★阿修羅♪ > 地域9 > 280.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
コンピュータニュース - 11月14日(月)11時7分
条件検索
SNS化で復活した自治体サイト「ごろっとやっちろ」
「誰もが安心して書き込める『まちBBS』を作りたかった」――熊本県八代市が自治体として国内で始めてSNS(ソーシャルネットワーキングサイト)を取り入れた背景には、こんな思いがあった。
八代市のコミュニティーサイト「ごろっとやっちろ」は、市民同士が安心して情報交換できる場を目指して2003年4月にオープン。利用は一時落ち込んだが、昨年12月にSNS化して以来一気に盛り返した。ユーザー数は現在約1500人で、うち約8割が八代市民。市の人口は約14万人だから、約1%弱が利用している計算だ。
自治体が運営するコミュニティーサイトといえば「行政と住民の距離を縮める」「ネットで市民の声を吸い上げる」といった目的が語られがちだが、ごろっとやっちろは、市から何かを問いかけることもなければ、住民のコミュニケーションに市が介入することもない。「市民の方々に“馴れ合って”もらいたいんです」と、開発した八代市情報推進課の小林隆生さんは言う。
意見の吸い上げではなく“馴れ合い”を目指したのには理由がある。「掲示板から行政への意見を吸い上げるのは難しい」――2002年、市のサイトのリニューアル計画時。他自治体の掲示板やWebサイトなどを参考に検討した結果だった。
自治体の掲示板で政策に関する意見を募っても、主張が強い人ばかりが目立ってしまい、誰もが安心して発言できる場にするのは難しい。また、先行するどの自治体も、集めた意見を政策に反映するフローの確立に悩んでいるのが現状。専任の部署でも作れば対応できるかもしれないが、八代市にその余裕はなかった。
結局、市からの情報発信や行政への意見募集は市のWebサイトに集約。市のサイトにも掲示板は置かず、メールでの意見募集にとどめた。それとは別に、掲示板やコミュニティー機能を備えたサイトを作り、市民同士のコミュニケーションに生かしてもらいながら、市内の店舗の宣伝や市の広報媒体としても利用し、市の活性化につなげようとした。
2003年4月にオープンした初期のごろっとやっちろは、ユーザー同士がつながるSNS機能はなかったが、掲示板やコミュニティー機能を装備。書き込みが行われるたびに職員にメールがとどく仕組みを取り入れることで、市民同士が安全・自由にコミュニケーションしてもらえるサイトを目指した。
●伸び悩むアクセス、SNS化という光
4月の公開当初は物珍しさからか多くのアクセスがあったが、ほどなくアクセスは激減。1年後にはほとんど使われなくなってしまった。
なんとかユーザーを増やしたいと悩んでいたころ、小林さんはSNS「mixi」に招待され、参加してみて驚いた。ユーザーが自らのプロフィールを堂々と公開しており、活発に交流していたからだ。「それまで、ネットで個人情報をさらすなんてありえないと思っていました」
mixiは、ユーザーがプロフィールや友人関係を公開しているため荒れにくいとされていた。会員はそれぞれの「マイページ」や日記を中心に活動し、「毎日ログインしないと不安」というヘビーユーザーも続出していた。
「掲示板サイトだと、ログインしたときに見えるのは掲示板という公共の場所。書き込みへのハードルは高くなってしまいます。でもマイページや日記なら、誰にも気兼ねせず、好きなように書き換えられます」――前者だったごろっとやっちろを、後者のmixi型――SNSに変えようと決めた。「場所中心から人中心に変えようと思いました」
mixiは、入庁間もないころの小林さんのある体験を思い起こさせた。「庁内LANを使って職員同士でファイル交換できるソフトを作ったら、それを利用するためだけに、みんなが自費でPCを購入し始めました」――1つのコミュニケーションツールが、高価なハード購入のドライバーにもなり得る。SNSも、ネットと縁が薄かった人がネットを活用し始めるきっかけになりそうだと感じていた。
●SNS化で利用急増
小林さんは早速、ごろっとやっちろのSNS化に着手。プロフィールを公開できるマイページを作成し、ユーザー同士がつながる仕組みや招待制を取り入れた。掲示板やコミュニティー機能とも連携させ、2004年12月に公開した。
市民への参加呼びかけやPRは特にしていないが、約600人だったユーザーは約1500人まで増え、今も伸び続けている。月間1万程度だったページビューは、2万以上に増え、20程度だった月間書き込み数は150〜200に伸びた。SNS化以来、ひぼう中傷など問題のある書き込みも全くなくなったといい、ユーザー同士がゆるやかにつながる中で、モラルが保たれているようだ。
●八代から全国へ
小林さんは、ごろっとやっちろのシステムをオープンソース化した「open-gorotto」も公開。総務省が中心となって進めている地域SNS構想には、open-gorottoが利用されている。
現在、open-gorottoの次期バージョンを開発中だ。目玉はSNS同士の連携機能。各地域のSNSがシームレスにつながり、情報共有できる。ユーザーの登録情報を各地域のサーバに分散して保存することで、管理の手間を細分化しながらユーザーベースを拡大できる。ある地域のサーバが落ちても別地域のサーバで利用できるよう、負荷分散の仕組みも取り入れた。
課題だったUIやデザインも改善。Google Mapと連携し、日記に地図を貼り付けられるようにした。今後は絵や音楽を貼り付けられる機能を備え、文章が苦手な人にも使ってもらえるサイトにしたいという。
「新しいことをやってるわけじゃないんです」――すでにある技術を選び、組み合わせるだけ。難しいことではないと、小林さんはさらりと言う。
民間と競合するつもりもない。ネット上で地元の人が安全に交流できる仕組みを民間が作ってくれるなら、ごろっとやっちろをやめてもいいという。「みんな地元が好きだと思うんです。その思いを受け止められる受け皿を作ることが重要だと思います」
■さらに画像の入った記事はこちら
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0511/11/news042.html
http://www.itmedia.co.jp/news/
(ITmediaニュース) - 11月14日11時7分更新