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ただの庶民だが私にも言わせてほしい
日本では食糧安保さえ忘れ去られた
http://www.bund.org/opinion/20050905-2.htm
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食から始まる地方分権
岩本洋
現在BSE発生で止まっている米国産牛肉輸入の再開問題や、輸入野菜の残留農薬のことなど、私達が日頃口にする食品の安全性が今疑わしくなっている。牛肉に関して見ていくと、日本の自給率はけっして低かったわけではなく、1985年には72%もあった。それが2001年になると36%と半減してしまった。また野菜も冷凍食品や漬け物などの加工品のみならず、生鮮野菜までが中国からの輸入が拡大し、自給率が大変に下がっている。こうした食糧のグローバリズム、農産物の経済化の中で、経済効率のみが優先され、安全性はないがしろにされている。
食品の安全性と自給率の問題は、密接に関係しているのである。2002年には輸入野菜から残留農薬が検出されて大きな問題になった。野菜の自給率が年々減っていることと相関関係にあるのだ。
2001年の数字で見ると、野菜の輸入量は300万トンで、そのうち52%が中国からの輸入である。生鮮野菜として入ってきているのは輸入量の4分の1、4分の3は加工野菜である。とくに加工野菜は生鮮野菜よりも農薬の残留基準がゆるい。時には基準そのものが問題にされないケースもある。こうしたことの原因をつくっているのは、日本の商社やスーパーである。
例えば、タイで次のようなことが起きている。普通その地域で食べる習慣がないタマネギの生産を商社から依頼された農家が、現金収入のために作りはじめた。ところが日本のスーパーは作物の大きさを日本でやっているように厳しく制限し、大きすぎたり小さすぎると排除した。また虫がついたり、汚いものもダメと厳しい規格を要求した。その結果、選別からもれたタマネギは野積みにされ腐る。
この規格のもと現地の農家は虫がつかないようにと、タマネギに農薬を過剰にかけることによって農薬汚染はひどくなっていく。中国から送られてくる野菜も同様である。国際化の中でより安いものが求められ、安全性が脅かされるということが引き起こされているのだ。
日本の様々な地域での、食の安全性や地産地消、スローフードなどへの関心の高まりは、このような日本の食のあり方に対する不安の現れだろう。
あふれる輸入農産物や食料自給率40%の現状
いま多くの人々は、はるかに離れてしまった食事と生産物の輸送距離を、環境やエネルギー消費、安全性のためにも縮めたいと願っている。かつて1960年代前後、東北地方の就業者の6割は第一次産業にたずさわっていた。自ら作った物を食べ、その余剰を都市へと送っていた。しかし農村人口は都市へと流れ、1966年に「野菜生産出荷安定法」が作られ、さらに「大規模指定産地制度」によって、都市住民に食料を安定供給するための制度化がなされた。
この制度は都市住民がいつでも野菜が買えるようにしたものだ。キャベツ、ダイコン、ハクサイなどは農地が25ヘクタール以上、キュウリ、ピーマンなどは10ヘクタール以上の農地がまとまっていることが産地指定の条件となる。そこで生産されたものの2分の1以上を、都市に向けて出荷することが義務づけられたのだ。指定野菜はその他にも14品目で、生産物の3分の2以上を農協などの系統を通じて出荷しなければならない。こうした制度のなかで生産環境は大きく変わってしまったのである。
たとえばトマトは、ダンボールで輸送するため完熟の3〜4日前にもぎとられる。輸送中に赤くなる品種だけが栽培されているのだ。そればかりでなく、輸送中心の食材評価が決定的になり、輸送資材のダンボールにあわせたサイズへと農産物が規格化されていった。野菜がL・M・Sの大きさで区別され、曲がったキュウリや不揃いの野菜は排除されていく。ダンボールに合わせた野菜の規格化がすすめられたのである。かつては多くの種類があった伝統野菜や食材は、輸送を中心にした商品主義の観点から淘汰されてしまった。
そればかりか、指定された野菜を作りつづけるために生み出される連作障害や、それを防ぐための土壌改良材や化学肥料の多用などで地力は落ち、農地は結局のところ荒廃していくこととなった。国の行う減反政策などとも相まって、市場の論理に振りまわされて離農していく農家が、年を追うごとに増えていったのだ。1965年には600万戸あった農家は、現在300万戸へと半減した。就農者も3分の1になってしまった。国の農政が破産しているのである。こうした流れが、海外に生産物を求めることにつながっている。
