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『亜空間通信』1015号(2005/05/18)
【英米イスラエルの遺伝学者がユダヤ(レヴィ)人の遺伝的起源を調べ半数以上が中央アジア起源】
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転送、転載、引用、訳出、大歓迎!
わが自前の木村書店発行、季刊『真相の深層』への寄稿者からは、様々な電網情報が送られてくる。私は、その中から、時宜に適う情報を選び出して、広げているのだが、それだけでも、大変な仕事になる。
以下は、そういう位置付けの転送新情報である。イスラエル支持の「ユダヤ人」(かっこ付き)の狂信への批判であるが、後続の拙著、拙訳の関係箇所と合わせて、理解されたい。
英国・米国およびイスラエルの遺伝学者がユダヤ人の遺伝的起源を調べたところ、ユダヤ人共同体の半数以上が、中近東とは無関係の中央アジア起源だったことが判明した。
これは、2年近く前のニュース記事であるが、アーサー・ケストラーの主張を遺伝学的に裏づけた研究成果である。
文中のLevitesは、直訳すれば、レヴィ人である。ユダヤ教の聖典、旧約聖書のレヴィ記は、現在のイスラエルの極右シオニストの「大イスラエル」主義の根拠となる。
Le・vite ━━ n. 【聖】レヴィ族の人; レヴィ人.
レヴィ記の内容は、エジプトを出たイスラエルがまだ"約束の地"に入れず、荒野を旅していた時代の口承を基にして書かれた。彼らはヤハウェの導きに従って移動を続けていて、当然ながら土地を所有していない。
しかしヤハウェは[あなたたちがわたしの与える土地に入ったならば]と、実現が確実な予定として土地に関する規定を命じる。
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http://www.jca.apc.org/~altmedka/nise-7.html
『偽イスラエル政治神話』
1章:神学的な諸神話(その1)
1節:“約束”の神話……約束の土地か、征服した土地か?
《わたしはこの地をあなたの子孫に与える。エジプトの川から、かの大川ユフラテまで》(『創世記』15章18節)
政治的シオニズムの統一主義者の読み方
●《聖書を所有し、聖書の民と同様に考えるものは誰でも、聖書に記された土地すべての所有を要求すべきである》(モシェ・ダヤン将軍、『エルサレム・ポスト』67・8・10)
●一九九四年二月二五日、バルーフ・ゴールドスタイン医師が、長老の墓所で祈りを捧げていたアラブ人を虐殺した。
●一九九五年一一月二五日、イガール・アミールが、《神の命令》と“約束の土地”としての“ユダヤとサマリア”(現在のヨルダン川の西)をアラブ人に譲ろうとするものは誰であろうとも処刑することを誓う彼のグループ、“イスラエルの戦士”の指示の下に、イツァク・ラビンを暗殺した。
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http://www.racesci.org/in_media/central_asian_levites.htm
Geneticists Report Finding Central Asian Link to Levites
By NICHOLAS WADE
New York Times 09/27/03
A team of geneticists studying the ancestry of Jewish communities has found an unusual genetic signature that occurs in more than half the Levites of Ashkenazi descent. The signature is thought to have originated in Central Asia, not the Near East, which is the ancestral home of Jews. The finding raises the question of how the signature became so widespread among the Levites, an ancient caste of hereditary Jewish priests.
The genetic signature occurs on the male or Y chromosome and comes from a few men, or perhaps a single ancestor, who lived about 1,000 years ago, just as the Ashkenazim were beginning to be established in Europe. Ashkenazim, from whom most American Jews descend, are one of the two main branches of Jews, the other being the Sephardim, whose ancestors were expelled from Spain.
The new report, published in the current issue of the American Journal of Human Genetics, was prepared by population geneticists in Israel, the United States and England, who have been studying the genetics of Jewish communities for the last six years.
They say that 52 percent of Levites of Ashkenazi origin have a particular genetic signature that originated in Central Asia, although it is also found less frequently in the Middle East. The ancestor who introduced it into the Ashkenazi Levites could perhaps have been from the Khazars, a Turkic tribe whose king converted to Judaism in the eighth or ninth century, the researchers suggest.
