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信頼される報道のために 検証・虚偽メモ問題 検証を終えて [朝日新聞]
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投稿者 white 日時 2005 年 9 月 15 日 20:30:42: QYBiAyr6jr5Ac
 

□信頼される報道のために 検証・虚偽メモ問題 検証を終えて [朝日新聞]

 http://www.asahi.com/information/release/20050915f.html

検証を終えて

●記者の責務に甘い認識

 新聞記者の仕事は、人に会って話を聞くことから始まる。そして、取材の内容からニュースを見つけ、報道する。

 そんな当たり前のことを、私たちは積み重ねてきたつもりでした。しかし、取材をしていないにもかかわらず、会ったように偽ってメモを作るという記者倫理の根幹を揺るがすような不祥事が起きました。

 N記者は、なぜ虚偽メモを作ったのか。検証班では、長野総局の上司や同僚、N記者の前任地だった静岡総局での上司や同僚、政治部記者、秋山社長ら計42人から聞き取りをしました。

 N記者とはどんな記者だったのか、上司や同僚の人物評はおおむね一致していました。まじめで手堅いという評価の一方で、「押しが弱く、いま一つ腰が重い」という見方でした。

 手堅いというのは、N記者は入社以来、書いた記事で訂正を出したことがないという話でした。検証班はN記者が在籍した01年4月から今年8月までの間、紙面に掲載された計1371件の訂正を調べたところ、確かにN記者のものはありませんでした。

 N記者の記事も可能な限りさかのぼって調べました。02年11月から退社までに564本を書いており、上司らの聞き取りでは、こうした記事をめぐって取材先や読者からの苦情もなかったということでした。

 静岡、長野両総局に残っていたN記者の取材メモも調べましたが、不審なものは見つかりませんでした。

 N記者は虚偽メモを作った動機について、問題発覚直後の社内調査では「功名心だったかもしれない」と言っていました。

 しかし、今回の検証でN記者に取材したところ、当初の「功名心」という説明は自分や周囲を納得させるための言葉で、本心ではなかったと話しました。

 「総局長に対して取り繕う気持ちがあった」「メモがそのまま使われるとは思わなかった」。検証では、動機に触れてN記者はこうも話しましたが、はっきりした言葉をなお見つけられないという様子でした。

 明確な動機はわからなかったものの、N記者は事実を伝えるという新聞記者の責務を軽く考えていたのではないか、と思わざるを得ませんでした。

●不十分だった意思疎通

 一方、誤った記事が掲載されるまでの過程を検証すると、いくつかの問題点がわかりました。

 政治部と長野総局の記者の間で、やりとりはわずか2通のメールだけでした。記事ができるまでには、決定的にコミュニケーションが不足していました。

 それはなぜなのか。

 たとえメールであれ、「取材メモ」である以上、それが使われて記事になる可能性があります。そうした存在である取材メモが軽々しく取り扱われていました。

 記者同士でメール以外に具体的なやりとりがなかったことは深刻な事態です。総局の若い記者たちにとって、本社編集局は「顔の見えない遠い存在」との声が検証の過程で多く聞かれました。この風通しの悪さも、背景にあったように思われます。

 こうしたことは何も政治部と長野総局の間にだけ見られることではなく、本社編集局の他部でも少なからず起きる可能性のある問題です。

 虚偽メモを使って誤った記事が掲載されるのを、なぜ防ぐことができなかったのか。いくつものミスが重なっていましたが、メールだけのやりとりに終わり、取材現場での言葉によるコミュニケーション不足が虚報につながった最大の原因と思えます。

【検証班のメンバー】

 東京社会部次長 野呂雅之(48) 記者歴23年

 東京社会部記者 豊秀一(40)  記者歴16年

 大阪社会部記者 矢野英基(36) 記者歴13年

 東京経済部記者 林尚行(34)  記者歴11年
(2005/09/15)

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