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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050524-00000021-zdn_n-sci
Blogを始めるまでは、1人きりで戦ってきた。Blogは、仲間と勇気と力をくれた。
「バカっぽいとかだらしないとか、ギャルに対する偏ったイメージに革命を起こしたい」――sifowの名で歌手・モデル活動を行うガングロギャル社長・藤田志穂さん(20)がつづるBlog「ギャル革命」。ギャル文字の入り混じった文章には、出会った人、学んだと、そして夢――“ギャル革命”への強い思いがあふれている。素直で真しな姿勢とその行動力がネットユーザーを引き付け、「人気Blogランキング」の起業・独立カテゴリで1位をとったことも。ネットで限定販売したデビューCDは、受注開始後8分で500枚売れた。
「自分で起業した会社で成功して、ギャルでもデッカイことができると証明したい」――志穂さんは語る。「汚い、うるさい、適当、だらしない――確かにそんなギャルがいることは否定しません。でもそんな“悪い”ギャルばかりじゃない。ギャルでも頑張れば報われるんだって証明して、みんなの背中押しできる存在になりたい」
志穂さんがギャルへの偏見と戦い始めたのは5年前。高校1年生のころだった。
●「志穂ちゃんに仕事、ないって」
高校1年生のころ、知り合いの紹介で運送会社のバイトを始めたが、初日から仕事が全くもらえなかった。「ガングロ、ピアス、茶髪のギャルに、できる仕事なんかない」――運送会社のスタッフはそう決め付けた。「志穂ちゃんに仕事ある人は?」――当時の所長はわざわざ、スタッフ全員にこう聞いて回った後、勝ち誇ったように言った。「仕事、ないって」
「むかつくけど、まあ、いいやと思って」。志穂さんは黙って、自分ができそうなことを探した。散らばっていた伝票を重ねたり、封筒にハンコを押したり――「小さい仕事をずっとやってたら、だんだんみんな、教えてくれるようになって。仲良くなれました」。バイトは3年半続き、その縁はギャル革命にも生きている。志穂さんのデビューCDを今、格安で発送してくれているのは、この運送会社だ。
高校でも、ギャルのイメージを変えようと頑張った。ギャルメイクで、毎日遅れず学校に行った。3年間、1日も休まなかった。それを教師が認めてくれた。卒業式で答辞を任されたのだ。「頭よくないし、ギャルだし、なんで私が?」と聞いた志穂さんに、教師は言った。「志穂みたいな子でも、皆勤賞できちんと卒業できるってこと、みんなに知ってほしいから」
大学には行かなかった。推薦で入れる大学もあった。親も大学に行ってほしいと願っていた。「でも大学入って卒業したら22歳じゃん。その間に何ができるの? みたいな」。高校卒業後は、運送会社のバイト、3年生から始めたモデルの仕事、ティッシュ配りの日雇いバイト――色々なバイトをこなしながら、何をしようか考えた。
“ひとりギャル革命”は、続いていた。「どうしても」と頼まれて、飲食店でバイトした時。志穂さんのネイルアートが飲食店にふさわしくないと、店長に言われた。爪のことは知っていながら雇ったのに、後になって文句を言い始めた。
「確かに、爪に嫌なイメージがある人もいるとは思う」と志穂さんは認める。「でも『爪カワイイね』と褒めてくれたり『青い爪の子でしょ』って覚えてくれるお客さんもいました」。人見知りしないフレンドリーな接客で人気者になった志穂さん。お客さんが、店長の前で爪をほめてくれることもあった。やがて、店長も爪を認めてくれるようになった。
ここまでは、1人で、自分のまわりだけで戦い、ギャルへの意識を変えさせてきた。でも、世間のギャルのイメージは、なかなか変わらない。
象徴的な事件があった。
●「ふざけんなクソアマっ!」
ある日の電車の中。日サロで焼いた肌にミニスカート、ギャルメイクという格好で友達とケータイメールを見ていたら、座っていたおじさんから「ふざけんな!クソアマっ!」といきなり怒鳴られた。「ケータイで写メ見てただけなのに」。しかし逆らうと面倒と思い、ケータイをしまっておとなしくしていた。
