムを駆使し、常続的に警戒態勢を維持強化することが不可欠となり、このため、C4ISRシステム及び重要インフラの抗堪性の確保や、軍事中枢に対する敵の精密攻撃に対する強靭な対処能力の確保が強く求められることとなろう。

(4)RMAの限界

a.RMAの方向性に対する議論

IT革命がさらに進行し、社会、経済活動の変革が鮮明になるのに伴い、RMAは将来どのような形で進化するのであろうか。この点に関し、いくつかの考え方が見えてくる。その第一は、IT技術至上主義といえるものである。航空機や艦艇のような伝統的プラットフォームを重視せず、電子技術、センサー、コンピューターの発展を重視し、システムのネットワーク化を推進し、それらを中心とした軍の装備を重視する考え方である。米軍におけるネットワークセントリック・ワーフェア―の考え方は、これにあたると考えられる。その第二は、エアーパワー重視主義といわれるものである。すなわち、ステルス戦闘機・爆撃機、ミサイル防衛システム等のエアーパワーこそがRMAの主役であるとする考え方である。これは、湾岸戦争型RMA とも言え、大規模な通常兵器の活用による戦勝を追求し、プラットフォームの革新を重視すべきとする考え方である。第三は、RMAは経済、社会の情報化の付随現象として進化するとの考え方である。IT革命による影響を反映する形で軍事分野においても革命的現象が生起するとし、ハイテク情報戦を重視すべきであるとしている。すなわち、ハイテク情報戦のみが必要で、攻撃兵器等の必要性は相対的に低下するというものである。

b.RMA実現への疑問

 確かにIT革命の進行に伴いRMAの進行も必然の結果であると見るべきであろうが、RMAが技術を基礎とする以上、革命的な変化は望み得ず、継続的な発展が起こるのみと見るのが妥当ではないだろうか。近い将来、大規模紛争が生起する可能性は小さく、むしろテロ攻撃等の非対称脅威に係わる紛争の生起可能性が大と見るべきであることから、このような分野におけるRMAは着実に進化すると言えるものの、軍事力全般にわたり革命的な変化が起こると見るのは早計に過ぎるのではないか。なぜなら、情報化の進展は、情報過多を招き、人心を混乱させ、また一旦、情報システムが無力化された場合の影響が甚大であることや、軍事力の重要な役割である領域の占領や大量破壊兵器等の拡散防止及び紛争抑止のための有効な手段であるプレゼンスには核兵器を含む在来型の兵器システムの存在が依然、有効であるからである。

3.米国以外の諸外国の取り組み

(1)中国

98年国防白書において、「ハイテク兵器の発展を先導とする軍事分野の変革は今、世界的範囲において起こりつつある。この変革は急速に発展している」とRMAに対する認識を示し、「世界の軍事分野における大きな変革に適応して、現代技術、特にハイテク条件下の防衛作戦準備を立派に整える。」ことを明示。具体的には、兵力50万人削減する代わりに装備と訓練の充実を図る長期的な近代化計画に着手している。即ち、作戦の条件を「一般条件下」から「ハイテク条件下」へ、編成や訓練を「数量・規模重視型」から「質・機能重視型」へと転換したとのことである。

(2)ロシア

湾岸戦争を踏まえて、戦場の縦深度による戦略・戦術・作戦の区分を廃止し、先制攻撃の優越、陸上兵力の役割低下を認識し、軍の近代化の方向性として、@志願兵からなる少数精鋭の軍、A地上軍の緊急展開能力、Bハイテク空軍力への投資、C防空ネットワークの見直し、DC3Iシステムの自動化と兵器の誘導能力の向上等、を重視している。しかしながら、軍種統合への情報技術活用の試みや、国家安全保障の観点に立ったハイテク情報戦対策は進められてはいるが、経済的な問題もあり、情報RMAに対する公式的な構想は未定のようである。

(3)オーストラリア

97年の「戦略方針」において、「その多くが民間技術に依存する、いわゆるRMAは世界中で戦争の本質を変革しつつある」と認識し、その戦略環境から、相対的に少ない兵力による最大の効果を追求し、知識優位、海洋侵攻脅威の撃破、攻撃、地上兵力の整備を優先し、情報関連要素を最優先の課題として意識している。RMA関連施策として、統合化されたC3I/IO能力の開発と強化を支援する「タカリ計画」(1996-2010)を策定し、これを鋭意推進している。

(4)韓国

98国防白書は、湾岸戦争の教訓から、科学技術の発展と将来戦様相を考慮した場合、「現在の北朝鮮の脅威と兵器体系に対抗することのみに焦点を当てた防衛力改善は早期に陳腐化し、将来の不確実な脅威に対抗するには不十分」とし、「現存する北朝鮮の脅威に対抗しつつも、将来のハイテク戦争において生存しうる先端技術主体の装備及び兵器体系」への転換を強調している。96年、今後20−30年間の安全保障環境の不確実性に注目し、国防部に「軍事革新企画団(RMA)」を新設し、その推進に努めているようである。

