★阿修羅♪ > マスコミ批評1 > 512.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
日米の密約を暴いた西山太吉・元毎日新聞記者関連のニュースが2つがJANJANに掲載されている。
【日米の密約を暴いた西山元記者を応援しよう 2005/09/28】
http://www.janjan.jp/media/0509/0509270015/1.php
今から33年前、日米の沖縄返還協定の密約を暴きながら、当時毎日新聞記者だった西山太吉さんは、国家機密を漏らしたとして国家公務員法違反で有罪になった。この密約が明らかになったとき、メデイアはいったん政府を追及する姿勢を示したが、西山さんに情報を提供したのが外務省の女性とわかり、この密約問題は男女問題にすり替えられ、問題は結局うやむやになってしまった。
西山記者が示した日米政府がやりとりした密約文書は、まさに本物であり、男女問題とは別の次元で追及すべきなのに、当時の新聞はじめどのメデイアも腰砕けになってしまった。とくに一部週刊誌は、国家犯罪ともいうべき問題を棚にあげて、男女問題だけを執拗に報道して政府・自民党を大いに喜ばせた。
その後西山記者は退社を余儀なくされ、以来30年間沈黙を守り、公式には一切発言しなかった。ところが、2000年に琉球大の我部教授が米公文書館で、密約を裏付ける公文書を発見、朝日新聞がこれを報道した。またテレビでは当時の琉球朝日放送デイレクター土江真樹子さんが西山さんの自宅に通い続け、取材を固辞する西山さんをはじめてテレビに登場させ「告白」というドキュメンタリー番組を放送した。
西山さんは、周囲に促されて今年4月国家賠償を求める訴訟を起こした。専門家の間では裁判の見通しは楽観できないという見方もある。賠償を求めるのも必要だが、むしろいまだに国がウソをついていることをメディアはしっかり報道してほしいと思う。そういえば、33年前にメデイアが密約の追及の手を緩めなかったら、佐藤栄作総理のノーベル平和賞もあったかどうかわからない。
西山さん今年74歳。彼は9月24日、東京の講演会に出席し、はじめて自らの考えを述べた。「日本政府は日米で密約あったことを今も否定しているが、米の公文書では密約の存在がはっきり証明されている。政府が否定することは、30年前の国家犯罪を再生産していることだ」。西山さんは過去に問題をうやむやにした傍流の問題ではなく、本質の「政治犯罪」を問いたいという意気込みを示した。「今、自分にこわいものは何もない」と強い決意を持っているようだった。
メデイアは、33年前、自ら「知る権利」を放棄して、この日米密約問題を封印した。メデイアは贖罪として西山さんの熱い思いを最大限支援すべきだ。そうでなければ、提訴の被告席に座るのはメデイアになりかねない。
(三浦舜)
【すり替えられた「国家犯罪」、沖縄密約から33年目の証言 2005/09/28】
http://www.janjan.jp/media/0509/0509262987/1.php
9月24日午後6時より、東京都渋谷区勤労福祉会館にて、元毎日新聞記者の西山太吉さんを講師に迎え「すり替えられた『国家犯罪』、沖縄密約から33年目の証言」と題し、講演会が開催されました。主催はアジア記者クラブ。講演の要旨は以下の通りです。
1972年、沖縄返還協定で日米政府が結んだ「400万ドルの現状回復費を日本が肩代わりする」という密約を暴いた西山太吉さんは、国家機密を漏らしたとして情報を提供した外務省の女性事務官とともに国家公務員法違反で有罪となりました。国家権力と「知る権利」というテーマは、記者と事務官の男女関係にすり替えられました。密約を裏付ける米公文書が2000年と02年に発見されたのちも政府は一貫して密約の存在を認めていません。西山さんは今年4月、「外務省高官などの偽証によって名誉を傷つけられた」とし、国に賠償金を求める訴訟を起こしました。
33年間の沈黙を破って西山さんが再び国家の犯罪を問う決意をしたのは、嘘をつき続けている政府への怒りと、「この問題を放置していたらまた国の行方を左右する重要なことが国民に知らされないまま決められかねない」という強い危機感からでした。