Their reasoning is that the signature, a set of DNA variations known as R1a1, is common in the region north of Georgia that was once occupied by the Khazar kingdom. The signature did reach the Near East, probably before the founding of the Jewish community, but it is still rare there. The scholars say they cannot exclude the possibility that a Jewish founder brought the signature on his Y chromosome to the Ashkenazi population, but they consider that a less likely explanation.
The present descendants of the Khazars have not been identified. Dr. Michael Hammer of the University of Arizona, one of the authors of the report, said he was looking among the Chuvash, a Turkic-speaking people of the Volga Valley, to see if they might have contributed the R1a1 signature.
Dr. Shaye Cohen, professor of Hebrew literature and philosophy at Harvard University, said he could see no problem with outsiders being converted to the Jewish community. He said he considered it less probable, however, that outsiders would become Levites, let alone founding members of the Levite community in Europe. The connection with the Khazars is "all hypothesis," he said.
Even if the Khazar hypothesis is correct, it would have no practical effect on who is a Levite today. "Genetics is not a reality under rabbinic law," Dr. Cohen said. "Second, the function of Levites is so minimal it doesn't mean anything."
Six years ago Dr. Hammer and Dr. Karl Skorecki, of the Technion and Rambam Medical Center in Haifa, looked at the Y chromosomes of both Levites and Cohanim. Both are hereditary priesthoods passed from father to son. They were important in ancient Israel, but sometime between 200 B.C. and A.D. 500 their functions were taken over by rabbis, and Jewish status came to be defined by the biologically more reliable standard of maternal descent.
If the patrilineal descent of the two priestly castes had indeed been followed as tradition describes, then all Cohanim should be descended from Aaron, the brother of Moses, and all Levites from Levi, the third son of the patriarch Jacob. Dr. Hammer and Dr. Skorecki found that more than half the Cohanim, in both the Ashkenazi and Sephardi communities, did indeed carry the same genetic signature on their Y chromosome. Their ancestor lived some 3,000 years ago, based on genetic calculations, and may indeed have been Aaron, Dr. Skorecki said.
But the picture among the Levites was less clear, suggesting that they had a mixed ancestry. Dr. Hammer and Dr. Skorecki returned to the puzzle for their new report, based on data gathered from nearly 1,000 men of Ashkenazi and Sephardi origin and neighboring non-Jewish populations.
They found that the dominant signature among the Levites was the R1a1 signature, which is different from the Cohanim signature. The paternal ancestry of the Ashkenazi and Sephardic Levites is different, unlike the Cohanim from the two branches, who resemble each other and presumably originated before the two branches split. And the ancestor of the R1a1 signature apparently lived 2,000 years more recently than the founder of the Cohanim signature.
The Levites' pedigree does not seem to accord with tradition as well as the Cohanim one does but is venerable nonetheless. "How many people can trace their ancestry back to the 17th century, let alone a thousand years?" Dr. Hammer said.
