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前半のNHKカメラマンのカメラワークの所の描写はいいですね。マスコミ批評板にしたいくらいです。批判だけでなく良い時は褒めることも大事。まさに「マスコミ"批判"」ではなく「マスコミ"批評"」
後半部の新自由主義路線による阪神買収のところは阪神ファンの人に読んで欲しい。
去年のいつごろだったか忘れたが、NHKの衛星放送で阪神戦の中継があり、たまたまチャンネルを合わせると、それが雨で中止になっていたことがあった。夕方の6時半頃だっただろうか。東京より日没が遅い甲子園はまだ明るく、実況担当のアナウンサーが余った放送時間を解説者と適当な話題で埋めていた。そのときカメラが外野席に座っている一組の親子をずっと映していたのが印象的で、今でも忘れられずに覚えている。親子は母親と子供三人の四人連れで、母親は傘を持ち、子供たちは雨合羽をかぶっていた。男の子が一人で女の子二人、年齢は四歳から七歳ぐらい。トンガリ帽子の合羽姿が愛くるしくかわいかった。雨天中止で観客や応援団はみなスタンドを引き上げて外野席は空っぽだったが、その親子だけがずっと雨の中で席を離れなかった。一人の子がじっと内野のグラウンドを見つめていて、もう一人の子は何か食べながらときどき母親と顔を見合わせて話していた。父親の姿はなかった。仕事が忙しくて来れなかったのだろうか。
それとも別の事情があったのだろうか。甲子園へ連れて行ってくれとねだられ、手に入れにくい切符を一生懸命に手に入れて、お弁当を作って、虎のメガホンを用意して、憧れの甲子園に子供たちを連れて来たのに違いない。二分か三分ほど淡々と映し出された雨の中の情景を見ながら、せっかくの阪神戦応援の機会を奪われた親子が不憫でならなかった。と同時に、その絵を見事に捉えたNHKのカメラマンの心を思わされ、満たされた嬉しい気分にもなった。恐らく三人は生まれて初めて甲子園に連れてきてもらったのだろう。家族にとってこんな機会は滅多になく、子供たちにとってはずっと前からせがみ続けてきた夢の場所の夢の時間であり、雨によって無理やり夢を壊された親子が、それでも少しでも家族の思い出を作ろうとして、その場を動くことができなかったのに違いない。こういう事は庶民ならよくある。雨やからしゃあないなあ、また一緒に来ような、そんな会話をしていたのだろうか。小さな、しかしかけがえのない庶民の幸せ。
大阪へ行くと思うことだが、最近は少し雰囲気が変わったが、資本の規模がやはり小さい。電車の窓から見える外の建物が低く小さい。街の風情も、歩いている人の表情も、庶民的な感じがする。城の東側の一角を除いて、巨大な資本が集積されている景観があまりない。六本木や丸の内や汐留や東品川のような、ギラギラした外資バブル(グローバル資本主義)の集積誇示空間がない。町の文化がどこまでも庶民的で、かつ商人的で、気取らず楽しく軽快な気分になる。この町の人は、神戸もそうだが、本当に商売の文化がよく身についていて、買い物をして嫌な思いをさせられることが少ない。洗練された商業の伝統文化が生きている。関西人は生まれながらに小売商で、商売人のDNAを持っている。店の人は皆すぐれた商品知識を持っている。提案がうまい。上手に商品を売る。お客をよく見ていて、客が考えていることを掴んでいる。神戸や大阪に較べると、東京の店の店員は質の悪いロボットで、関西から来た人間はきっと買い物で不便しているだろう。
今年の阪神タイガースはいい試合をして、特に藤川球児の活躍が素晴らしかった。夏までの対巨人戦の中継は欠かさず見たが、ストレートで三球三振を取る場面は実に圧巻だった。昔、山口高志を見て感動した記憶は衰えず、むしろ年を追う毎に鮮やかに甦り、何年か一度は山口高志の英雄伝説を賛歌する文章を書いている。直球は野球の美学。あれほどの直球は十年に一度くらいしか拝めない。生まれて初めてこの美学に接した十代の者は、今季の藤川球児の英雄像を一生忘れられないだろう。巨人を別にすれば全体にいいシーズンで、ずっと野球を追いかけて見たかったが、今年は政治の夏になり、野球どころではなくなり、せめて日本選手権だけはゆっくり観戦しようと思っていた矢先に妙な騒動が始まった。球団の価値を上げるとか、堀江貴文の腐った口上と同じ常套句を言う。堀江貴文や三木谷浩史や村上世彰が札束で球団を買えば、球団の価値は上がるんじゃなくて下がるんだよ。金儲けの道具にされてボロボロにされるだけじゃないか。
プロ野球の球団は文化財であって資本財ではない。それは去年の古田敦也の闘争勝利で決着がついた問題ではなかったのか。関西の市民は阪神電鉄を支援し共闘して、村上ファンドの侵入を阻止する運動に立つべきだ。「ストップ・ザ・村上」のバナーを作って、反村上ブロガー同盟を組織しろ。例えばビルゲイツが四兆円出すから法隆寺を売ってくれと言ってきたら売るのか。自分が法隆寺の価値をさらに上げて米国や欧州から観光客を五倍増やして日本政府と奈良県に納税貢献をするから売ってくれと言ってきたら売るのか。三兆円出すから東大寺を売ってくれと言ってきたら売るのか。ニ兆円出すから姫路城を売ってくれと言ってきたら売るのか。一兆円出すから大阪城を売ってくれと言われたら売るのか。この場合、阪神電鉄は文化庁だろう。単に文化財の管理保存代行者であって、実際の文化財の所有者は国民、つまり関西のタイガースファンだろう。村上世彰にノーと言えよ。テレビカメラの前で「阪神の株を持ってみるのもええかなと思います」なんて言うな。
口が裂けてもそんなことは言うな。