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β遮断薬は、約30年にわたり高血圧治療に広く用いられてきた。今でも、高血圧治療ガイドラインでは、これを第1選択薬として推奨している。スウェーデンUmea大学のLars Hjalmar Lindholm氏らは、β遮断薬を1次性高血圧患者に投与した無作為割付比較対照試験(RCT)のメタ分析を行い、β遮断薬の利益が明らかな心不全患者以外については、脳卒中リスク減少が他の抗高血圧薬より劣るβ遮断薬を第1選択とすべきではないと結論付けた。詳細はLancet誌電子版2005年10月18日号に報告された。
心筋梗塞後の患者と心不全患者へのβ遮断薬投与は、再梗塞、心不全による入院、早死を予防する。が、1次性高血圧治療における利益には議論が多かった。著者らは2004年に、アテノロールに限定したメタ分析の結果を発表、その有用性に疑問を投げかけた。そこで今回は、β遮断薬全体について、脳卒中、心筋梗塞、すべての原因による死への影響を評価した。
メタ分析は、1次性高血圧を対象とするRCTで、あらゆる原因による死、または、心血管死のいずれか、または両方について比較しているものを対象とした。
コクラン・ライブラリとPubMedから、β遮断薬を1次性高血圧患者に投与したRCTを選出。分析対象となったのは、β遮断薬と他の薬剤を比較している13件(10万5951人)と、β遮断薬と偽薬または無治療を比較した7件(2万7433人)。
まず、β遮断薬と他の治療薬を比較した場合、脳卒中の相対リスクは、他剤よりβ遮断薬で16%高かった(95%信頼区間4-30%)。すべての原因による死、心筋梗塞には有意差がなかった。サブグループの中で、脳卒中の相対リスクが最も大きかったのはアテノロール群(26%、p<0.0001)だった。
偽薬または無治療と比較した場合には、脳卒中の相対リスクは、β遮断薬群で19%(7-29%)低かった。すべての原因による死、心筋梗塞には有意差はなかった。高血圧治療ガイドラインで最も頻繁に引用されるCollins氏らのメタ分析(Lancet誌335巻827-838ページ、1990年)では、β遮断薬により脳卒中リスクは38%減少と報告されており、今回得られた19%という数字はその半分の値だった。
著者らは、β遮断薬の降圧効果は他の高血圧薬と同等だが、脳卒中に対する予防的作用は他より低いことから、この種の薬剤は、1次性高血圧治療においては次善策だと述べている。さらに、より新しいASCOT-BPLA試験(関連トピックス参照)で、カルシウム拮抗薬+ACE阻害剤併用のアウトカムが、β遮断薬+利尿薬に勝ることが示されたことなどを基に、脳卒中を減らすためには、β遮断薬から他の薬剤への切り替えが必要で、これにより治療のコスト効果も高まると言う。したがって、β遮断薬は、1次性高血圧患者の第1選択にすべきではなく、さらに、今後の高血圧RCTでは参照薬として用いるべきではないと著者らは結論付けている。
本論文の原題は「Should β blockers remain first choice in the treatment of primary hypertension? A meta-analysis」。アブストラクトは、こちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)
■ 関連トピックス ■
◆2005.9.20 心血管疾患予防効果はβ遮断薬+利尿薬よりCa拮抗薬+ACE阻害薬の方が高い−−ASCOT-BPLA研究
◆2005.6.27 【欧州高血圧学会速報】高血圧のある狭心症患者でCa拮抗薬が心血管イベント予防に有効 ACTIONスタディのサブ解析結果が発表
◆2004.3.16 英国高血圧学会が高血圧診療ガイドラインを改訂、「AB/CDルール」を公式採用
◆2004.2.4 【高血圧治療に関する調査】その3 第一選択薬の系統、循環器内科医を中心にARBが大幅増
◆2003.11.28 WHO/ISHが高血圧ガイドラインを事実上改訂、「コスト重視の米国」と「リスク重視の欧州」の中間的な内容に
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