食料自給率40%の中味
しかし今の食料自給率40%という数値も、違った角度から見てみると今後の地方活性化のヒントが隠されているかもしれない。県別の食料自給率を見てみると、北海道181%、青森118%、岩手101%、秋田159%、宮城80%、山形129%、福島82%と、北海道東北地方は平均で100%を超えているのだ。これに対し東京1%、大阪2%、神奈川3%と、都市圏が地方に依存している構図が見てとれる。
1991年、農水省は農業の大規模化を前提に、農家分類を「販売農家」と「自給的農家」に分別した。それは耕地を30アール以上もっているか、年間販売額50万円以上の農家を販売農家と認定し、それ以下の農家は自給のための農家であるとして、統計上も政策の対象から切り捨ててしまった。
この切り捨てられた「自給的農家」こそが、日本農業にとっての希望である。自給的農家は国の規制から自由になり、自らプレハブ小屋を建てたり、地方行政の建てた直売施設で、自分が作った農産物を売るなどしている。商品化からはずれた曲がったキュウリや、不揃いだが完熟したトマトなどが、新鮮なのに格安で売られているのだ。輸入農産物急増やBSE問題など食に対する不安の中で、朝どりの野菜を求めてやってくる消費者の姿が多く見られる。
農水省が2002年「米政策改革大綱」をもって減反政策を廃止したように、今まで全部・中央集権化していたもの、良いものが、まず築地や大田市場に集中し、東京でコントロールされた上で、そこから全国にばらまかれていた状態が変わろうとしているのだ。明治以来の中央集権化や、高度経済成長期に構築してきたシステムでの発想では、今やたちゆかなくなっている。たとえば、宮城県宮崎町では、家庭内のふだんの料理を持ちよる「食の文化祭」という企画を地域づくりに生かし、地域内外の若者を巻き込んで農業のサポート組織をつくろうとしている。また広島県JA三次では前面に「地産地消」を掲げ、自給的農業にアプローチして、多品目少量生産の担い手を育成しようとしている。細かな営農指導を行い、広島市内にアンテナショップをつくり、JAが集荷をして店に届けるのだ。昔では考えられなかったことをJAが行い、しかも経営的にも成果をおさめている。このような食をつうじた地方分権こそ、これまで国だけにゆだねて閉塞させてしまった農業を、地域から変えていく試みではないかと思う。
(エコアクション21会員)
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JAS有機マークってなんだ? 有機農業について
久保みつる
スーパーに夕食の食材を買いにいく。外国産やら国産の野菜が什器にしっかり並べられている。輸入野菜のポストハーベストは良く知られたことで、外国産は輸入時に消毒されて薬漬けだ、その点国産は安全だというのが共通認識だ。だったらと私はそのときお金があれば多少高いが国産を買う。
国産か輸入物かの表示を見ていると、それ以外の表示もある。減農薬、無農薬、JAS有機などである。ソースの材料に有機野菜を使いましたというのもある。有機農産物は、今やその価値が充分に認知されている。これは良い傾向だ。少なくとも表示されてないものよりは「安全」と思い買ってしまう。
しかしひとつの疑問がわく。学生時代に何度か有機農家を訪ねたことがあった。私の知る限り有機野菜は提携によって手に入るものだ。提携とは直接農家と消費者が売買契約を結び、大体2週間に一度、農家が(場合によっては流通業者が入る)消費者の家庭へと配送する。また時には消費者が視察と援農をし、これによって消費者と生産者が顔の見える関係を築く。
有機農業は農薬や化学肥料を一切使用しないため、基本的に大量生産に向かない。だから有機野菜を、スーパーのような大量な流通形態に乗せるのは困難ではないかと思うのだ。
有機野菜専門のスーパーさえたまに見かける。規模は小さくとも、スーパーをやれるのは安定した品質と定量の生産と流通が前提の筈だ。入ってみると、確かに近郊で作られたものが並んでいるし、生産者の写真もついている。それでもレモンはアメリカ産で有機JAS認証マークが袋に張ってあった。輸入レモンの残留農薬は有名だ。お店の人に確認すると「大丈夫だと思いますよ。だって認証もあるし」と言う。
