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http://list.jca.apc.org/public/aml/2005-December/004752.htmlから転載。
坂井貴司です。
転送・転載歓迎。
今日(12月20日)、素晴らしい車窓を誇る鉄道の廃止が決定しました。
http://nsearch.yahoo.co.jp/bin/query?p=%E9%AB%98%E5%8D%83%E7%A9%82%E9%89%84%E9%81%93&ie=UTF-8&ei=UTF-8
宮崎県北部の延岡市と高千穂町を結ぶ
高千穂鉄道
http://www.t-railway.co.jp/index.htm
です。延岡駅からから日之影駅までは五ヶ瀬川沿いを走り、終点の高千穂駅までは深山幽谷の山中を走る鉄道でした。天の岩戸駅手前では、日本の鉄道では一番高い高千穂鉄橋で深い谷を越えます。
日本の鉄道の中では、ベスト10に入る屈指の車窓を堪能できる路線でした。
私がこの鉄道に乗ったのは中学生だった1988年8月、JR高千穂線のころでした。すでに第3セクター鉄道として再出発が決まっていました。高千穂から乗って延岡まで行きました。
車窓のすばらしさは今でもはっきり覚えています。目のくらむような高さの高千穂鉄橋を渡ると、清流そのものの五ヶ瀬川に沿って、ゆっくりと古いディーゼルカーが走りました。緑の山々、稲の香りがただよう田んぼ、青い川の水、セミの声、ひんやりした冷気が入るトンネル・・・窓をいっぱいにあけると飛び込んでくるそれらの風景は、日本の農村山村そのものの車窓でした。心の底から美しいと思いました。
しかし、この鉄道は人口が少ない過疎地を走るため、旧国鉄のころから赤字経営に悩まされてきました。沿線住民の意思で第3セクター鉄道として再出発してからも乗客は減り続けました。それに追い打ちをかけたのが平行して走る国道の整備でした。私は4年前、この国道をバイクで延岡から高千穂へ走りましたが、高速道路なみに整備された広くて走りやすい道に驚かされました。当然、沿線住民は高千穂鉄道ではなく、自動車を運転するようになります。高千穂鉄道を利用する人は年々少なくなっていきました。そのため最近、廃止の話が持ち上がっていました。
この鉄道の廃止の直接の原因は、今年9月の台風14号で五ヶ瀬川が氾濫し、二つの鉄橋が流されてしまったことです。復旧には莫大な費用がかかります。一鉄道会社の手におえるものではありません。しかし、赤字経営が続くこの鉄道の再建を助ける気は政府にはありませんでした。
経営効率から見れば、この鉄道の廃止は当然であると言えます。しかし、数は少なくなってきたとは言え、この鉄道が廃止されると困る利用者はいます。自動車の運転が出来ない高齢者や小中学校の生徒・児童です。バスがあるから良いではないか、という声がありますけれども、スピードや運賃、定時運行の面から見て、鉄道が優れている面があります。事実、旧国鉄や私鉄の鉄道路線が廃止された後に運行された代替バスの多くは、大体10年後には乗客減を理由に廃止されました。バスには乗らずに、自動車を運転するようになったからです。
この鉄道の廃止は、素晴らしい車窓が失われることだけでなく、交通の足を失うことを意味します。自動車があるからいい、という声もありますけれども、高齢化が進んで運転ができなくなった時、移動の手段はどうすれば良いのか、という問題が生じます。それは子供も同じです。
規制緩和によって、鉄道の廃止が簡単になった(国交省に届けるだけでよい)ことで、ここ数年間は鉄道の廃止が相次ぎました。私が知っているだけでも、名古屋鉄道、のと鉄道、JR可部線の一部区間、日立電鉄全線があります。まもなく廃止予定の鉄道は3社(北海道ちほく高原鉄道、くりはら田園鉄道、神岡鉄道)にものぼります。そして高千穂鉄道がその中の入りました。それら廃止された路線は、いずれも美しい車窓を楽しむことができました。
私は、この高千穂鉄道にもう一度乗れば良かったと後悔すると同時に、私の中の大切な宝が失われたと感じています。そして、交通弱者と呼ばれる高齢者や子供、身体障害者の移動の手段はどうなるのか、と考えています。
この鉄道は多くの人びとから愛されてきました。
「がんばろう!高千穂鉄道」
http://pusuo.fc2web.com/trpage.htm
には、鉄道存続のための奮闘する人びとの姿があります。
ある鉄道の廃止によって、また一つ大切なものが失われた気がします。