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http://mytown.asahi.com/hokkaido/news02.asp?c=37&kiji=29
鉄の男支えたパワーの源
豚肉・タマネギ 歯ごたえ十分
やきとり界の風雲児か、はたまた革命児か。初めて室蘭市を訪れた転勤族や観光客らを驚かせるのが「室蘭やきとり」だ。鶏肉ではなく、豚肉。長ネギではなくタマネギ。しかも洋がらしをつけて食べる。やや甘みの強い味、ショウガ味がそこはかとなく漂う味……。それぞれの店秘伝のタレか塩味でほお張る。夜な夜なネオン街を巡り酒杯を重ねていると、ほろ酔いのまぶたに鉄の街を支えた男たちの姿が浮かんだ。
(室蘭支局・石間敦)
鉄鋼業が隆盛を誇り、企業の進出が相次いだ昭和30〜40年代。室蘭市の人口は16万人台に増え、随一の繁華街・中央町には市役所や鉄鋼、港湾関係者らがどっと繰り出し、にぎわいを見せた。人口10万人余りの今、往時の面影はないものの、栄華の残響があり、それはそれで味わい深い。
夕暮れ、静かな路地を歩く。「やきとり」の看板が次々と目に入る。
煙と香ばしいにおいに誘われ、やきとり「鳥辰本店」ののれんをくぐった。昭和36年(61年)から続く店の3代目堀江宏治店長(30)が「いらっしゃい」と威勢のいい声で出迎えてくれた。
炭の上で煙が小気味よく立ち上る。豚精肉をタレで焼いてもらった。1本に肩ロース3切れ、間にタマネギをはさむ。一切れ11グラムが目安という。炭火の上に並んだ精肉、タン、ハツなど40本ほどの串を手際よくひっくり返す。「焼く時間は精肉だと1本、5〜6分。炭の火加減が一番大切ですね」と教えてくれた。
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夕方の開店に備え、午後3時ごろから種火をつくる。燃え具合をみながら、炭を加え続ける。一日に使う炭の量は15キロにもなるという。
間もなく、カウンターに、5本の串が載った皿が差し出された。やや甘みのあるタレがしっかり絡む串を口に運んだ。炭火で、ほどよく脂がそぎ落とされた肉の味が口中に広がった。歯ごたえ、食べごたえともに十分。やや甘みのタレが洋がらしに合う。
「うちはタレにつけて焼いた後、さらにタレをつけて2度焼きします」と堀江さん。さすがに、創業以来続く秘伝のタレの製法は教えてもらえなかった。
出張族や若者などのグループが店内を占めていた。中央町は常連に加えて観光客も姿を見せる。
往時を知るやきとり店の店主たちは口をそろえる。「最盛期は、製鉄所の労働者たちが仕事帰りに焼酎を飲みながら、やきとりを食べて疲れを癒やしていたよ。まさに明日への活力源だね」
*
室蘭っ子になじんだ「やきとり」。市民には安らぎの味、市外からの人には驚きと感動の味といったところか。生まれも育ちも室蘭というタクシー運転手(57)は言う。「20代のころは、一度に50本ぐらいは食べたもんだ。札幌へ行って、やきとりが鶏肉だったので驚いたことがある」
以前から「食べたい」と言い続け、最近、やっと念願をかなえた札幌の知人(44)は「うまい。体に力がみなぎる」と言い、あっという間に15本をたいらげた。
焼酎を酌み交わすうち、その奥深い歴史的な背景と風土に魅せられてしまった。
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専門店約65店
室蘭やきとり 誕生のいわれには諸説があり、はっきりしない。戦時中、軍が養豚を奨励して皮を軍靴に利用し、屋台などで内臓などが出回ったのをきっかけに、安いことや、鉄鋼労働者が多いことなどから室蘭地方で定着したという説が有力という。現在、豚精肉1本で100〜120円。室蘭市内のやきとり専門店は約65店。ゆうパックで全国発売もしている。
煙の中、次々と室蘭やきとりが焼き上がる=室蘭市中央町の「鳥辰本店」で
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