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http://www.jca.apc.org/~altmedka/gulfw-61.html
『湾岸報道に偽りあり』
隠された十数年来の米軍事計画に迫る
補章:ストップ・ザ・「極右」イスラエル(4)
(その61)「ユダヤ人」の九〇%はタタール系カザール人だった
「ユダヤ人問題は百科事典編集者にとって最大の難問題の一つですよ」と語るのは平凡社の社員だった知人、百科事典のベテラン編集者である。 日本で現在も版を重ね、続けて発行されている百科事典の中では、平凡社の『世界大百科事典』がいちばん古い。初版以来、版を重ねるたびに、各項目の記述を再検討し、必要なら改訂するのだが、その際いつも、「ユダヤ人」の「血統」問題で苦労したというのだ。
もちろん、二千年前にエルサレム神殿が破壊され、ディアスポラ(離散民)となって以来の歴史だから、当然、各地での混血は生ずる。しかし、ここでいう難問題の「血統」は、それとはまったく質を異にしている。
結論を先にいうと、世界中の「ユダヤ人」の約九〇%は血統的に見ると、もともと、かつてのユダヤ王国起源、つまり、先の「ヴィデオ」のナレーションのような「モーゼに率いられてエジプトを出たユダヤの民」の末裔ではないのだ。大部分は、ユダヤ教に国ごと改宗したタタール系民族で、南ロシアに七世紀から十世紀にかけて周辺諸民族を帝国支配下に置いていたカザール(英語で「Khazar」、ハザルとも記す)王国起源なのである。
私はこの事実を、湾岸戦争中に読んだ『ユダヤ人とは誰か』で初めて知って驚き、他の資料を当たってみた。単行本も何冊か発見したが、特に、平凡社の世界百科事典に記述があったので、すでに以前から「知るひとぞ知る」類いの問題だったことが確認できたのだ。
これは、歴史ファンにとっては、実に魅力的な歴史ロマン大発見であろう。パレスチナ問題という当面の障害さえなければ、歴史ファンにとってもともと、ユダヤほど興味深い題材はない。日本にだって古事記や日本書紀などがあるが、世界的に見て、旧約聖書にかなう古代文献はない。エジプトやメソポタミアから未知の古記録が発見されるたびに、世界史の謎を解くカギの一つとして、様々な議論の中心になっている。
ところが、あれだけ自分の民族の歴史に執着してきた「ユダヤ人」(ユダヤ民族、より正確にはユダヤ教徒)が、二千年前にエルサレム神殿破壊、ディアスポラ(離散民)となって以来の歴史を、自ら積極的に語ろうとはしないのである。奇妙な話なのだが、下手にさわると、反ユダヤだ、ナチだ、ヒットラーだとまでいわれかねない。危険な政治問題となるために、歴史ファンが公然と議論もできず、歴史学者もオソル、オソル。まさに「さわらぬ神に祟りなし」という表現がピッタリの状態だったらしい。私自身も歴史ファンの一人として、なんとか、こういう魅力的ロマンを自由に議論できる平和な状態にしてほしい、と願わずにはいられないのだ。
ユダヤ人は、むしろ、ユダヤ教徒の集団として考える方が実態に合っているが、ディアスポラには二つの大きな流れがあった。現在のイスラエルでも、その象徴として首席ラビ(指導的聖職者)が二人おかれている。流れの一つはセファルディム、もう一つはアシュケナジムと呼ばれている。
セファルディムの語源はスペイン(エスパーニャ)と同じで、パレスチナ地方からスペインに流れた集団を祖先としている。言葉もスペイン語をたくさん取り入れたラディノ語を使っていた。セファルディムは中世にスペインから追われ、主に北アフリカに移り住んだ。人種的特徴は、現地のアラブ人に近く、肌色も褐色が多い。
アシュケナジムの語源には諸説あるようだが、ドイツの意味とも解釈され、やはりドイツ語を沢山取り入れたイディッシュ語を使っていた。
そこで、「百科事典編集者にとって最大の難問題の一つ」という話を検証してみよう。確かに、そのつもりで『世界大百科事典』(平凡社、一九八八)をめくると、それらしき苦労が感じられる。いくつかの項目を比較検討しないと実像に迫りにくい記述なのだ。
「アシュケナジム」の項では、「最初はライン地方のユダヤ人を意味した」とし、「第二次世界大戦前には、全世界のユダヤ人口一六五〇万の90%はアシュケナジムであった。ナチスのホロコーストはこの比率を大きく低下させた」と記している。