次の駅。まじめそうな女子高生が乗り込んできて、おじさんの前に立った。おもむろにケータイを取り出し、通話を始めた。「今度はなんて怒られるんだろうってドキドキした」。でもおじさんは、ガングロでもミニスカートでもギャルメイクでもない彼女には、何も言わなかった。見た目だけで判断された」――悔しかった。
似たようなことは何度もあった。自転車に乗っていたら「その自転車、盗んだんだろ」と警察に止められたり、友人のモデルが、事務所のスタッフに少し意見したら「お前らバカギャルは、言うことを聞いていればいいんだよ!」と言われたり……。
「ギャルだからってバカにすんなコラっ!。何かデッカイことをやって、ギャルもやればできるんだって証明してやる」――昨年10月。“ギャル革命”を思い立った。世の中の意識を、変えてやりたかった。
デッカイ仕事をしようにも、ギャルは就職すらままならない。「ギャルって、ちゃんと働けなさそうと思われる。見た目だけで判断されて面接落ちることもあるし」。それなら、自分が働ける場所を自分で作っちゃった方が早いんじゃないか――そう考えた。「ギャルが会社作って、それで夢を叶えて社会に認められたらスゴくねぇ? みたいな」。歌手になるのが夢の志穂さん。自分の会社でCDを出そうと思い立った。
その日から、走り出した。起業のハウツー本を読んだり、起業家社長を紹介してもらって話を聞いたり――会社設立の準備に駆け回った。バイトで貯めた150万円と、親や支援者から借りたお金、合計300万円を資本金に、4月3日、「シホ有限会社G-Revo」を設立。起業を決めてから半年の早業だった。
「ギャル革命」をできるだけたくさんの人に広めたい――Blogを始めたのはそんな思いからだった。ちょうどネットが“流行ってる”と感じていたころ。「電車男とかもインターネットじゃないですか。ヤッベー、すげぇなインターネットって。私も書いたら流行るんじゃねぇ? って」
実は以前、Webサイトを作ろうとして、挫折したことがあった。高校時代、Gacktが持っていたPowerBookにあこがれ、バイト代を貯めてPowerBookを買った。友人のサイトを見て、サイト作りを試してみたが「ぜんぜん、ワケわからず」ギブアップした。「ホームページだと色々更新しなきゃいけないのが難しくて。でもBlogってただの日記みたいな感じ? これだったら私でもできそう」
文章を書くのは苦手。記事1つ書くのに、1時間はかかる。「言葉、ぜんぜん知らないし」。キーボードを叩くのも遅いから、余計に時間を食う。長い爪のせいで、違うキー叩いてしまったり、キーの隙間に爪がハマってしまうことも。
だから記事の下書きはケータイでする。指の腹で打てるから、ミスタイプがないという。
試行錯誤した文章を、やっとの思いでBlogにアップ。「ギャルのイメージ改革、したいんです」「今日はこんな人に会って、こんなことを教えてもらった。すっごく勉強になった」「こんなことに感動した、泣いてしまった」――飾らない言葉と行動力、走り続け、転んでもすぐに起き上がる若さがたくさんの人の心を打ち、コメントに形を変えて志穂さんを励ます。「すごいね」「頑張って」「応援してます」「元気をもらいました」――志穂さんはその1つ1つに、時間をかけてレスを返す。「元気をもらったっていうコメントに、私自身が一番元気をもらってます」
他のBlogへのリンクの張り方や、文字の大きさの変え方、Blogランキングに参加の仕方も、コメントを通じて知った。プレーンテキストだけだった志穂さんのBlogは、次第に太字や大文字、色つき文字、リンクが入るようになる。ランキングは常に上位。ギャル革命Blogは、志穂さんと一緒に進化し、成長を続ける。
●渋谷でギャルに声をかけまくり、1000人のメアドをゲット
Blogを読まないギャル達にもギャル革命を伝えたい――そう考えた志穂さんは、メルマガ発行を思い立った。
しかしどうすればメルマガを発行できるか分からない。「とりあえずメアドを集めればいいんじゃね? ってコトになって」、応援してくれるギャル集団「黒団」と一緒に、1月ごろから渋谷の街でメアド収集を始めた。
「ねぇねぇ、私、会社起こそうと思って。メアド教えて!」――そんな調子で、ギャルに声をかけまくる。「多分、みんな訳も分からず教えてくれた」――勇気を出して声をかけると、8割がメアドを教えてくれた。教えてくれるだけでなく、メアド集めを手伝いたいと言ってくれるギャルもいた。
2カ月あまりで1000のアドレスが集まった。Blog経由で知ったり、いろんな場所で配ったチラシを見て興味を持った人が登録してくれ、会員数は獲得目標の1万人に近づきつつあるという。
