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（貼り付け開始）
●畜産における「動物虐待」
一般に、多くの人々は畜産の現場で以下のような行為が広く行われていることを知ったら、さぞおどろくことでしょう。
畜産の現場における動物への以下のような過酷な取り扱いは、改善されなければならないものです。たとえ最終的に食用にされる動物だとしても、生きている時に受ける心身の苦しみは、みな同じなのです。
（以下をスライドの映像で説明）
◎身体の一部の切断
豚の断尾、牛の尾の切断、鶏の嘴の切除、豚の犬歯を削り取る等、身体の一部を切断すること。
◎身体の自由を奪い拘束
首かせ、繋ぎ飼育、豚のストール等、動物が自由な動作を行えない状態にすること。
◎過密飼育
飼育や輸送においてぎゅう詰め状態で密閉し、ストレスによる闘争の多発や死亡、輸送時の圧死が起こるような状態。
◎劣悪施設
床が固いコンクリート、通気性がない、換気不十分、ほこりっぽい、床が金網、床がすべって不安定、敷わらの欠如等、劣悪な飼育環境。
◎栄養状態
肉骨粉入りの人工乳・代用乳等、不自然な飼料、異常肥満を強いる過剰投与。
◎病気の放置
経済価値がなくなると放置して衰弱死させる行為。
◎暴力
棒で殴る、むち打つ、け飛ばす等、粗暴な行為。
●畜産動物の福祉
この状態を改革するためには、動物の福祉基準を定め、それに合致するよう飼育関係者を促す必要があります。福祉の基準として、イギリスで１９６５年に提唱された「５つの自由」という考えがあります。ちなみに、欧米諸国では、動物福祉は学問の一分野として科学的な観点からの研究がなされています。
１、「飢えと渇き、栄養欠如からの自由」とは、十分な給餌給水があることを意味します。水も餌も与えず衰弱させることは、日本の動物愛護法でも動物虐待罪となります。
２、「不快からの自由」とは、日よけのない炎天下、風雨、騒音や震動にさらされ続けている、糞尿にまみれている等、人間でも不快と思うような飼育環境にしないことを意味します。
３、「痛み、傷害、病気からの自由」とは、病気やけがの場合には放置することなく、適切にケアをすることを意味します。
４、「正常な行動ができる自由」とは、それぞれの動物種の習性にかなった運動ができる空間を確保してやることを意味します。
５、「恐怖や悲しみからの自由」とは、動物の肉体的苦痛ばかりでなく精神的・心理的苦痛にも配慮し、母子の早すぎる隔離や群れ動物の単独飼育を避けるといったことも含まれます。
６として、この１０年来急速に進んでいる「生命操作からの自由」を加えてもよいでしょう。欧米の動物福祉団体は、動物に疾病や不健康、苦痛をもたらすような品種改良、遺伝子操作に反対しています。さらには肥満遺伝子を組み込んだ豚、毛をむしる手間を省くための羽のない鶏の開発等、人間の無限の欲望の犠牲にならない自由を、動物にも保障するべきではないでしょうか。遺伝子を操作して生命を改変することは生物の進化史に対する侵害とみなされ、社会的に広く論議すべき生命倫理の課題の一つなのです。
●動物福祉の観点から法整備を
日本における法整備の一つとしては、さし当たって動物の愛護及び管理に関する法律に基づいて、「産業動物の飼養及び保管に関する基準」（1987）および、「動物の処分方法に関する指針」（1995）の改正を行うべきでしょう。この基準が制定された当時、すでにＥＵでは畜産動物の福祉に関する協定が論議されており、それに比べると、この産業動物の基準は、単に衛生管理、疾病予防、危害防止、排泄物の処理、騒音の防止を列挙しているのみで、動物の保護と福祉の概念はまったくありません。早急に、この基準の改正に向けての改正作業がなされるべきと考えます。同様に、畜産関係の法律、基準等においても新たに動物福祉の観点を導入した法整備がなされる必要があります。
現代畜産の改革は、動物保護のみならず、食の安全性の確保や環境保護、自然資源の適正使用や公正な配分を図ることにもつながっていきます。今こそ、消費者、生産者、流通、行政、研究者、メディアも含めた多様な主体が動物の福祉というテーマに関心を持ち、社会的・法的措置に取り組むべき時が来たと考えられます。
(貼り付け終わり）
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