「ユダヤ人」の項では[東方ユダヤ人]を区分し、以下のように説明する。「ロシア、ポーランドなど東ヨーロッパ諸地域にも多くのユダヤ教徒が居住していた。その一部はスペインでの迫害を逃れて移住した人びとであったが、他のかなりの部分は、ハザル王国の滅亡とともに各地に離散したユダヤ教徒であった。……彼らは十九世紀後半に帝政ロシアの迫害と貧困を逃れるため大量に西ヨーロッパ諸国、さらにアメリカへと移住した」
「ハザル族」の項では「王族は、九世紀の初めユダヤ教に改宗した」としている。
さてそこで、「アシュケナジム」の一員で、ハンガリー生まれのユダヤ人、アーサー・ケストラー(故人)が著わした『The Thirteenth Tribe, The Khazar Empire and its Heritage』(『第十三支族、カザール帝国とその末裔』)の日本語訳が『ユダヤ人とは誰か』と題して出版されていた。この本の主張は、大変に強力な「カザール起源説」である。
アーサー・ケストラーは、やはり『世界大百科事典』に詳しく載っている有名な作家であった。一九〇五年にブダペストで生まれ、ウィーン大学の学生時代からシオニストとして活躍している。だから決して、いわゆる「反ユダヤ主義者」などではない。一九四五年にはロンドン・タイムズの特派員としてイスラエル建国前のパレスチナにいた。一九五六年にはイギリス王立文学会特別会員となり、一九六四年から一九六五年にはカリフォルニアのスタンフォード大学の行動科学研究所特別会員だった。著書には、日本でも有名な『スペインの遺書』や『真昼の暗黒』『黄昏の酒場』『見えない手紙』『夢遊病者』『コール・ガールズ』がある。さらにニュー・サイエンスの『機械の中の幽霊』『ホロン革命』などを著した思想家としても知られている。
彼が『ユダヤ人とは誰か』を出版したのは一九七七年であった。ところが一九八三年、同書の訳者解説によれば、「彼の死を報じた新聞はその業績とともに彼の多くの著書を紹介したが、本書は著書名の中には挙げられていなかった」。『世界大百科事典』の「アーサー・ケストラー」の項にも、この本の名は記されていない。しかし、「本書」は最初から無視されていたのではなかった。
「この本が初めて世に出た頃には『ニューヨーク・タイムズ』でさえ次のような賛辞を贈っていた。『ケストラーの優れた書物は非常に興味深いものである。その手腕、優雅さ、博学などはもちろんのこと、それににもまして著者そのものがそれらすべてを駆使して真実を導き出そうとした努力、さらにその結論には大いに敬意を表するに値するものがある』。『ウォール・ストリート・ジャーナル』も同じように称賛していた。『興味を持つためにユダヤ人であることが何も必要条件とはならない。……今日のヨーロッパのユダヤ人達は本当に聖書が言っているセム系のユダヤ人なのか。それとも大多数は改宗したカザール人の子孫なのか。このコンパクトで興味をそそる本は……この問題に潜んでいる悲劇的かつ皮肉な結論を暗示し……それゆえに人々の心を魅了してやまないであろう』」
ただし『ニューヨーク・タイムズ』の書評の扱いに関しては、先に紹介したユダヤ系ジャーナリストのリリアンソールが、「書評欄の片隅に目立たないように押しこめられていた」と批判している。リリアンソール自身も、ケストラーより二、三年先に『イスラエルについて』を著し、次のように指摘していたという。
「東西ヨーロッパのユダヤ人たちの正統な祖先は、これらの八世紀に改宗したカザール人たちであり、このことはシオニストたちのイスラエルへの執念を支える一番肝心な柱を損ないかねないため、全力をあげて暗い秘密として隠されつづけてきたのである」
詳しい論争に立ち入る余裕はないが、なにしろカザール(ハザル、ハザール)自体が、とてつもなく広い南ロシア平原地帯の騎馬民族であり、中世の「失われた歴史」の民なのである。おそらくは、色々な人種、民族、文化の混合体だったのだ。揚げ足取りの議論も絶えないことだろう。
イスラエル大使館に電話で聞くと、日本語の上手な広報担当者が次のように答えた。
「高校でカザール書簡の存在は教えている。だが、歴史的事実だとしても、カザールのインパクトは低い。PLOがイスラエル建国の権利を否定する根拠にしているのは間違いだ」