●初めてのCD、8分で500枚売れる
歌手になるという夢をかなえるべく、4月、自分の会社でCDを作った。「プレス代が安くなるから」と1000枚も作ってしまったCD。売れるかどうか不安だった。「手売りで無理やりでも売れば、何とか1000枚売り切れるかなって思ってました」
発売日の4月17日朝。恐る恐る注文メールを受信した。1通、2通……10通……100通……400通……受付開始からわずか8分で、500枚も売れてしまった。1人で10枚買ってくれる人もいた。信じられない。しばらく動けなかった。注文は全国各地から来た。3日で1000枚、完売した。「すごい」――Blogの力、ネットの力に驚いた。
もっと驚いたのは、ギャル革命の紹介記事が音楽サイト「BARKS」に掲載され、Yahoo!JAPANのトピックスに取り上げられた4月25日。Blogのアクセスがいきなり増え、それまで6〜7位を前後していたBlogランキングのトップに躍り出た。同時に応援や問い合わせのメールが殺到し、サーバがパンクした。
「ヤフーは検索しか利用したことがなかったから、トピックスに載ってると聞いても今いちピンとこなかった。反響にびっくりした」
たくさんの人に見てもらえるのは嬉しい反面、怖くなることもあるという。「見る人が増えるほど、ちゃんとしなきゃなって思う。ネットって一歩間違えたらすぐ広まっちゃうし」
4月27日のBlogに、志穂さんはこう書いている。(以下原文ママ)
「このブログが始まりでした。このブログをきっかけに色んな人にァドバイスもらったり、悩んだ時には励まされたり。実際に会ったりもして、自分の構想のギャル革命を形にしていくことができました」
「最初は正直不安でした。ギャル革命で世の中のギャルの偏見のイメージを変えてゃるぅ〜!起業して自分の夢を自分の会社で叶えてゃるぅ〜!って。でもそれって世の中の人、ブログの人に受け入れてもらぇるのかな?? なに言ってんだこの小娘はって笑ゎれるんじゃないかな?? って」
「だけど、ブログを見てくれてる人達はぁたしが思ってた不安を自信に変ぇてくれた。勇気もいっぱいもらった」
「この場所で学んだ大事なことがぁります。『感謝の気持ちを忘れないこと』『素直になって向き合うこと』『夢を語って語りまくること』『人と人との繋がりの大切さ』『挑戦することを楽しむこと』『応援してくれる人達の言葉』一つ一つ学ぶことができました!本当に本当にぁりがとうござぃます(;_;)」
●「ネットなら、ギャルもオジサンも見てくれる」
「Blogがあったからヤフーにも取り上げられたし、いろんな人と出会えた。今思うと、Blogがすべてだった」
Blogを見た人が支援を名乗り出てくれたり、仕事を依頼してくれることも少なくない。「イベントに参加しませんか? とか、ギャル服のECサイトのカバーガールにやってもらえませんか? とか」
ネットで志穂さんのことを知った海外在住のギャルから、「黒団に入りたい」とメールをもらったこともある。「ギャル革命、海外にまで広まっちゃったよ、ヤベェ! みたいな」――嬉しそうに話す。
志穂さんは、ギャル革命の記事を雑誌にも連載中だ(ティーン誌「JELLY」、4月創刊、ぶんか社)。雑誌とネットでは、読者層が全く異なるという。
「雑誌は若い子向けで、19〜22歳くらいか、それ以下がターゲット。読者は『一緒にギャル革命やりたい』とか『応援してます』って言ってくれる。ネットは間口が広くて、ギャルの子もオジサンも、興味持ったら見に来てくれる」
「私の活動を見て、ギャルもおじさんもみんな頑張ってくれたらそれはもう、一種の社会現象。『ギャル革命』、流行語大賞も狙ってますからっ」
今後は、ネットでの活動の幅を広げ、ギャル革命をさらに広めていきたいという。例えば、ECサイトのカバーガールを引き受け、隅っこにリンクを張ってもらうとか、Blogをもっと多くの人に読んでもらって、リンクやトラックバックで広めてもらうとか――。
愛機PowerBookも、もっと使いこなしたいという。ここ半年で、キーボード操作はちょっぴりうまくなった。「黒団のギャルとかは、右手の指1本で打ってるけど、私は、ちょっとなら両手を使えるようになった。『ま』とか『や』とか、ピピって一気に打てる(笑)」