西山さんは裁判で有罪となった当時の状況を語りながら、「自分は国家公務員法の唆し行為をしたとして逮捕されたが、記者の取材活動はすべて唆し行為である。相手の言いなりにその通りの報道をする者は新聞記者ではない」と述べ、「権力の秘密を追求し、市民に伝えていくのが最大の役割」だと、記者としての自分の立場を示しました。そして、「刑法に触れない限り、問題はない。倫理の問題は自分が反省をすべきである」と、情報を提供した女性との個人的な関係を興味本位に報じたマスコミによって、国家犯罪が個人のモラルの問題にすり替えられたことを厳しく批判しました。
また、日本の民主主義は上から与えられたものなので、西欧のように成熟した市民社会が確立していないことや、戦後のいびつな民主主義によってできた大衆社会で権力の情報操作が行われていることなどに言及しながら、「自分たちの違法性を隠すために権力がメディアを使って情報操作をしているという認識が、日本は低い。政府は密約の存在を否定した。国民に嘘をついたことが問題なのに、そのことを追及するメディアはない。市民の意識が低く、大衆社会であるため情報操作がしやすい。日本は危険な社会である。国家の組織犯罪が隠蔽されている。アメリカの機密文書で明らかになったのちも、政府は密約の存在を否定し続けている。これ以上の政治犯罪はないのに、メディアと市民社会は黙認している。こんなことはどんな資本主義国家でも、民主主義国家でもありえないことだ」と、嘘をつき続けている政府に対する怒りと、下からの突き上げがないために権力に見下されていることに気づかない国民に自覚を促しました。
また、今回の総選挙との類似点について触れながら、「組織犯罪の事実を隠して倫理的な問題にすり替え、問題の本質を隠蔽するやり方は、郵政民営化だけに争点を絞りマスメディアを使って情報操作を行い、大衆を煽動して浮動票と言われる若者の票を得て議席を伸ばした今回の総選挙と同じ」と述べ、33年前と同じことがいまも行われていることを指摘しました。
そして、問題が起こるたびに反応するものの、追及を続けないメディアの姿勢を批判し、「メディアと権力の問題は許容範囲を超えている。市民社会ができないままメディアが強くなった。大衆社会になり、情報操作がしやすい。個人の限界。孤軍奮闘しても限界がある。新聞はその特性を活かし、実践行動をしなければならない」と、国民の知る権利に答えるためにメディアは声をあげるべきだと述べました。
日本がいま一番取り組まなければならない問題は外交問題であるとし、「日本は東アジアの孤児になっている。4年間で威信を落としたいまの政府こそ、厳しく糾弾されなければならない」と小泉政権の外交の失敗を批判しました。また、米軍再編問題で沖縄が集中的に強化されることに言及しながら、「負担の軽減はない」と述べました。「沖縄返還のとき、『核抜き。本土並み』と言ったが、核抜きは国内向けであり、緊急時の核持込みに調印している。『核抜き。本土並み』は嘘だった。こんな欺瞞は日本だからできる。それが何度も繰り返されている。密約は沖縄問題を象徴する氷山の一角。米軍追随の外交姿勢は当時からなにも変わっていない。沖縄が返還されることによって、日本が沖縄化された。安保は空洞化し、変質している。実態が明らかとなったとき、ときすでに遅し。いま米軍再編問題が起こっているが、安保は構造的に変化している。極東条項を無視し、米軍の飛行機は沖縄から毎日イラクに飛んで行っている。自衛隊はワシントンに訓練に行き、米軍の司令部が座間にくる。防衛庁の独走が始まっている。それに対し、国民の関心が低い。下からの監視能力がないと、実態が明らかになったとき違うものになっている。過去のやりかたがそのまま連綿と続き、いまも再生されている」と述べ、「メディアがたえず追及し、国民に伝える努力をしていかないと、日本は危険な状況に追い込まれていく」と警鐘を鳴らしながら、裁判によって政府が嘘をつき続けているという事実を国民の前に明らかにしたい、と述べました。
