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http://www.asahi.com/science/news/TKY200505210285.html
2005年05月21日
日本魚類学会は、生物多様性の保全をめざした希少魚類の「放流ガイドライン」をまとめた。放流の是非、場所や個体の選び方、放流後のモニタリング調査、密漁防止などを規定している。絶滅した動植物の再導入については国際自然保護連合(IUCN)のガイドラインがあるが、日本では初の科学的指針だ。
希少種の復元や自然環境保全を掲げ、メダカなどの放流が盛んになっている。しかし、環境が合わずに魚が死んだり、他種を捕食してしまって生態系を崩したりするケースもある。近縁種との交雑や、遺伝的性質がもともといた集団と置き換わる可能性も少なくない。
魚類学会自然保護委員会では昨年6月、淡水魚の放流と保全について公開シンポジウムを開くなど検討を重ねてきた。
ガイドラインはまず、「放流による保全は容易でない」「放流が最も効果的な方法かどうか検討すべきだ」と指摘。生息状況の調査や生息条件の整備、環境保全などの活動を継続することが「安易な放流よりはるかに有効」としている。
実際の放流場所の選定では、その種が生息しているかどうかや、環境が適切かを事前に調査し、他種への影響を予測。放流個体は、遺伝的、生態的な特性に注意し、放流場所の集団か同じ水系の集団とする。病気などもチェックし、来歴不明の市販個体の放流は好ましくない、とした。
さらに、放流の時期や個体数、回数を十分に検討し記録を残す。放流後もモニタリング調査を続け、その結果の公表や、密漁の防止などが重要だとしている。
魚類学会は今年3月、東京湾再生のシンボルとして絶滅危惧(きぐ)種アオギスの放流計画に対し、「事前調査や実現可能性の議論が不十分」との意見書をまとめた。自然保護団体などの異議もあり、アオギス放流は見送られることになった。
ガイドラインをまとめた岐阜経済大の森誠一教授は「魚類学会のホームページでも公開しています。必ずしも放流禁止をうたうものでなく、放流にいくつかのハードルを設定することで、効果的な保全に結びつけてほしい」と話している。