(5)英国

注意深く米国での進捗状況を注視しており、98年の「戦略見直し(SDR)」においてRMAに言及し、「指揮・通信・統制」だけでなく「情報・監視・偵察」の能力改善を強調し、特に偵察用無人機を重視しているようである。

(6)フランス

一連の軍事システム改革の中で、RMAの概念を採用している。統合運用による多様な事態への対応を容易にするために軍隊のモジュール化を推進中である。5−6万人規模の部隊を世界のどこへでも派遣できる緊急行動部隊を創設しており、ディジタル陸軍を目指し、衛星や無人機の活用による情報、監視、偵察能力の改善やスタンドオフ精密打撃システムの開発を重視しているようである。

(7)ドイツ

RMAを「情報分野における技術革新を背景とした軍の近代化」と認識している。米国との共同作戦行動に制約を受けないよう通信・指揮・情報・偵察機能の充実を重視し、将来戦においては情報の優位性が決定的な要素であると理解している。統合された相互運用性のある指揮・統制・情報システムを構築するため、97年に「戦場2000」と呼ばれる実験組織を編成し、2002年以降のシステム調達の準備に着手したようである。

4.RMAとわが国の安全保障

(1)RMAに対する認識と将来戦の様相

a.現状認識

   防衛庁においては、RMAに対する関心は高く、各種の調査研究等の成果を反映した「情報RMAについて」を平成12年9月に防衛政策課研究室が発表する等、検討はされている。しかしながら、これらは机上のものであり、防衛庁としての認識の統一、及び具体的な施策は未だ不充分であると言えよう。たしかに、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画(平成8年度―12年度)、等にはRMA的な要素が若干見られるものの、自衛隊の編成・装備のダイナミックな変革を求めているものではなく、従来の路線に予算削減の要素が加味された程度ものに止まっている。

b.RMA生起の可能性

 大規模災害や非対称脅威に対する自衛隊への期待度が高まる中で、IT革命の進展に伴いRMAは部分的、段階的に進展すると見るべきであろう。わが国においてはIT革命の進展による社会・経済活動の変化がRMA促進の背景となり、その進行度合いは、防衛予算及び人的資源の枯渇の深刻度合いとIT技術の進展度が鍵を握るといえる。情報技術の発展に伴い、軍事力のあらゆる分野でのRMAの努力は継続すると見るべきであるが、軍事力の全ての分野でのRMAが飛躍的に進展する可能性は低いとみるべきであろう。2(4)項で述べたRMAの方向性については、三つの考え方が融合した複合型RMA が進展するとの見方が妥当であろう。実戦等を通じてのRMAの成果確認が困難なため、各国は米国の状況を注視し、当該国の国内事情に照らして、RMAを進展させるものと思われる。果たして、技術進歩を前提に、実戦におけるRMA化された戦力の実証なしにドクトリン、組織、装備体系、手順等をどこまで変えうるか、についても疑問である。RMAの成否は人間の意識改革いかんによるものと思われるが、紛争等の未然防止のためのプレゼンスとしての効果にやや疑問があることから、極端なRMAの進展は期待できないのではないだろうか。

しかしながら、現実の自衛隊を慎重に点検して驚かされるのは、あまりにもRMAが進行していない実態がそこにあることである。自衛隊の任務の多様化が求められる今日、現在の編成・装備及びその運用法はこのままで良いのであろうか。冷戦終結後の安全保障環境の大きな変化に伴い、IT革命の進行に応じて、RMAを推進しなければならないのではないだろうか。防衛庁・自衛隊としては、外的要因を待つことなく、積極的にRMAを促進させることが、そして、日本型RMAの早期の実現を期することによって国民の期待に応えることが必要であるように思える。このような強い意志があれば、RMA生起の可能性は100%であると思うし、また100%になるよう努力を惜しんではならない。

(2) わが国としてのRMAの追求

a.体制の見直しの前提

@ わが国の採るべき防衛体制の検討にあたっては、東西冷戦時に主流であったWorstケースを対象として検討することから、More Likelyなシナリオへの対応を重視した考え方を指向すべきある。この際、わが国が置かれている地理的な環境とその意味合いが変化している現実を直視し、過去のしがらみを思いきって立ち切る勇気が必要である。

A 確保すべき防衛力の具体的な検討にあたっては、憲法の精神、国民の共感、少子・高齢化社会の現実、地理的環境等のわが国固有の実情に目を向け、米軍のRMAとの協調を図りつつ、わが国独自のRMAを追及することが必要である。

B 日米安全保障体制は将来とも堅持するとの基本的な姿勢が重要である。

b.RMAの追求にあたり重視すべき事項

@ 我が国の国益にそって日米安保体制の実効性を高める努力が必要である。しかしながら、この際、RMAに関しては米国が先行しているものの、米国への盲従はそれぞれの国益及び国家防衛戦略が異なるため危険が伴うことを認識しておかなければならない。

