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(回答先: 「抗菌」せっけん、効果は「普通」…米FDA [読売新聞]【「トリクロサン」の濫用は耐性菌を誘発と】 投稿者 あっしら 日時 2005 年 10 月 22 日 01:09:36)
新しい創傷治療 から
殺菌ソープと普通の石鹸・・・という新聞記事
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5月31日の産経新聞に面白い記事が掲載されていました。詳しい内容は上記のサイトで読めます。要するに,アメリカの11歳の女の子が,
抗菌ソープは99.6%の菌を殺すとされるが、普通のせっけんでも99.4%の殺菌効果がある。除菌商品の多くはいいバクテリアまで殺してしまったり、「スーパー・ジャーム」という耐性の強い菌を生み出したりする恐れもあり、除菌洗剤に入っている殺菌作用のあるトリクロサンが人体に有害である可能性も指摘
ということを発見した,という記事です。要するに,石鹸だろうが殺菌石鹸だろうが,皮膚常在菌まで殺してしまい,その結果,皮膚常在菌がいなくなれば皮膚の弱酸性は保たれなくなり,さまざまな好ましくない細菌(病原菌)が入り込み,その人の健康にも害が出ます。さらにそれを無視して手を洗い続けると,手の皮膚が荒れて表皮ブドウ球菌が棲めなくなり,黄色ブドウ球菌だらけになります。
つまり,手洗い励行すると院内感染が多くなります。常在菌のことを知っていれば常識なんですが,このあたりのことをご存じない「院内感染対策の専門家」がたくさんいて,「院内感染対策のために手を消毒薬で洗いましょう」なんて喚いたりしているようです(・・・あくまでも伝聞ね)。こういう「専門家」は,上記の11歳に教えを乞うべきでしょう。
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それにしても,11歳でこれを発見しちゃうか。もしも本当なら,彼女が今後も,このような視点を持ち続けて成長して欲しいと思う。
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同時に,この記事を紹介している女優の西田ひかるさんの反応も面白い。
水洗トイレでは便器の水を流すと、霧状になって三メートルほども飛ぶそうです。アメリカではお風呂とトイレが併設された洗面所が多く、霧状に舞った便器の水が洗面台に置いた歯ブラシにかかるというのです。
トイレより台所の方がばい菌が多い家も少なくないそうです。ちょっと信じがたかったのですが、同じふきんやスポンジをずっと使っていませんか? お肉や魚を切るときに使ったまな板を洗った後、同じスポンジをそのまま使うと、菌を広げているようなものです。
という部分だ。確かに,水洗トイレでは3メートルの範囲で霧状になった水が飛んでいる,と聞くと,「それならトイレの蓋を閉めて流しましょう」と反応しちゃうのはわかるけど,これってどうなんだろう。こういう情報を前にすると,人間の反応は2種類に分かれると思う。
3メートル先まで飛んでいるのなら,便器と洗面所は3メートル以上離しましょう。それができないなら,便器の蓋を閉めてから流しましょう。
確かに3メートルの飛んでいるのかもしれないけど,俺はこれまで40年間,蓋を閉めずにトイレの水を流してきたが,それで病気になっているわけでもないし,歯ブラシにに直接ウンコが飛んでくっついているわけでもないだろう。なら,気にしない,気にしない。
私なら断然,後者だな。もちろん私はこれまで病気になったことはあるが,それは,トイレの壁にくっついているであろう「水洗トイレの霧状の水」に触れたためでもないし,トイレに入ったあとに腹痛になったこともないからである。恐らくバイキンだらけの環境で生活していると思うが,多分,それらのバイキン君たちと共存する術を持っているから,別に病気にならないんだろうと思う。
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でも世の中には「3メートルも飛んでいるのですから,トイレを流すときは蓋をするように」と考えちゃう真面目な人がいる。インフェクション・コントロールの専門家に多い気がするし,その巣窟と化しているのがCDCである。
どうも彼らの考えを見ていると,一神教的発想だな,と思ってしまう。要するに
「こんなに祈っても神が助けてくれないのは,神がそもそもいないからだ」
「こんなに祈っても神が助けてくれないのは,私の祈りが足りないからだ。もっと祈らねば」
