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http://www.mainichi-msn.co.jp/science/news/20051103k0000e040008000c.html
九州大学生体防御医学研究所(大分県別府市)の森正樹教授(50)の研究グループは2日、消化器のがんの「幹細胞」とみられる細胞を、食道や胃、肝臓などから見つけたことを明らかにした。がんの幹細胞が見つかれば、これをたたくことでより効果的な治療ができると考えられている。成果は米国の専門誌「ステムセルズ」11月号に掲載される。
幹細胞は、臓器などを構成する細胞のおおもとになる細胞を指し、さまざまな種類の細胞に変身(分化)する能力を持っている。
これまでがんは「幹細胞が分化した後の、普通の細胞ががん化する」と考えられていた。しかしがん患者に抗がん剤を投与したり、放射線治療をすると、いったん腫瘍(しゅよう)が小さくなっても再びがんが増殖を始めることが多い。これは「がんの中に死滅しにくい幹細胞が存在し、これががんを作り出す」と考えれば説明がつき、実際に白血病や乳がん、脳腫瘍ではがん化した幹細胞が見つかっている。
森教授と九大医学系学府大学院3年、原口直紹さん(32)らは、手術で摘出された人間の消化器がん(食道、胃、大腸、肝臓、すい臓)の組織を使い、がん幹細胞を探した。その結果、(1)抗がん剤に強い耐性を持つ(2)自分と同じ細胞を作る複製能力以外に、自分とはやや違った細胞を作る分化能力もある(3)動物に移植すると、普通のがん細胞に比べて100倍以上の腫瘍を作る−−という性質を持った細胞を発見した。がん幹細胞の可能性が高いという。
放射線医学総合研究所(千葉市)は今年2月、人間の食道がんの組織からがん幹細胞とみられる細胞を発見したと発表している。九大グループの研究は多くの臓器で幹細胞の可能性がある細胞を見つけたのが特徴だが、森教授は「幹細胞を見つける方法論や条件設定に詰めなければならない問題があり、現段階でがん幹細胞と確定したとまではいえない」と話している。【渡部正隆】
◇ことば…幹細胞(ステム・セル)
さまざまな細胞の「たね」になる細胞。普通の細胞は自分と同じ細胞を作り出す能力しかないが、幹細胞は異なった種類の細胞に変身(分化)もできる。例えば血液の中にある造血幹細胞は赤血球や白血球に変化し、骨髄幹細胞は血管や心筋などを作り出すこともできる。受精卵から人工的に作る胚性幹(ES)細胞は再生医療の分野で注目されている。
毎日新聞 2005年11月3日 9時03分
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