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2006年1月1日(日)「しんぶん赤旗」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-01-01/2006010114_01_2.html
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二〇〇六年の干支(えと)は戌(いぬ)―。柴犬、土佐犬、紀州犬など国の天然記念物に指定されている犬もいます。今回紹介するのは標高一、二〇〇メートルに位置し、レタスの生産量日本一を誇る長野県川上村の川上犬です。(本吉真希)
ニホンオオカミの血を引くといわれる川上犬は、日本犬のなかでも純血を保ち、県の天然記念物に指定されています。全国の犬で唯一、村の名がつく川上犬。一九二一年に初めて指定され、八三年に再度認定されました。
川上犬は絶滅の危機にひんした時代がありました。太平洋戦争の時代です。生活は困窮して食糧難。動物を飼う余裕はなく危険だとして、動物園の動物が軍の命令で殺されました。川上犬も同じように殺されました。
すでに県の天然記念物だった川上犬の保護に努めていた藤原忠彦・現村長の父親は、そのとき八ケ岳に住む友人にオスとメス一頭ずつを託し、保存しました。
村で読み聞かせをする中嶋初女さん(57)は川上犬物語を書き、「その時どきの時代背景で良心を失ってしまう人間の恐ろしさ、時代の脅威を感じた」と感想をもらします。
中島道則さん(75)も戦後から川上犬の保存に携わってきました。
戦後十年がたったころ、犬をよく知る知人から「川上犬と同じ系統の犬がいる」と聞き、親せき二人で飼育を始めました。メス犬のペリ、オス犬のナカ。一歳の子犬でした。
その約一年後、八ケ岳に預けていた犬の子犬たちが川上村に戻ってきました。藤原村長をはじめとする村内有志が「信州川上犬保存会」(会長=藤原村長)を立ち上げ、交配を重ねて純血になるよう努力しました。道則さんは「村長さんらが保存への維持、発展をしてくれたから現在がある」と感慨深げに語ります。
数を増やすにはたいへんな苦労がありました。努力のかいあり、現在は全国に約三百頭。役場に隣接する川上村森の交流館内の犬舎「樹木里(きぎり)荘」では十数頭飼育しています。同館の人気者です。
『かわかみ官報』は「おらちの川上犬」というコーナーを設け、村で飼われている犬の性格など写真とともに紹介。村の二つの小学校でもそれぞれ一頭、六年生が世話をしています。
飼い主に従順で運動能力の高い川上犬。戦前までは険しい岩場でカモシカ猟をし、村の生活を支えました。「いまは糖尿病とか人間と同じ病気が犬にもある。運動不足やえさが原因だ」と道則さん。「自然に野放しできた時代が本当によかった。川上犬を維持するのもたいへんになった」と嘆きます。
窓越しに“クゥーン、クゥーン”という鳴き声―。「たまに切ない鳴き声で鳴くんだよ。“外を歩きてえ”って犬からせがまれる。放し飼いのときはあんなふうに鳴かなかった…」
道則さんは新年の抱負を語ります。「川上犬を繁栄させていくためには放し飼いのできる牧場が必要。それをつくることが夢」
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「樹木里荘」で生まれた川上犬の子犬三頭が、東京・台東区の上野動物園で九日まで公開されています。