こういう二つの考え方があると思うが,一神教方面の人は後者の発想を選んじゃうんですね。だから,「こんなに環境をきれいにしているのにまだ院内感染が発生している。こんなに手を洗っているのに院内感染が減っていない。それは,まだどこかにいるバイキンを見逃しているからだ,手の洗い方が足りないからだ」と考え,さらに一生懸命お掃除をしたり,手をさらに強力な消毒薬で洗ったりする。
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普通なら,「こんなにしているのに院内感染が減らないのなら,そもそもその方針が間違っているからじゃないか?」と考えるのが普通だと思うが,一神教的院内感染対策専門家は,「まだわれわれの信心が足りないからだ」と考えちゃう。神を疑うことが最大の禁忌だから,しょうがないんだろうけどね。
(2005/06/02)
InfectionとColonization
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前章で「炎症症状がなければ,感染ではない」と書いた。言い換えれば,「傷口から細菌が検出されても,炎症症状がなければ感染しているわけではない」ということになる。
つまり,傷口が細菌により化膿している状態(Infection)と,傷口に細菌がいるけれど化膿していない状態(Colonization)は厳密に区別されるものなのだが,大半の医者・看護婦はここのところを誤解しているのだ。ここのところが理解できないと,「傷は消毒しないと化膿するんだよね」なんていう誤解が生じてしまう。
まずこれを説明する。
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人間にはいろんな細菌が棲みついている。例えば大腸の粘膜には大腸菌や乳酸菌が大量にいるし,同様に皮膚には表皮ブドウ球菌が生活しているし,口腔内にも極めて多くの細菌が生息している。そして,これらの細菌がいる状態が正常である。
このような「人間と共存している細菌」のことを「常在菌」と呼ぶ。
つまり,このような常在菌はいるのが当たり前であり,退治する必要はない。感染を起こしていない常在菌はいても構わないし,いなくなっては困るのだ。常在菌がいるのが「健康な」皮膚や大腸の状態なのである。
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さて,傷に話を移す。創面を調べればそこには必ず細菌がいる。なぜなら,傷の周囲の皮膚(傷ついていない健全な皮膚)には必ず常在菌がいて,これが傷の中に常に入り込んでいるからだ。つまり,どんな傷だって,細菌を検出する検査を行えば,必ず周囲の皮膚にいる常在菌は検出されることになる。
傷の周囲の皮膚にとって「常在菌はいるのが当たり前」なのだから,当然の話だ。
だから,「傷口から細菌が検出された! だから傷が化膿しているんだ」と考えるのは大間違い。先ほど,「炎症の四徴候がなければ感染(化膿)はしていない」と説明したばかりだ。
つまりこれは,「創面での細菌の常在化」という現象が起きているだけなのである。これを Colonization と呼ぶ。
実際に,臨床の場で傷の状態を詳細に観察していると,「細菌は検出されるけれど,炎症症状が全くない」状態は決して珍しくはないことがわかる。特に,褥瘡(床ずれ)のような「慢性の開放創」においては,「感染症状はないけれど,常に創面から細菌が検出される」状態が続いているのが普通である。
しかし,細菌がいくらいても,それから「感染状態」に移行することは稀だし,細菌がいても治る傷は問題なく治癒する。
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これらから,「細菌が常在菌化している創面」であっても「感染状態」になければ,感染症としての治療(抗生物質の投与など)は必要ないことがわかる。実際,創面から耐性ブドウ球菌(MRSA)が検出されようと,緑膿菌が検出されようと,それが感染を引き起こしているのでない限り,放置していいのである(ここらについては,後ほどさらに詳しく解説する・・・予定)。
いずれにしても,皮膚欠損創(開放創)の治療では,感染症状の有無(=炎症症状の有無)を判断し,たとえ細菌が創面から検出されてもそれが "Infection" なのか "Colonization" なのかを見極めることが重要だ。
(2001/10/11)
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