★阿修羅♪ > マスコミ批評1 > 111.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
シバレイのblog 新イラク取材日記
http://reishiva.exblog.jp/3333255/
くたばれ、「民主主義」!!
本ブログ常連読者のNobody Knows さんから、イラクに米軍兵士として派遣された息子を亡くしブッシュ大統領に米軍の撤退を求めているシンディー・シーハンさんについての質問があり、私も興味がないわけではなかったので、少し関連のサイトを見てみた。現在ブッシュ大統領は夏休みのため、地元テキサス州クロフォードの邸宅にいるのだが、シーハンさんは大統領との面会を求めて、大統領邸宅近くでキャンプをはっているのだという。彼女の行動は米国のメディアも大きく取り上げ、18日(現地時間17日)にはシーハンさん支援集会が全米1600ヵ所で行われ、のべ10万3000人(主催者発表)もの人々が参加したそうだ。
画像はシーハンさん支援サイト http://www.meetwithcindy.org/ 。シーハンさんのビデオメッセージも見れる。
彼女の行動が米国の人々の注目を集めている背景には、やはりブッシュ政権の対イラク政策に対して批判が高まっていることがあるだろう。イラク情勢が安定しないまま米軍死傷者数は増加する一方という現実に、米国市民は苛立っている。今月6日に米誌NEWSWEEKが発表した世論調査によれば、ブッシュ政権の対イラク政策を「支持する」と答えた人は34%と過去最低の数字となった。米国の市民達もようやく目を覚ましつつあるようだ。
だが、シーハンさんの運動自体は応援したいものの、この間イラク情勢に関心を持ってきた者の一人として、米兵が死んでるからブッシュ政権への批判が強まる、ということには、少々複雑な思いもする。ブッシュ政権を批判するのは大いに結構だが、同時に、この不当な侵略戦争で犠牲となった、報道されているだけでも23589〜26705人*というイラクの人々への謝罪と償いを米国の市民達は忘れてはいけない。イラク戦争開戦当時、「支持する」が74%と熱狂的に戦争を迎えたのも、選挙不正や宗教右派の組織票があったとはいえブッシュ大統領を再選させたのも、他ならぬ米国の市民なのである。
*Iraq Body Count の統計(05年8月13日)。2004年10月にイギリスの権威ある医学誌『ランセット』に掲載された米ジョンズ・ホプキンス大学、コロンビア大学とイラクのムスタンシリヤ大学による合同調査によれば、イラク戦争/占領による死亡者数は最低でも10万人以上とされている。
米国の市民は米兵達の犠牲を嘆くが、そもそも彼らが戦争を支持しなければ、1800人以上の若者がイラクで命を落とすことはなかったのである。また、イラク占領開始直後、イラク人の米軍に対する感情は今ほど悪くなく、最も占領への激しい反発があったファルージャやラマディでも、当初、人々は武器を持つことなくデモという非暴力という形で占領への抗議をしていた。そこへ実弾で水平発射したのは米兵達である。話し合おうとしてズドンと撃たれるのだから、人々が武器を取ったことは(良いか悪いかは別として)仕方ないことなのだ。しかも、大量破壊兵器がイラクに無かったことも、サダム政権とアルカイダが協力して米国を狙っていたということも間違いだったとわかり、戦争と占領の中で多くのイラクの市民が殺されているという現実があっても、米国の市民がブッシュ政権を支持するのであれば、米軍をイラクから追い出すためには米兵を殺すしかない(と少なくともイラクの武装勢力は考える)。つまり、米兵達を殺しているのは、米国の市民の無関心と無責任なのである。
あえて米国の市民を弁護するとすれば、米国のメディアが悪いといえる。特に大手テレビネットワークは報道機関というよりも、もはやプロパガンダ機関であり、イラクでのテロの報道はあっても、どれだけ多くのイラクの市民が苦しみ、殺されているかということについては、あまりに報道量が少ない。この初夏にニューヨークに行ってきたが、比較的リベラルだとされるニューヨーク市民ですら、現状認識は惨憺たるもので、以前、来日した米国の平和団体の活動家が「何時間テレビの前に座っていても、空爆の犠牲となったイラクの人々の姿が画面に出ることはない」と嘆いていたのを思い出した。米兵を殺しているのは、人々の無関心や無責任だけでなく、事実を伝えず恐怖ばかりを煽り立てる米国のメディアであり、米国のメディア人こそ、その責任を重く問われるべきなのである。
*ただ、インターネットが発達した今日、米国の市民ならば、国内の反戦団体のサイトや外国のニュースサイトを見ることは、決して難しいことではないハズということも指摘しておきたい。
イラク戦争における米国の迷走ぶりを観ていると、民主主義というものの根本的な問題、つまり「民主主義自体は制度にすぎず、それを使いこなすだけの国民がいなければ、それは強大な暴力装置となること」や、プロパガンダ機関化したメディアの問題等がよくわかるのだが、翻って日本の状況を観ると、米国のことを馬鹿にしているだけではいられない。「自爆テロ解散」とも言うべき議会制度を無視した小泉首相の強引な解散だが、フタをあけてみれば低迷していた内閣支持率が5割台に戻るという有様である。また、財政や年金など社会保障などと、課題は山積みであるのに、「刺客」だの「くの一」だの「ホリエモン」だの、日本の大メディアは造反議員への対抗馬のことばかり、面白おかしく報じている。山積する問題から目をそらさせ、自ら小泉シュショーのプロパガンダ機関に落ちぶれているのだ。
選挙で問われるべき重要な問題として自衛隊イラク派遣をどうするか、ということも含まれるハズだが、ここにきてサマワ情勢が急激に不安定になりつつあるにも関わらず(共同通信や時事通信の記事をテキトーに読んでいても状況の変化がわかるだろう)、大メディアは選挙の争点として、自衛隊の派遣期限の延長の是非を問うこともない。米国のように若者が次々に犠牲となり、彼らの肉親が嘆き悲しむようなことになってから騒いでも遅いのに、この国のメディア上層部のヒトビトは全く何を考えているのだろうか。自衛隊派遣や日米関係ということを考える上で、今イラクで何が起きているか、ということを知ることは重要なことであるはずだが、米軍の掃討作戦での市民の犠牲はもはや完全に無視されている。先週末くらいから、イラク西部のアンバル州ハディーサ、ラワ、パルワナ等では、住宅地や学校に爆弾が落とされ、医療物資や食料の配給も米軍に妨害され、人道危機が起きているというのに。
*イラクの医療関係者による緊急声明(英文) http://www.health-now.org/site/article.php?menuId=14&articleId=477
あまりのアホらしさに時々ウンザリすることもあるが、まあいいさ。政治家のセンセイ方も、大マスコミのお偉いさんも、みんな勝手にやってくれ。みんな嘘に溺れてくたばりやがれ。私も好き勝手やらしていただくよ。それが例えゾウの足にアリが喰らいつくようなささやかな抵抗であっても。