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2005.8.22
ストレスに悩む女性にとっては思わぬ朗報と言えるのだろうか。慢性的ストレスは乳がんリスクを下げる可能性があるとする研究成果が明らかになった。持続するストレスはストレス・ホルモンの活性化を招き、エストロゲン合成を抑制する。一方、エストロゲン高値は乳がんリスクを高めるので、ストレスがあると乳がんのリスクが低下するというものだ。デンマーク国立公衆衛生研究所のNaja Rod Nielsen氏らは、慢性的なストレス・レベルが高い女性の原発乳がん発症リスクは、ストレスがほとんどない女性に比べ40%低いことを示す結果を得た。詳細はBritish Medical Journal誌電子版に2005年8月15日に報告された。
ストレスとがんの関係は興味を集めている。ストレスと乳がんリスクの関係を調べる研究も複数が行われてきたが、結果はまちまちだ。ストレスの程度の評価が容易でない上に、親しい人の死などに代表される急性のストレスと慢性的なストレスでは、人体の反応が異なるからだと考えられる。また、慢性的なストレスとがんリスクの関係には、あまり注意が向けられてこなかった。
著者たちは、ストレスと原発乳がん発症リスクの関係を調べる前向きコホート研究を行った。追跡期間は18年。1981〜1983年(ベースライン)に、コペンハーゲン在住の女性6689人に、緊張感、いらいら、短気、不安、不眠などの形で現れる日常的なストレスについて質問した。
ストレス強度は、ゼロ(0)、軽(1)、中(2)、高(3)、頻度は、全くない/ほとんどない(0)、月1回(1)、週1回(2)、毎日(3)のどれに該当するかを尋ね、答えのスコアを合計して6点満点の慢性ストレス・スコアとした。これに基づいて、0-1をストレス・レベル「低」、2-4を「中」、5-6を「高」とした。
また、交絡因子候補として、経口避妊薬の使用、他のホルモン療法、ベースライン時の閉経、BMI等についても調べた。原発乳がんの初回発症は、全デンマークがん登録のデータを利用して1999年まで追跡。追跡から漏れたのは0.1%未満だった。
ベースライン時の平均年齢は57歳で、ストレス・レベル「高」は全体の10%だった。追跡期間中の死亡率は、「高」群で最も高かった(「高」の39.3%、「中」の30.4%、「低」の35.1%)。
追跡中に251人が乳がんを発症した。ストレスの強度または頻度が最低のグループと最高のグループを比べた場合、乳がん発症の多変量調整済みハザード比はいずれも、ストレスが増すと発ガンリスクが下がる傾向を示した(傾向のP値はストレス強度0.02、ストレス頻度0.06)。ストレス・レベルについては、「低」、「中」、「高」と1段階上がるごとにリスクは8%減少(ハザード比は0.92、0.85-0.99)した(傾向のP値は0.02)。ストレス・レベル「低」に比べ、「高」の女性のハザード比は0.60(95%信頼区間は0.37-0.97)だった。
最初の9年間に114人が発症、残りの9年では137人が発症した。ストレスと発症リスクの関係は、追跡の前半と後半でほぼ同等で、慢性的なストレスの影響は、時間を経ても安定して見られることが示唆された。
ベースライン時にホルモン療法を受けていたのは16%だったが、ストレスによる乳がんリスク減少は、このグループで顕著だった。ストレス・レベルが1段階上がるごとにリスクは18%減少(ハザード比は0.83、0.72-0.97)、一方、ホルモン療法を受けていない女性ではハザード比0.96(0.88-1.05)でリスク減少は有意でなかった。著者たちは、ホルモン療法を受けている女性は、ホルモン・レベルの変動の影響をより受けやすいのではないかと考えている。
得られた結果について著者たちは、ストレスによる乳がんリスク低下を安易に喜ぶわけにはいかない、と言う。リスク減少がエストロゲン合成の低下によるものなら、健康な反応とはいえず、人体に及ぶ影響を総合すると、心臓血管系疾患などの害が利益を上回るのではないか、と述べている。
本論文の原題は「Self reported stress and risk of breast cancer: prospective cohort study」。概要は、こちらhttp://bmj.bmjjournals.com/cgi/content/abstract/bmj.38547.638183.06v1で閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)
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