JAS有機という認証制度
有機JASマークとはいったい何なのか。この認証の意味するところは、農薬・化学肥料等の使用禁止資材の不使用、外部からの使用禁止資材の隔離をし、農作物の播種または定植前の最低2年間(多年生作物にあたっては、その収穫前3年間)は、その圃場において使用禁止資材が使用されていない農作物ということだ。
それを証明するためには、農水省に登録された認証機関によって認証をうけることが必要である。こうした過程を得た農産物が市場や家庭に出回る。しかし有機農家にとって、この制度は負担だ。外部からの使用禁止資材を防ぐために、農家が緩衝地帯を設けなければならない。もしその周りが農薬を使う慣行農法を行なっていた場合、緩衝地帯として1mをとる。仮に1000uの農地だとすると、緩衝地帯として136uは使用できないのだ。
許可資材に関しては、コーデックス委員会(食品の国際規格を検討・制定するFAO/WHO合同食品規格委員会)が定めたリストを基に、農水省もリストを作っている。当然コーデックスは欧米諸国の有機農業に合わせて作られている。農水省は有機農業に関心を払わず、どのようなものが許可資材としてふさわしいか、国際基準案を日本にもあわせたものになるよう対応していないのだ。
防除資材として使われる木酢液は禁止され、消費者団体や有機農業団体から魚毒性の強い農薬と指摘されているデリス使用調製品は、使用許可資材になっている。
また認証機関からの認証を受けるためには、認証料を払わなければならない。1件につき安くて3〜5万円が設定されている。これに認証員のための交通費がプラスされる。
国際基準の前文において「農家から消費者へ直接販売される一部の農産物は別として、……市場での欺瞞的行為を最小にするためには、……効率的に監査されることを担保する特定の措置が必要である」(前文第10項)とある。日本の有機農産物取引の典型である提携を行なう場合であれば、認証免除を規定に盛り込むこともできる筈だ。日本の農家の1%にも満たない数の有機農家の実情は余りにも考えられていない制度なのだ。
JAS有機認証マークが及ぼしたこと
認証された国内新規農家数は、JAS有機認証制度が制定されたころと比べると大幅に減少している。ピークで約400件程度の申請(01年4月)があったが、最近は50件未満(03年4月)だ。有機農家が認証を受ける負担のわりに、メリットがないのだ。認証制度が国内有機農業の推進に役立ってないのである。現在認証された国内有機農家は3734件である。国外は1979件である。JAS有機認証された数では、有機農産物は国内3万3734トン、国外で15万4642トンとなっている。JASマークによって日本市場を開拓したのは国外の農家であり、むしろ国内の有機農家は保護されず、今まで以上に有機農業をおこなうことが難しくなっているのが現状なのだ。
農水省は環境保全型農業と称して減農薬農業を推進してはいる。しかし有機農業に対しては政策的措置をとってはいない。環境保全型農業とは減農薬のことであるが、農薬の内容や総量規制ではなく、今までと比べて何%減らしたかだけによるものである。もともと減農薬に取り組んでいた農家にとっては、更に減らすのは厳しい制度である。できるだけ農薬や化学肥料を取り除くことに取り組む農家にとって、農水省の政策は邪魔をしているだけなのだ。
消費者の問題
本当の問題は、消費者の立場は何も変わっていないことにあると思う。BSE問題も鳥インフルエンザも、大量に食肉を流通させようとすれば起きる問題だ。食の安全を求め1970年代ごろ農家に有機栽培を進めた主婦などの集まりは、取引や援農をつうじ有機農業の苦労や食料の大切さを知っていったという。
現在は有機野菜を購入しようと思えば、いつでも購入することができる。消費者は表示をみてお金を出せば食べたいものが食べられる。そうした消費者のニーズが大量生産大量流通を呼ぶ。有機野菜も市場における商品の付加価値でしかないなら、近代農業の対極としての有機農業の発展は難しいのだ。
(森と平和の会仙台会員)
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(2005年9月5日発行 『SENKI』 1188号6面から)
http://www.bund.org/opinion/20050905-2.htm
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