つまり、否定はしないが「インパクトは低い」というニュアンスでぼかしている。
「カザール書簡」というのは、十世紀のアラブ支配のウマイヤ朝時代にコルドバのカリフの総理大臣だったユダヤ人、ハスダイ・イブン・シャプルトと、時のカザール王ヨセフとの間で交わされたヘブライ語の手紙のことである。ケストラーは、「この書簡の真偽は論争の的であったが、現在では後世の書写人の気まぐれをそれなりに斟酌した上で、大体受け入れられている」と記し、同時代のアラブ側の歴史資料などと比較検討するなど、詳しい考証を行なっている。
比較言語学によって得られた最近の成果は、さらに説得的である。この方法で民族の歴史が解明された有名なものには、ジプシーのインド起源説の例があるが、アシュケナジムのイディッシュ語の起源も、見事に解明された。将来展望としては、遺伝子のDNA比較などの最新技術も駆使されるであろう。歴史はいまや立派な科学なのである。
イスラエル大使館の広報担当者の慎重な返事は、そういう歴史的事実と現在の政治のはざまであえいでいるように聞こえた。歴史ロマンの解明への道は、まだまだ、血なまぐさい葛藤の彼方にあるようだ。特に問題なのは、現地で相争うアラブ人とイスラエル人は、こういう因縁をお互いに良く知っており、日本人はまったく知らないということである。
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http://www.jca.apc.org/~altmedka/nise-23.html
『偽イスラエル政治神話』(その23)
2章:20世紀の諸神話(その11)
4節:"民なき土地に土地なき民を"の神話(その1)
当時はカイロ駐在のイギリス植民地担当国務大臣だったモイン卿は、一九四二年六月九日、貴族院で、「ユダヤ人は古代ヘブライ人の子孫ではない[訳注1]から、聖なる土地の“正統な領土回復要求権”を持っていない」と言明した。パレスチナへのユダヤ人の移民を抑制する政策の賛成者だった彼は、《ヘブライ人の独立に対する執念深い敵》として非難の的となった(アイザック・ザール『救助と解放/イスラエル誕生にアメリカが果たした役割』54)。
一九四四年一一月六日、カイロにいたモイン卿は、イツァク・シャミール[のちのイスラエル首相]指揮下のシャミール集団のメンバー、二人によって射殺された[犯人二人はアラブ側に逮捕され、処刑された]。
その後、二〇余年を経て、オークランドの『イヴニング・スター』紙の一九七五年七月二日に掲載された記事によると、処刑された二人の死体をエルサレムの“英雄廟”に埋葬するために、二〇人のアラブ人の捕虜との交換が行われていた。イスラエルが暗殺者を褒めたたえ、英雄扱いしたことを知って、イギリス政府は慨嘆した。
訳注1:いわゆるユダヤ人、またはユダヤ教徒の約九割は、モイン卿の発言の通り、「古代ヘブライ人の子孫ではない」。ユダヤ教を採用したカザール帝国の末裔とその係累である。タタール系の民族を中心とするカザール帝国は、七世紀から一〇世紀に掛けて南ロシア周辺で栄え、その後に滅び、住民は離散した。巻末の「訳者解説」で資料等を紹介する。
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http://www.jca.apc.org/~altmedka/nise-33.html
『偽イスラエル政治神話』(その33)
訳者解説(その1)
本書の数多い主張の中には、まだまだ複雑な問題が潜んでいるが、ここでは四点についてだけ、補足をして置きたい。
[中略]
第二は、いわゆるユダヤ人の血統の問題である。
本訳書ではすでに、シオニストのテロリストに暗殺されたイギリス人、モイン卿の発言(二三七頁)に、簡単な訳注を付して置いた。そのままではほとんどの日本人の読者には、前後の脈絡が分かりにくいだろうと判断したのであるが、著者が、そこで詳しく述べていないのは、欧米の読者には周知の事実だからである。
この問題は、拙著『湾岸報道に偽りあり』でも紹介した。簡単に言うと、ユダヤ人と呼ばれている人々の内の九割ほどは、旧約聖書のユダヤ人、イスラエル人、またはヘブライ人の血統ではないのである。
