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結論は持ち越し。川辺川ダム建設に絡む収用案件を審理している県収用委員会が三十一日に示したのは、次回審理までに、審理を打ち切るかどうかを判断するという方針。ダム建設反対派は「国土交通省への最終通告だ」と分析するが、国交省も次回審理までの新利水計画策定作業の進展に期待する。ダム建設推進を求める地元では、収用裁決申請の却下を避けられたことに安ども広がった。
「ご意見がなければ、これで本日の審理は終了します。今後、審理を打ち切るか、継続するかの結論を出し、次回審理で伝えます」。三十一日午後三時、熊本市の熊本テルサで開かれた県収用委。塚本侃会長は、慎重に言葉を選びながら述べた。
その瞬間、却下を意味する「審理終結」の言葉を聞こうと期待して駆け付けた反対派傍聴人たちからは「そんな…」と、失望の声が上がった。しかし、ダム反対派代理人の板井優弁護士は「これは事実上の終結宣言。当然、国交省にとっては非常に厳しい結論になるだろう」と、県収用委の判断を周囲に解説。反対派は落ち着きを取り戻し、県収用委の一刻も早い却下裁定への期待を口にした。
「国交省は追い詰められた」としつつも、次回審理が数カ月先になる点を懸念するのは、「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」の中島康代表。「その間に新利水計画策定が進み、国交省に有利に働かなければいいが…」。今回の県収用委の結論が、反対派にとって期待と不安の交錯する内容であることをうかがわせた。
●着実に動いている
これに対し、国交省九州地方整備局は「今後の利水計画策定を注視して、状況に応じて県収用委に説明したい」とする宮田年耕局長のコメントを発表。終了後の部屋で、川崎正彦河川部長は「却下に近づいたのではなく、猶予が与えられたとも受け取れる」と淡々と話し、「地元が新利水計画に向けて着実に動いていることを考慮してもらいたい」と訴えた。
人吉市役所二階の市長室に、一本の電話が入った。「却下はありませんでした」。国交省川辺川ダム砂防事務所からだった。球磨川流域十五市町村でつくる川辺川ダム建設促進協議会長の福永浩介市長は、ひと安心の表情。「却下されなくてよかった。県収用委が落ち着いた判断をされたと思う」と短いコメントを出した。
●リストラ2割
人吉・球磨地方の建設業界にとっても、この日の県収用委は注目の的だった。建設会社の一つは、公共工事の減少で昨年十二月に約二割の社員をリストラした。その社長(44)は「ダム本体着工もできず、利水事業関連の工事もストップし、建設業者は干上がりかけている。クビにした人数を書いた陳情書を国と県に持っていきたい気持ちだ。新利水計画を早くまとめてほしい」と、いらだちをあらわにした。
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ひとまず却下をまぬがれた国交省。国を追い詰めたとする反対派。危機感を募らせる推進派。この日の県収用委は、さまざまな波紋を広げた。しかし、その収用委を含め関係者が共通して焦点とにらむのが新利水計画の行方だ。もつれ合いながら流れるかのように見える川辺川ダム問題の新局面を追う。(川辺川ダム問題取材班)
熊本日日新聞 2005年6月1日朝刊掲載