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鈴置 高史 編集委員
リストラを示したつもりなのだろうが、国民が納得するかどうか分からない(会見するNHKの橋本会長)
NHK問題は「不祥事が多発する会社の問題」から、「政府のリストラ問題」へと性格を変えて行きそうだ。9月の総選挙の後、日本の空気は「役所減らしモード」に突入した。「役人の無駄」に憤る国民が、NHKも特殊法人という名の非民間企業であることを思い出したからだ。
「自然減」で国民は納得するか
9月20日、NHKが「定年退職への不補充など、自然減により3年間で10%の職員を減らす」と発表した。視聴者の受信料不払いは増加する一方。世論対策としてNHKは「リストラ努力」を示したつもりなのだろう。ただ、それで国民が納得するかは分からない。
まず、 “リストラ”が「自然減」という微温的な手法であること。普通の人は「これだけ公金横領を許し続けてきた管理の甘い組織なら、本当の余剰人員は10%どころではなかろう」と考えるものだ。
さらには本質論。国民は「そもそも、NHKの税金のような受信料徴収システムを続けるべきか」と、疑問も深めよう。小泉首相は選挙以来、絶叫し続けてきた。「民間ができることを役人がやる必要はない」。だとしたら、NHKはどうなのか、と国民は思う。
民営化論者は6割も
日本経済新聞は今年1月中旬に全国の男女1000人に、インターネットを通じ「NHKはいかにあるべきか」を聞いている。1月24日付の「クイック・サーベイ」欄で、牧野洋編集委員がその回答結果を織り込みながらエッセイを書いた。
アンケートの「NHKは組織形態を見直すべきか」との設問に対し、何と62.9%の人が「民営化して、受信料制度も廃止すべきだ」と答えた。次に多い答は10.7%の「組織形態はこのままで、チャンネル数を減らしたり放送分野を限定するなど規模を縮小すべきだ」。後は「受信料支払いを義務化するなど、経営基盤をさらに強化すべきだ」(7.4%)、「現在のままでよい」(7.3%)――と続く。
6割を越す人が「民営化論者」なのは、とりもなおさず「自分のおカネを出してまで見たいと思う番組をNHKが放送していない」と考える日本人が過半数いるということだ。
昔はNHKが圧倒的に強いと思われた報道番組も、民放がこの分野に力を入れたため「地震が起きた時、むしろ機動力のある民放にチャンネルを合わせる」人が増えている。
NHKが衛星放送などで多チャンネルし、大量の番組を放送するようになった結果、NHKが「民放でもやっているような番組」の割合を増やしたように受け止められていることもあるのだろう。
このアンケートでは「民放でもできるなら、NHKが放送しなくともいい番組は何か」とも聞いた(複数回答)。これに対し、10%以上の人が指摘したのは、@「冬ソナ」など海外ドラマ(68.8%)A「紅白歌合戦」など歌番組(46.9%)B「大河」などNHK制作のドラマ(45.3%)C「お昼ですよ!ふれあいホール」などのバラエティー番組(44.5%)D「衛星映画劇場」などの映画(41.7%)――だった。いずれも民放が得意とし、もちろん無料で放送している番組ばかりだ。
何のためにNHKは存在するか
アンケート結果を見ると、すでに日本人はNHK問題とは、「不祥事が多発する企業の問題」を超え、より本質的な――「事業分野が現在のままでいいのか」、あるいは「収入を視聴料に頼る方式でいいのか」――という政府の子会社の存廃・リストラ問題だと考え始めている。特殊法人であるNHKに、談合や汚職を恒常化しながら税金を使って不要な道路を作り続ける道路公団と似た構図をかぎとった。
道路公団は民営化という美名の下、とりあえずは組織の規模維持には成功した。ただ、道路公団と比べ、国民はNHKに対しては怒りを表明しやすい。NHKは税金ではなく、支払い拒否もできる視聴料を収入としているからだ。受信料不払いがさらに広がれば、NHK自身が組織の自己切開に踏み切らざるを得ないかもしれない。
もっとも、肝心のNHKの経営陣は表面的には「受信料不払い拡大阻止」にしか、関心がないかに見える。組織が存続の危機にひんした時には「組織の存在目的は何か」、「ほかの組織ではできないことは何か」という根源的な問いかけを自らに課し、組織のあり方を根っこから変えて生き残れるものだが、NHKの経営陣にはいまだ、そこまでの危機感はないのかもしれない。
http://www.nikkei.co.jp/neteye5/suzuoki/index.html