本書でもその問題点が指摘されているように、現在のイスラエル自体が、「ユダヤ人」の定義を、基本的には「ユダヤ教徒」に求めている。それ以外には共通の基盤がないのだ。
「日本人」の場合にも、帰化すれば同じ「日本人」なのだから、もともと何々人という言葉自体が、厳密に血統を問う言葉ではない。だが、ユダヤ人の場合には、単なる懐古趣味の系図研究ではなくて、古代の先祖の土地所有権を争っていることになるのだから、決定的に、こだわらざるを得ない。しかも、血統が違う人々の比率が、桁外れに高いのである。
世界のユダヤ教徒の人口の九割に当たり、アシュケナジムと呼ばれる宗教上の流派に属する人々は、古代のユダヤ人の血統上の子孫ではない。七世紀から十世紀にかけて南ロシアで栄え、国ごとユダヤ教に改宗したタタール系の民族の王国、カザール(ハザール、ハザルとも記す)の末裔とその係累なのである。だから、ロシア、ポーランドなどの東欧諸国に、桁外れに多いユダヤ人の集団が存在していたのである。彼らは、「東欧ユダヤ人」とも呼ばれている。
この問題は、政治的シオニストの主張にとっては都合が悪いから、「血統云々」の発言を繰り返すモイン卿の暗殺にまで発展した。つまり、生命の危険を覚悟しなければ公言できない問題だったのである。当然の結果として、今も、欧米のメディアは報道しない。日本のメディアも、自称歴史学者のほとんども、欧米の習慣に従っている。しかし、本物の学問の世界では国際的な定説であり、日本でもかなり広く知られている。
詳しい研究書もある。その日本語訳も出版されている。その一つは、日本語訳では『ユダヤ人とは誰か/第十三支族カザール王国の謎』(三交社)となっているが、原題を逐語訳すると、『第十三支族、カザール帝国とその末裔』である。著者のアーサー・ケストラーは、ハンガリー生れのユダヤ人で、平凡社発行の『世界大百科事典』にも載っている著名な作家、思想家である。
旧約聖書に発する地中海文明の三大宗教の圏内では、「第十三支族」で意味が通じる。始祖アブラハムの子孫の内で行方が分からなくなった支族の意味だから、日本語訳の題名のように「ユダヤ人」を明記する必要がない。この原題および日本語訳の双方に現れる「第十三支族」という言葉の使用法は、あくまでも、そういう古代の伝承を借りたキャッチフレーズに過ぎない。なぜならば、カザールは、まったく別系統の民族だったからである。
その後、ロシアの考古・歴史学者、S・A・プレェートニェヴァの『ハザール/謎の帝国』(新潮社、96)が出た。訳者の城田俊は、モスクワ大学大学院終了のロシア語教授である。長文の訳者解説には中国史、モンゴル史からの観察も加わり、知られざるユーラシア大陸史の趣きがある。
古代ユダヤ人の直系は地中海周辺を中心に分散(ディアスポラ)していたが、イスラム帝国の発展に伴なってイベリア半島に移住した中心グループが、ヒスパニア時代を経て、ヘブライ語にヒスパニア語を交えた言語を使用するようになった。以後、その他も含めて、直系は、セファルディム(ヒスパニアからきた人々)と呼ばれるようになった。セファルディムは、当然、アラブ人と同じ肌色の有色人である。
現イスラエルには、セファルディムの人口の方が多いが、半白人で欧米を背景とするアシュケナジムの支配下に置かれ、「黒」呼ばわりの人種差別さえ受けている。ところが、アシュケナジムが元祖の「邪教」政治的シオニズムによる人種差別主義が、逆に、被支配者側ながら古代ユダヤ人の直系であるセファルディムに乗り移り、数千年の共同生活者だったアラブ人への憎しみを募らせるという、複雑怪奇な悲劇的事態が進行つつある。白人のキリスト教徒から差別された半白人のユダヤ教徒が、有色人のユダヤ教徒を差別し、さらにそのユダヤ教徒が、有色人のイスラム教徒を差別するという、まさに、この世の地獄が現出しているのである。ラビン首相を暗殺したイガール・アミールは、日本国内でもカラー写真入りの報道があったが、典型的なセファルディムである。
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以上。
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