「せっかくMacなんだから、Macなりな使い方をしたい。デザインやグラフィックに強いって聞いたから、黒団のTシャツをデザインするとか」
今勉強しているのは、PowerPointの使い方。営業先でギャル革命を説明する資料を、1人で作れるようになりたいという。「ある営業先で、『ギャル革命を紙に落として』って言われて意味が分からなかった。何? 紙に落としたら落ちるよ、くらいのレベルだった」
PowerPointは、人に聞きながらやっと使えるレベル。自分で作ったプレゼン資料を見せながら、「もっと使いこなしたい」と楽しそうに話す。
●「5年後には学校を」
会社を作り、会社のレーベルでCDを出し、Blogもメルマガも始めた。Flashを駆使したWebサイトも、協力者に作ってもらった。でも、まだまだ助走段階。「あと3年は走り続けますよ。私、チャリラーなんです。チャリに乗ってる状態。止まると倒れちゃう」
当面の目標は事務所を構えること。そのための資金を稼ぐべく、7月にもまたCDを出す予定だ。今度はネット直販だけでなく、お店で販売したいという。
CDで資金を稼ぎ、ギャル革命をプロモーションしながら、会社を成長させていく。その先にあるのは「学校」だ。志穂さんの夢は、みんなが頑張れる学校を作ること。
「ギャル革命で私が頑張れば、『あの子でもできたんだから私でもできるかも』と頑張ってくれる人が増えるかもしれない。そしたら、もっとリアルな感じで背中押しをしたい」
「目標があって頑張ってる人には『もっと頑張ろう』とか、諦めている人には『もうちょっとやってみよう』とか、何も見つからない人には『とりあえず何かやってみよう』って思える学校を作りたい。でも、頑張ってる人には専門の学校がいるし、悩んでいる人には種類が必要。そう考えると超デッケー学校になっちゃうから悩んでて」
「今一番ベストだと思ってるのが専門学校。歌の学校とかネイルの学校とか美容師の学校とか――専門的な内容をちゃんと教えられて、でも隅っこの方に相談所みたいな部屋があって。何をやっていいかわからない人が相談して、学校を紹介できるような」
――あなたにとってITとは?
「とりあえず、スゴイとしか言いようがない」
「ネットはテレビに近いですよね。でもテレビよりも速く調べられるし、テレビよりも詳しい。一方通行じゃなくて、何か聞いたら反応が返ってくるのもすごい。ネットはテレビを越えると思う」
「これからもっと進化してくんだろうな。ネットは今、ケータイからも見れるし。もっと便利になったら、みんなパソコン始めちゃいますよね。そしたらギャルもオタクになりますよ。ヤバイっすよ」
「ギャル=オタク」説
オタクとギャルには共通点があると、志穂さんは言う。「ぶっちゃけギャルもオタク。好きなことしかやらないから。渋谷が好きだから渋谷に行く。クラブ好きだから毎日クラブに通う。ギャルメイクも好きだからやる」――そう言われると、そうかもしれない。周囲の白い目を気にせず、やりたいことをやる。一部の心無い人のイメージが増幅されて偏見を持たれ、犯罪が起きると目の敵にされる――そんな点も、似ている。
オタクとギャル、共通点はあれども、仲良しになれないと志穂さんは言う。
「オタクはギャルのこと嫌いみたい。ネットで見た情報では、オタクもギャルも、お互いに対して同じことを思ってる。臭そうとか汚いとか気持ち悪いとか」。
「私はオタク、好きですよ。返答が予想外で面白いから。ギャルも結構ゲーム好きで、ひきこもってゲームするんで。高校にいたオタクに、攻略法教えてもらったりしました。向こうには嫌われちゃってたりするかもしれないけど、無理やり仲良くしてた(笑)」
■さらに画像の入った記事はこちら
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0505/23/news061.html
http://www.itmedia.co.jp/news/
(ITmediaニュース) - 5月24日11時22分更新
「常に今が一番楽しくいたい。今よりいいものを創造し続けて、いつも『今が一番!』と思えるようにいたい」と志穂さん 写真:ITmedia
http://ca.c.yimg.jp/news/1116901375/img.news.yahoo.co.jp/images/20050524/zdn_n/20050524-00000021-zdn_n-sci-thum-000.jpg