A 日米共同作戦を効果的に行うためのインターオペラビリティの確保が極めて重要である。この際、従来のプラットフォーム相互間、各種のシステム相互間のインターオペラビリティに加えて、ネットワークとしてのインターオペラビリティが重要である。現在、防衛庁が整備を進めている庁COEもこのことを考慮しなければならない。

B 多様化する防衛力の役割に対する柔軟な対応が容易な体制を整備すべきであり、非対称脅威に対する対処能力の確保をこれまで以上に重視する必要がある。

C 必要とする最新の軍事技術の研究開発を積極的に推進すべきである。この際、思いきってアウトソーシングを推進するとともに国際協力による研究開発を考慮する必要がある。

D IT革命の進展による社会構造の変化と国民の意識の動向を注視し、真に防衛庁・自衛隊でなければ出来ない機能を洗い出しつつ、他省庁、地方自治体、企業等一体となった効率的な隊務運営が可能な体制を整備すべきである。

E 少子化及びメディアの発展に伴う社会的な損害許容度の低下という現実を注視し、自衛官の人命を従来にも増して尊重し、人命を確実に守る施策が必要である。この意味において、装備品等の取得・選定にあたり検討するライフサイクルコストに運用期間中の人件費を含めることが必要である。

(3) 防衛庁・自衛隊のRMAへの一考察

a.基本認識

@ 従来のわが国の防衛に加えて、PKOに代表されるより安定した安全保障環境の構築への貢献に対し、自衛隊はより積極的に活用される。

A 不審船、ゲリラや特殊部隊の侵入、生物兵器による攻撃、各種災害等への対処にも自衛隊がより積極的に活用される。

B 防衛予算の大幅な伸びは期待できない。また、自衛官の増員も期待できない。

b.日本型RMAのための一考察

わが国を取り巻く戦略環境、国内事情等は、米国のそれと大きく異なる。従って、いかに日米安全保障体制が重要であるといっても、米軍と同様の考え方でRMAを推進するのは如何なものか。勿論、米軍に学ぶこと多く、多くの分野で同様の考え方が適用できるのも事実である。以下、米軍の考えを参考にしつつ、わが国のRMAはいかにあるべきかを念頭に、実現のための具体的事項について考察する。 

(a)警戒監視のための態勢

テロ、不審船、ゲリラ等から災害に至るまで極めて広範囲な事態にかかわる兆候を探知し分析し報告通報できる態勢を常続的に確保しなければならない。このためには、自衛隊内はもとより、米軍、関係省庁、在外公館、地方自治体、等との統合的な情報ネットワークを確立するとともに、迅速な意思決定による状況の変化への適切な対応ができるような体制整備が急務である。この際、本格的な軍事侵攻を対象とした情報体制を大幅に削減しても新たな脅威に対応できる態勢を充実させるべきではないだろうか。

(b)防衛力の運用要領

@ 本土防衛作戦については、冷戦構造時代からの限定的小規模な着上陸侵攻への対処から、特定の脅威に対する戦力の集中発揮を重視した体制整備へと転換すべきではないだろうか。特に南方のシーレーンや島嶼防衛等に不可欠な戦力の統合運用体制の充実が期待される。

A わが国周辺事態に対しては、米軍の統合戦力との共同作戦を遂行しうる体制の確保及び後方支援体制の充実が重要となろう。

B ミサイル防衛に対しては、米軍の体制整備との協調が重要であり、いわゆるパワーシェアリングをいかにするかが焦点となろう。

C テロや災害等の危機管理については、関係省庁等との役割分担を明確に行うとともに、迅速、的確な対処が可能な体制を確保する必要があろう。この際、自衛隊が全て対応すべきとの考えは排除すべきであり、あくまでも補完的な役割及び特定分野の担当といった考え方を採るべきであろう。

(c)人的戦力の確保

@ 陸上戦力は少数精鋭のハイテク師団を中心とした体制への切り替えが必要であろう。これに伴い、制服自衛官の三自衛隊への配分を見なおす必要がある。

A 現在、自衛官が担当している業務を見直し、真に制服でなければならない部門に限定することが必要ではないか。すなわち、生命の危険度の高い部門が制服自衛官の部署である。このためには自衛官の処遇改善や文官の軍事専門分野についての能力向上が不可欠となろう。

B 司令部活動で必要とされる分析・見積もりにはシミュレーションを活用し、豊かな経験と知識を要する機能についてはOBを中心とした部外者を積極的に活用すべきであろう。

(e)装備品等の取得・調達

  防衛庁においてこの数年間行われてきた調達改革は、契約手続き改革に止まっており、欧米で積極的に進められている取得改革には程遠い。すなわち、「より高品質のものを、より安価に、より迅速に、そしてより効率的に」を追求すべきである。

終わりに

 防衛庁・自衛隊におけるRMAはこれからである。過去のしがらみにとらわれない斬新な結論が導かれることを期待する。本小論は、筆者の不勉強のゆえ、詰めの甘いところもあると思われるが、何らかの参考になれば幸甚である。

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