「アメリカは25年後に機密文書が公開される。日本でも30年経つと公開するという内規はあるが、実行されていない。そのために戦後の外交がわからない。こんな国は全世界を探しても日本だけ。本当は国民のものなのに、機密文書は外務省の私有財産になっている。情報公開を求め、大新聞が共同して声明を出すべきだ。下からの突き上げがないと、なにも変わらない。市民社会ができないままに大衆社会ができてしまったため、テレビによって情報操作を受ける。チェックをするのはメディア以外にない。メディアが情報を市民にフィードバックする役割を果たすことが大事だ」と述べました。
最後に、参加者との質疑応答がありました。
質問 メディアは正義の味方か。むしろ、メディアを監視する必要があるのではないか。
西山 アメリカでは、アメリカの民主主義にとって許せないことは問題になる。日本は閉鎖的で隠避な官僚支配が続き、国民からの突き上げがないため、メディアがその役割を担わなければならない。メディアの奮起を促したい。
質問 権力を唆すコツは。
西山 真実を報道するという視点。問題の本質をとらえる旺盛な記者の精神。問題意識をもって勉強し、リサーチし、相手にバカにされないように論争する。記者クラブに行って、与えられた情報を報道するだけでも記者はやっていられる。それが3分の2。それではなんのために記者になったのか。
質問 沖縄の基地問題について。
西山 沖縄は中国の台湾海峡と東南アジア海域におけるテロ戦略の拠点になりつつある。両方に日本が組み入れられることは、アジアと日本にとってためにならない。「台湾海峡が日本の安全に関わる」という日本の外務大臣の発言は問題。台湾は中国と台湾の問題。日本が介入すべきでない。中国とアメリカは上層部でつながっている。日本だけが軍事優先論を進め、テロの軍事戦略を強化しようとしている。沖縄問題こそ、日本の外交問題の焦点になっている。
質問 なぜ記者になったのか。
西山 記者としての素質を天性として持っていた。天職。それだけにやめたあとは死んだも同じだった。生きがいがなくなった。生きるために父親の経営する会社で60まで働いた。楽しくなかった。生まれ変わるとしたらまた新聞記者になりたい。
質問 なぜ新聞の特ダネとせず、国会での質問を選択したのか。
西山 新聞に出せばだれが書いたかすぐわかる。情報源もすぐにわかる。情報源を守りたかった。それに、新聞に書いても権力は認めない。今でも認めていない。
質問 メディアに勝つ方法は。
西山 新聞が読まれなくなった。テレビを見ている人が多いので、考えることや問題の本質をとらえ、追及していく訓練がない。一番危険な状況。今回の選挙でもメディアが熱狂し、大衆を煽動してとんでもない方向に国民を導いた。メディアを監視しなければならない。テレビは視聴率が低くてもやらなければならないことがあるはずだ。新聞も読者にわかりやすく伝える努力をしなければならないが、それと大衆に迎合することは別である。質を落としていけば新聞は終わり。存在意義はなくなる。
質問 憲法改正について。
西山 改憲は反対。九条を生かす。これからの戦争は国境紛争ではなく、テロ戦争である。経済、民族など、軍事力によっては解決できないことばかりだ。アフガンやイラク戦争を見ればそのことは明らか。軍事力は威力を失う。自民党も民主党も幼稚である。国際政治をなにもわかっていない。
質問 裁判について。自分自身も「在外選挙権の制限は違憲」裁判の原告となり、勝訴した。最後まであきらめずに戦うことの大切さを知った。33年前、権力はメディアを使い大衆を煽動した。佐藤内閣は嘘をついた。この沖縄機密漏洩事件は闇に包まれている。33年後に自ら封印をといて国を提訴した。ジャーナリストは自分の問題として、この問題をとらえてほしい。西山さんは裁判で隠された事実を明らかにしてほしい。
西山 自分は隠していることはなにもない。秘匿することもなにもない。田中や大平と親しいと言われたが、政治記者は政治家と仲良くなれないと特ダネは取れない。問題は自分のよって立つところがどこにあるか。国民の知る権利を守ること。その意味で、机上の空論ではなく、常に前線で働いてきたかどうかが、その記者に対する信頼の基準となる。
(ひらのゆきこ)