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世界自然遺産に日本から推薦した知床(しれとこ)について、環境省は31日、候補地を審査する国際自然保護連合(IUCN)が「知床は世界自然遺産への登録が適当」とする評価をまとめ、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会に勧告したことを明らかにした。近年はIUCNの勧告通りに登録が認められる場合が多く、南アフリカで7月10日から開催される同委員会の最終審査を経て、正式登録される可能性が極めて高くなった。
世界遺産登録が確実となった知床半島=05年4月18日、 本社ヘリから須賀川理写す(毎日新聞)17時26分更新 |
国内の世界自然遺産は、93年に登録された白神(しらかみ)山地(青森、秋田県)と屋久島(鹿児島県)以来、12年ぶり3カ所目。
政府が昨年1月、登録を推薦した知床は、オホーツク海に突き出た知床半島にある。候補地は斜里町と羅臼町にまたがり、沖合2キロまでの海域を含めた面積は約7万1100ヘクタール。陸地の9割を原生的な森林が占め、ヒグマが密に生息するなど豊かな生態系が広がる。流氷に付着するプランクトンが食物連鎖の始点となって海洋生物やヒグマ、シマフクロウなど多様な猛きん類の生息を支える。陸と海が一体となり特異な生態系が守られている地域は世界でもまれで、IUCNは生態系の観点から、「海洋と陸上の生態系が相互に関係した顕著な見本」と高く評価。生物多様性の面でも、「サケ科魚類などの海洋生物や海鳥類、渡り鳥にとって世界的に重要な地域」と指摘した。
一方、IUCNはこれまでにもダムがサケの遡上(そじょう)に与える影響への懸念などを表明していた。今回の評価でもIUCNは登録後の措置として、▽3年以内に完成させるとした推薦海域の保護管理計画の策定を急ぐ▽登録後2年以内に、海洋資源の保全効果などを評価する調査団を招く▽ダムのサケへの影響を評価し、それを取り除く対策を盛り込んだサケ科魚類管理計画を策定する−−などを勧告している。
小池百合子環境相は「北海道の地元の皆さんの努力、熱意が、国際的にも認められた。大変うれしい」と話している。【江口一】
◆ 漁業と海洋生物保全両立に課題=解説
国際自然保護連合(IUCN)は、知床について、「海と陸が一体」となった世界でもまれな生態系を評価した。しかし、推薦地には治山・砂防ダムなど50基ものダムがある。漁業活動と海洋生物保全の両立をどう図るのか。解決への取り組みは始まったばかりだ。
国連環境計画の報告書によると、地球上の陸地の11・5%が国立公園や世界遺産で保護されているが、海では0・5%しか守られていない。「海の生態系」の保護は国際的な課題となっている。
IUCNは、知床の審査過程で「海域の保全強化」「(海と陸のつながりを遮断する)ダムの撤去検討」を求めた。政府はダム撤去は防災上、困難としながらも魚道の整備を検討している。海域についても当初案の沿岸1キロから3キロに拡大し、漁業活動と海洋生物保護の両立を目指す海域管理計画を3年以内に策定することを決めた。ただ、新たな漁業規制はない。サケの遡上(そじょう)を妨げるダムの改良や、増加が予想される観光客への対応も求められる。
IUCNの担当者は「海洋生物を守ることが持続可能な漁業につながる。漁業者や日本政府がどう取り組むのかを世界が関心をもって見ている」と話す。【田中泰義】
▼ ことば(世界遺産) 72年に採択された「世界文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づいて▽文化遺産▽自然遺産▽両方の性質を持つ複合遺産が登録される。このうち自然遺産は、地球の歴史を示す重要な地形が残り、貴重な動植物が生息することが条件となる。ユネスコによると、2004年7月現在の世界の登録件数は、文化遺産611、自然遺産154、複合遺産23の計788(134カ国)。代表的なのはエジプトのピラミッド(文化遺産)、エクアドルのガラパゴス諸島(自然遺産)など。世界遺産の登録地を持つ国は、その遺産を保護・保存し、そのための国際協力や教育活動を強化することが求められる。
5月31日17時26分更新2005年05月31日15時17分